伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 第29回/夢世界アマミ国日記(29/33)
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

第29回/夢世界アマミ国日記(29/33)

脳細胞融解系小説
夢世界アマミ国日記
奄美剣星
第29回


僕たちが御料列車に乗ってやってきたアマミ国=桃源国「連絡鉄道」は、王都駅から田舎屋敷駅で寸断されてしまっているのだが、線路だけはまだ続いていた。

両国の国境となっていて、いまは桃源国が実効支配しているアマミ・トンネル。そこを敵は大要塞としているのだ。平原を走る鉄道は目立つし、海賊たちはやはり船を好んだ。そのためか、アマミトンネルから「田舎屋敷」に至るまで、一度としてこの路線をめぐる争奪戦はなかった。

棟梁が数万羽からなる燕衆を全路線に飛ばせて点検させた。「王様のいない八年」の間、放置されていたのにも関わらずほとんど傷んでいない。破損個所は突貫工事で燕衆が補修してしまった。

王都に戻っていた御料列車がまた戻ってきた。コッペル蒸気機関車に客車五両を連結させたそれに、王様以下、王国防衛隊二十名が乗り込んでいく。ホームしかない簡素な終着駅。義勇軍の面々は後方防衛のため、「田舎屋敷」を守備することになっていて、そこで僕たちを見送ってくれた。

一般村民数百名の中にいた若者たちが王様や防衛隊の面々と固い握手を交わした。麦わら帽子に長袖シャツ。熊手やスコップを片手にした義勇軍九十名だ。彼らは泣き笑いしながら、「王様万歳!」と唱えた。汽笛が鳴り、車両はゆっくり西を目指した。

――最終決戦が行われる。

桃源国の元奴隷兵士=天邪鬼であった妖精五百名が、列車の上空を飛びかい、ときおり屋根に停まっては休んだ。

アマミの名を冠する巨大な湖と大河の岸辺を路線が走っている。平原が終わり、緩やかな丘陵地帯となった。雪景色となり、ヒマラヤ杉の木立に囲まれた湖沼地帯を抜け、河面が糸のようにしかみえない岸壁から、巨大な滝の内側にもぐりこんでいった。

路線の終りは、ロープウエイの駅を兼ねたホームになっていた。八年放置されていたにもかかわらず、勝手に動いていた。線路の先には向こう側のみえないトンネルがあって、格子で塞がれているのだ。

王様は遠い目をしてロープウエイの先を眺めやった。

「山の頂にゲレンデがある。マサムネが子供のころ、よく連れてきてやったものだ。

あの派手なマサムネ公の子供時代というのは想像もつかない。

桃源国の妖精五百名と燕衆数万羽が頂に向かって飛んでいく。

ロープウエイのゴンドラは次々とやってくる。錆びていてドアがちぎれているのだがなんとか乗ることができる。床底が抜けないか、ちょっと心配だ。王様、シルフィーと蘭丸、僕が乗り込む。

撤退路確保のため隊長と旗持ちを除いた王国防衛隊の面々とメフィスト、それにミクはアマミ・トンネル駅で、御料車に乗ったまま待つことになった。

ロープウエイは、尾根筋から谷間を抜け、尖った山の頂途中にあるゲレンデ前の駅に着いた。ラウンジやホテルがあり、駅からリフトに乗り換えて頂きを目指すことができるようになっている。

  ☆

ホテルは新古典様式風の三階建物で大理石でできている。裏庭に回り込むと湯けむりがたっていた。温泉が敷かれているようだった。湯殿も大理石でできている。女神ビーナスが抱えた壺から湯が浴槽に注がれている。王様たちと中に踏み込んでいくと、桃太郎が湯面に顔をつけていた。ピラニアがいてキスをしている。

よくみれば、湖で王様と戦った浴槽に雉の羽が浮いているではないか。王様が低くつぶやいた。

「おまえの部下の雉か? ピラニアの餌にしたのか?」

「敗軍の将は生贄になるだけのこと」

「生贄だと?」

後を向いたまま桃太郎が笑った。漆黒の鉄仮面で顔を覆い、甲冑を黒マントで覆っている。兜飾りは槍先に桃が突き刺さっている意匠。フシュルルルと、映画『スターウォーズ』に出てくるダースベーダ―のようないでたちで、束の両端に刃のある双支刀を携え、ゆっくりと立ち上がった。

――「神君」召喚!

途端、ナイフのように尖った刃を何十本も並べた口を開いたピラニアが、ワニほどの大きさとなり、浴槽から、ざばっ、と飛沫をあげて、王様をくらおうと、宙に舞い上がった。






【登場人物】

王様(白い文王) : 白いスーツの老紳士。夢世界アマミ国王。現実世界では、白文鳥に化け、八年間奄美に飼われていた。
シルフィ― : 王様の家臣。長身で銀色髪をしたクールな青年。
蘭丸 : 王様の恋人である絶世の美少年。浮遊樹を削って作ったサーフィンに乗り、古代ギリシャ風に月桂冠を被り腰布をまとっている。
僕(奄美) : 八年ぶりに帰国する王様に同行し、アマミ国に訪れた際、十歳弱の蝶ネクタイと半ズボンの少年になる。
マサムネ:アマミ国を脅かす賊将。王様をつけ狙う。近習が六名いる。
ワタリ : 賊将マサムネの部下。猛将系。有翼船を操る。羽飾りの帽子にコートを羽織り、海賊のような姿をしている。
カタクラ : 賊将マサムネの部下。知将系。「影」の一団を率いる。黒装束で忍者の様な姿をしている。
メフィスト :王国中に支店網をめぐらす魔法使いの商人。
ミク : 王様ファンの少女。社会人なりたて。
棟梁 : 戦いで街が壊れると修理に駆けつける『燕衆』を率いる宮廷職人。
総長と旗持ち男 : 暴走族。
隻眼の兎ギルガメッシュとサーベルタイガーのエンキドウ : サイドカー仕様のスズキのバイクKATANAに乗った『王様のいない八年』間王都を守ってきた謎のヒーロー。『守護者』の異名がある。
桃太郎:私掠船船長。隣国・桃源国の王族。
犬・猿・雉:桃太郎の腹心。コメントを違反申告する.



【粗筋】

僕・奄美は、窓際に飛んできた白文鳥と暮らしていた。八年後、文鳥は白いスーツの老紳士となり帰国したいと申し出た。そこはアマミ国。老紳士は国王だった。招待された僕は、少年の姿に変えられ冒険の旅へ。

ところが行く手を賊将マサムネ一派が立ち塞がった。天空の『浮き島』アマミ宮殿で舞踏会が行われたとき、マサムネが奇襲をかけ六星合体DATEOTOKOに変身。王様はトランスホンダを装着し対抗する。戦闘は王宮から『人食い森』へ。僕はシルフィーや蘭丸と一緒に燕衆棟梁がつくった浮遊樹のサーフボードで二人を追いかける。

途中、王都高速道路で、暴走族と張り合うのだが、一緒に『人食い森』まできてしまった。無差別に襲いかかる屍鬼。敵の敵は味方。共闘し仲間になった。『守護者』隻眼の兎とサーベルタイガーが加勢し形成が一気に逆転する。

他方、王様は実の息子である賊将マサムネと決闘し、勝利を治め、とどめをさそうとしたところを、マサムネ配下のワタリとカタクラによって阻まれ、取り逃がしてしまう。

王様は暴走族たちを、王国警備隊に任命し、「人食い森」の定期伐採を開始、宮廷職人燕衆が壊れた高速道路の補修をすることになる。『王様のいない八年』で荒れかけた王国は着実に復興へと向かっていくのだが……。いよいよ物語はクライマックスへ。

王様は、僕・奄美少年を『田舎屋敷』に招待した。王様との楽しい『浮遊樹遊び』もつかの間、隣国・桃源国の私掠船船長桃太郎が攻めてきた。
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