伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 第25回/夢世界アマミ国日記(25/33)
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

第25回/夢世界アマミ国日記(25/33)

脳細胞融解系小説
夢世界アマミ国日記

奄美剣星

第25回


王様は湖底に消えた。空には闇が迫ってくる。僕は王様を捜そうとしたのだけれど、棟梁が、「王様は大丈夫」といって、くわえているキセルで「浮遊樹」の枝を叩いた。すると僕の意思とは無関係に、後ろのプロペラが勢いをまして回転しだし、枝は「田舎屋敷」に引き返し始めた。

「安武船」を旗艦とした海賊艦隊は、王様との戦闘でだいぶ被害を出している。にもかかわらず攻勢は続いていた。しばらくしたら、天邪鬼率いる桃太郎の艦隊は湖岸に兵員を上陸させ、「田舎屋敷」離宮に押し寄せてくるだろう。



「田舎屋敷」には、元暴走族である王国防衛隊の面々に加えて、地元郷村の青年団からなる義勇軍が馳せ参じ、百八名の武装集団となっていた。(おいおい、梁山泊かよ)などとつまらない突っ込みをいれている場合ではない。

「浮遊樹」の枝から飛び降りた僕は、「田舎屋敷」で武器をみつけようとしたのだけれども、どこにもない。義勇軍のお兄さんに訊いてみると、「麓の村の雑貨屋に行けばないこともないな」というので、玄関にあった懐中電灯を片手にして駆け降りる。棟梁は僕の肩に乗ったままで、「若衆に任せておけよ」というのだけれども、乗りかかった船だ、僕も戦わずにはいられない。

集落の明かり、湖面にみえる敵艦隊の明かり、ときどき訊こえる砲火の轟音。

村の雑貨屋は、駅前にある五メートルほどの狭い街路に、唯一ある店舗だった。昔日の煙草屋のような出窓がある造りで、客はそこから顔をだした店員に商品を注文するのだ。

「あれ?」

売り子は、黒のシルクハットをつけた紳士の格好をしている。そう、王様や僕と一緒に御料列車に乗ってきたメフィストではないか? 

「坊ちゃん、不思議がることはない。『メフィスト商会田舎屋敷駅前支店』ですよ」

「武器は?」

「あいにく村の若衆が、『田舎屋敷』に詰めるとき、すべて買ってしまって品切れです」

僕が肩を落としていると、色白の紳士メフィストが、「おお、そうだ」と手を叩いた。

「これならございます」

メフィストが棚の端から小箱を取り出し僕に手渡した。

突然――

後ろから、がしゃんがしゃんと重々しい機械音がした。複数だ。「あっ!」 機械音の主は茶色い蜘蛛のような形をした巨大ロボットだった。八本脚のうちの前二本が機銃と剣になっている。蜘蛛の頭のところがコクピットになっていて、そこから声がした。

「降伏しろよ、坊ちゃん。将校待遇の捕虜にしてやる。『田舎屋敷』の陥落は時間の問題だ。ここが落ちれば、桃源国から王都までの生命線『ハートラインド』に遮るものは何もなくなる。アマミ国はもう終わりだ」

賊将マサムネの声がする。

「では坊ちゃん、私はここで――」

メフィストはマントをひるがえして店先から消えた。

僕は小箱を開けた。羽ペンが一本だけ入っていた。こうなりゃヤケだ。羽ペンを敵めがけて投げつける。

「ペンは剣より強し!」

どんなものだ、といわんばかりに、肩の上の棟梁が羽ばたく。

鉄蜘蛛は剣で払おうとしたが、それよりも速くペンが装甲に刺さる。白煙が上がった。

このとき、「田舎屋敷」の方からサーフボードが飛んできて、僕を拾い上げ宙空に舞い上がる。銀色髪のシルフィーだ。色白の美少年蘭丸も少し遅れてやってきた。白煙がマサムネたちを覆っている間に、僕たちは「田舎屋敷」に引き返す。蝙蝠に変身した黒装束のカタクラ一派に追われもしたが、どうにか退却することに成功した。

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