伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 第1回/方舟のファイサル
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

第1回/方舟のファイサル

つまらない話だから訊かなくたっていい。若かったころのことだ。

東京地下鉄日比谷線六本木駅で下車し、地下道から出ると外苑東通りとなる。『マハラジャ』は六本木プラザビルにある。入り口に黒タキシードの店員が立っている。服装検査「ドレスコード」を受け、中に入ると、マイケル・フォーチュナティの『GIVE ME UP』が流れている。大理石と特異な照明で飾り立てた店内。大きなお立ち台があり、ボディコン姿の若い女たちが踊っていた。

進学して福島県から上京した田村涼介も黙っていれば都会の若者にみえなくもない。学校の級友たちが誘ってくれきたのだがどうにも馴染めない。踊らずに、ひたすら出される料理を食べていた。

トーストに蜂蜜を塗った「ハニートースト」を片手にととる。

『マラハラジャ』にはVIPルームというガラス張りの部屋がある。そこに目をやると、彫りの深い顔をした若者が陣取っていた。エキゾチックな黄金刺繍を施した黒シャツで 、ルイ·ヴィトンのサングラスをしている。席には同世代の男女が取り巻いている。その中には日本人の娘もいた。色白で髪が長い。切れ長の目をしている。その娘と目があうと、涼介は視線をずらした。

 『風営法』が施行されている。午前0時を回ると、名残を楽しむ連中は、系列レストランに移る。終電が気になる二人はここで仲間たちと分かれることにした。ナンパこそできはしなかったが時代の空気というものを満喫することはできた。

店を出たビルの外には、ベンツだのランボルギーニが縦列駐車している。

「あれか? ゲッターズだ。ぼんぼん学生がいい車に乗ってギャルどもをナンパする。いいよなあ」

そういう赤城陽一も地方旧家の御曹司だが、ゲッターズのような派手なことはできない。

蒸せた都会の夜だ。林立するビルの街あかりが月をどこかに隠していた。目を引いたのは御曹司どもの高級車ではない。横から飛び出してきたサイドカー仕様のBMW三台だ。『マハラジャ』でもそうだったが、連中が六本木の空気を支配している感がある。サングラスの男の横にいた日本人の娘とまた目があった。再び視線をずらす。

火薬のような匂い。(連中と関わらぬほうがいい) 本能的にそう感じる。

「ファイサル!」

オープンカーに乗ったゲッターズの御曹司たちが名を呼んだ。オートバイを操るサングラスの男が、人差し指の先端に口づけして宙に放つ。車両三台は、外苑東通りから六本木の交差点を左折して六本木通りの彼方へ消えていく。
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genre : 小説・文学

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