伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 アンボワーズ城で待つ君に4/ハプスブルク戦記
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

アンボワーズ城で待つ君に4/ハプスブルク戦記

王子様を誘拐した犯人は、契約で雇われた傭兵でした。意外と誠実な男で、契約が切れたといって故郷に帰って行ったのです。入れ違いに、王子様救出の軍勢がやってきます。ですが王子様の息子が、姫に続いて、敵国へさらわれてしまっていたのです。


ハプスブルク戦記
桜の下の王子様
第2章 アンボワーズ城で待つ君に



マクシミリアンが幽閉されてしばらく経つ。ブリュージュ城市の商人館だ。

皇子を誘拐したガスパーレだが、一日一度この男が訪ねて来るのが待ち遠しい。会話は扉越しにした。チェスをするのもそうだ。

部屋の中で椅子にもたれたハプスブルク家の御曹司と、扉に持たれたイタリア人傭兵が、チェスをした。チェス盤は二人の頭にあった。「四・二ナイト」というように、イメージ上の枡目に、駒を動かして行くのだ。

夕刻の朝食の前に、誘拐犯が、不意に別れを告げた。

「殿下、今日でお別れです。ブリュージュ市との契約が切れました」

「ガスパーレ、行くところがあるのか?」

「戦があれば雇い主は現れます」

「次は、寡人のもとへくるといい」

「本気にしますよ、殿下」

「本気だ」

「では、御機嫌よう」

ブロウ・アンド・スクレイプは、左足を後ろにやって頭を垂れるお辞儀のことだ。扉の向こうではるが、イタリア貴族崩れの傭兵隊長が、それをやっているのが気配で判った。敵にこそ回ってはいるが、元来誠実な男だ。マクシミリアンは、心底、この男を部下に欲しいと思った。



さらに数日が経ち、城市の外から、砲撃銃声が鳴るや、あっさりとマクシミリアンは解放されたのだった。

「お迎えに参りましたぞ、殿下」

「ザナウ、ネッケ……」

二人の帝国騎士が、マクシミリアンの父親である神聖ローマ皇帝に窮状を知らせ、さらに、諸侯を回って帝国軍を編成。皇子救出のための大軍を連れてきたのだ。

だが、帝国軍は、あくまでもマクシミリアン救出が目的だった。諸侯たちは、反乱を起こしたブルゴーニュ諸都市の鎮圧や、フランスとの戦いは拒絶したのだった。

寝耳に水だったのは、ブルゴーニュ公となった息子が、親フランス派の家臣たちによって、敵国に引き渡されてしまったことだった。

(商人どもめ、娘ばかりか、息子までも敵に売ったのか――)

マクシミリアンは、「ブルージュの町に火をかけよ」という言葉が喉まで来たのを呑み込んで、「いや、愚策だ」とつぶやき、「帝国軍とともに撤収する」と二人の騎士に告げた。


【登場人物】 

マルグリット公女:マクシミリアン皇子とマリー女公の間に生まれる。マリーの継母マルグリットの名を戴く。誘拐同然にフランスに連れ去られる。

フィリップ公子:マルグリットの兄で、後に「美男公」の異名をとる。

マリー公女:故人。ブルゴーニュ公国シャルル突進公の一人娘。亡き母親はブルゴーニュ公妃で、宿敵であるフランス王は本家筋にあたる。

マクシミリアン皇子:神聖ローマ皇帝フリードリヒ三世の皇子。後に「中世最後の騎士」と呼ばれる。マリー公女を妃としてブルゴーニュの共同統治者となる。

ザウアとネッケ:神聖ローマ帝国騎士。

マルグリット:ブルゴーニュ公妃でマリー公女の継母。

コミーヌ:ブルゴーニュ公国元家臣でフランス王国に寝返る黒衣の貴紳。

ルイ十一世:故人。フランスの前国王。蟇蛙のような容貌をもつ。息子はシャルル八世。妻はシャルロット。

ブルボン公ピエール:シャルル八世の摂政。

アン:シャルル八世の歳の離れた姉。ブルボン公妃。

シャルル八世:フランス国王。ルイ十一世の息子。

ガスパーレ:貴族出身のイタリア人傭兵。マクシミリアン誘拐の実行犯。


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