伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 公女からの手紙3/ハプスブルク戦記
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

公女からの手紙3/ハプスブルク戦記

ハプスブルク戦記
桜の下の王子様

第1章 公女からの手紙

3

桜の下の王子様は、姫君との結婚の準備を始めていたそのころ、魔法使いが、悪魔と契約を結んだ隣国の王様と悪だくみをしています……。



ブルゴーニュの突進公シャルルの本家筋に当たるのがフランス王ルイ十一世だ。虎視眈々と欧州一豊かな彼の地を狙っている。息子はシャルル王太子、ブルゴーニュ公と同じ名前だ。七歳。

フランス王に組したブルゴーニュの反乱勢力は、絶世の美女を謳われるマリー公女に十三歳も年下の少年を押し付けようとしたのだから酷い話だ。



城館の庭に植えられていた桜が咲きだした。

塔に上ってヘントの街を眺望しながら二人の帝国騎士が立ち話をしていた。地獄耳のネッケから話を訊いたザウアが義憤に血をたぎらせる。

「ザウア先輩、鼻血が出てるっすよ」

「じゃかあしい。俺は長皇子と一緒にマリー姫を守る!」

「先輩、そのマリー姫っすよ」

ネッケが素っ頓狂な声をだして指差した先にはマクシミリアンがおり、そこに二人の女性が歩み寄る。一人はマリー公女、もう一人はマリー姫の継母であるマルグリット、イングランドの王族出身である。

絶体絶命であったマリー姫に、マクシミリアンに救援を要請する親書を送るよう進言した人物。シャルル突進公との間に子供がなく、マリー姫を実子のように可愛がっていた人だ。

継母が義理の娘にいった。

「父上がお決めになられた婿殿はやはり頼りになりますね。貴女とシャルル坊やとの婚儀を迫った反徒たちは急におとなしくなって婿殿に忠誠を誓ったそうよ」

マリー姫が微笑むと二歳年下であるマクシミリアン皇子が微笑み返す。含むところのない笑み。若者の特徴だ。

「婚儀は?」

「八月十九日、この町の聖バボ教会で執り行うべく臣下に計らわせています。もちろん母上のお力もお借りしているところですよ。素晴らしい母上だ。私は尊敬しています」

二人に恭しく一礼してから、皇子は下がって塔の近くまで行く。ザウアとネッケが慌てて駆け下りてくる。

「傭兵の召集は?」

ザウアが答えた。

「フランドルやブラバントではうまくいっています。けれども、スイス傭兵は先約があるといって断られてしまいました」

マクシミリアンは両手で頭を押さえて天を仰ぎ、それから地べたに直接腰を降ろししばらく考え込む。二人の帝国騎士も主君に習った。やがて若者は指示を部下に出した。

「ザウア、ネッケ、南ドイツに行ってくれ。彼の地から広く傭兵を集める。スイス式の装備をさせて、陣立てもスイス流にやる。訓練のほうも頼むぞ」

「御意」

ザウアは、婚礼の場所となるバボ教会に向かう貴婦人二人を一度見やると厩《うまや》に駆け、婚儀に立ち会う間もなく南ドイツに向かう街道に駒を走らせる。



フランスの王都パリ郊外。高台から演習場を望むルイ十一世が、幼い息子のシャルル太子とともに、騎士団の訓練に立ち会っていた。

「シャルルよ、百年戦争にフランスは勝った。何ゆえに勝ったと思う?」

「神がジャンヌダルクを遣わしたからでしょうか?」

「ジャンヌダルクが何をしたというのだ? 意味なく戦場をうろついていただけだ。実際に血を流したのは兵士だということを忘れるな」

「では?」

「庶民を味方につけたからだ。庶民といえども富豪は貴族よりも手強い。国王以外の領主どもが割拠するは終わった。今はそういう時代なのだ」

ルイ十一世は、蟇蛙《ひきがえる》の容貌をしてる。息子は母親が美女であったため、まだみられる。フランス王が背後を振り返ると、宮廷魔道士が控えていた。

「コミーヌ、朕はお前のいう『神』と契約した。死後のことなど興味はない。わが宿望はフランス王国をローマ帝国とすることだ。励め」

「御意の召すままに」

王が掌を上に向けたとき、黒衣の貴紳が指を鳴らした。するとどうだろう。不思議なことにグラスが現れ王の掌に載っているではないか。また指を鳴らす。すると今度は宙から葡萄酒が注がれ杯を満たした。



【登場人物】

マリー公女:ブルゴーニュ公国シャルル突進公の一人娘。二十歳

マクシミリアン皇子:神聖ローマ皇帝フリードリヒ三世長皇子。十八歳

ザウアとネッケ:神聖ローマ帝国騎士

コミーヌ:ブルゴーニュ公国元家臣でフランス王国に寝返る黒衣の貴紳


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