伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 公女からの手紙2/ハプスブルク戦記
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

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公女からの手紙2/ハプスブルク戦記

ハプスブルク戦記
桜の下の王子様

第1章 公女からの手紙

2

悪い魔法使いがおりました。仕えていた王様が亡くなると、敵に寝返って姫を塔に閉じ込めてしまいます。敵国の軍勢ががすぐそこまで押し寄せ、姫君が絶体絶命となったそのとき、婚約者の王子は姫君奪還に援軍を率いてやってきます……。



ブルゴーニュ公国というのは、
現在のベルギーやオランダをまとめたフランドル地方にある。ヨーロッパの主要街道はここに集まり、大きな港が置かれ、織物工業が盛んで欧州一の繁栄と文化を誇っていた。バロワ朝フランス王家の分家が彼の地の君主に封じられている。
 
公国のヘントという城市は、この時代、運河こそ開削されてはいなかったのだが、いくつもの川が集まったところで、織物で栄え、水運陸運ともに発達しており、人口はフランス首都パリに匹敵するほどだった。

黄金の髪、紺碧の瞳、細面……。華奢な線をした若い貴婦人がいた。しばらく塔に閉じ込められていたので顔色は良いとはいえないのだが、瞳は正気を保っている。
(敵の目を縫って侍従に託したあの手紙は無事に届けられたかしら。大好きなブルゴーニュ、欧州一栄えている美しい国。祖国のために私はなすべきをした。あとは神様にお祈りするだけですね……)

ヘントの城館の塔に、シャルル突進公の一人娘マリー公女を閉じ込められていた。藤椅子にもたれていたマリーが扉の開く音に驚いて目を覚ます。指を鳴らす音がした。あまりにも多くの蝋燭の灯かりがついたので目がくらむ。入り口には、黒衣の貴紳がおり、片膝をついて深々と一礼した。

「この国には絶世の美女が二人いる。一人は姫様あなたご自身、もう一人はブルゴーニュ公国そのもの」

「コミーヌ。父の側近くに仕えていながら、父が討死するや、祖国を見限ってフランス王家に寝返るとは、節操というものがない」

「主公が亡くなったことで事実上ブルゴーニュ公国は滅びた。シャルル様亡き後、臣下臣民各々が誰を戴くのも自由では?」

コミーヌと呼ばれた黒衣の貴紳は細身の青年だ。長身、銀色の髪と瞳、補足繊細な指。その指が鳴らされると、狭いはずの部屋が広間となり、また鳴らされると楽士の一団が現れ音楽が奏でられる。

「姫様、お退屈でしょう。気晴らしに踊りませんか?」

「いえ結構です」

黒衣の貴紳が、あたかも誰かをエスコートするかのように踊りだす。一人であった筈だ。だというのにいつの間にやらコミーヌは仮面をつけた貴婦人と踊っており、周囲には盛装した人が賑やかに群れてさながら舞踏会になっている。

ところが、壁に貼り付けられている大きな鏡には、人々の姿が映し出されてはいない。(夢?) 囚われの姫君が呟くと、黒衣の貴紳が舞ながら皮肉めいた笑みを浮かべた。

「中国の故事にあります。昔、蝶になる夢をみた男がいて、本当の自分が人であるのか蝶であるのか考え込むというお話。魔道、それも似たようなものかもしれません」

そういい終えたところで、外が騒然となりだす。

「無粋な、いいとこなのに……」

コミーヌは腕の中にいる仮面の貴婦人に口づけした。貴婦人、他の舞手たち、それに楽士一団の全てが消散して行く。

「姫様、御機嫌よう。それではパリにて……」

黒衣の貴紳は深々と一礼し扉の向こうに消える。広間はやはり幻で、またもとの小さな牢獄部屋へと姿を変えた。

塔の階段を駆け上ってくる複数の足音。先頭を行く者が再び扉を開けた。

「マリー姫。お届け物です」

悪戯っぽく舌先をみせた二歳年下の若者が、しばし呆然としてから慌てたように、スカートの裾をつまんで一礼する所作「カーテシー」をするその人に歩み寄り、左手をとって指輪をはめた。




マクシミリアン皇子の側近となった帝国騎士二人が部屋の外で控えている。

「ザウア先輩、お家騒動の背後には黒幕がいるって噂っすよ。大公をけしかけロレーヌ家と戦わせ討死に持って行き、その後、大商人ととりまき貴族を煽りフランスを引き込み『漁夫の利』を得させる筋書を書いた奴。コミーヌって若造で、『黒衣の貴紳』って呼ばれているとか……」

「地獄耳だな、ネッケ」

「いやあ、それほどでも」

ネッケが兜に片手をやって掻くような素振りをした。



【登場人物】

マリー公女:ブルゴーニュ公国シャルル突進公の一人娘。二十歳

マクシミリアン皇子:神聖ローマ皇帝フリードリヒ三世長皇子。十八歳

ザウアとネッケ:神聖ローマ帝国騎士

コミーヌ:ブルゴーニュ公国元家臣でフランス王国に寝返る黒衣の貴紳


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