伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 伯爵令嬢シナモン3「修道院島」第1章10
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

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伯爵令嬢シナモン3「修道院島」第1章10

前回までの粗筋
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 1920年代の終わりごろ、群馬県の利根川中州〈軍艦島〉で若い女性黒岩梅の遺体が発見された。容疑者は画家竹久夢二。 夢二の知人萩原朔太郎は、佐藤記者を介して、レディー・シナモンに捜査を依頼する。シナモンは、愛子と、事件当日夢二を乗せた車夫豆吉のところへむかった。豆吉は女郎と駆け落ちしたあと。しかし妻の証言からはそのような素振りはないという。他方、女郎宿にむかったドロシー博士と朔太郎組は……。
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主要登場人物
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レディー・シナモン……英国伯爵令嬢・考古学者。「コンウォールの才媛」の異名がある。
ドロシー・ブレイヤー……アメリカ人考古学者。日本の古建築・ガラスを研究している。短期契約で伯爵家執事になっている。
竹久夢二(たけひさ ゆめじ)……奔放な画家。
萩原朔太郎(はぎわら さくたろう)……群馬県の詩人。
黒岩梅(くろいわうめ)……〈軍艦島〉で変死体で発見された女性。夢二の元交際相手。
豆吉(まめきち)……事件当日、夢二を乗せた人力車の車夫。本名は吉之助。
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 ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※
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 中院(なかにわ)に面した茶室だ。中院は、水槽(すいそう)と灯籠(とうろう)を一つずつ配し、それを中心に頭大の川原石を敷きつめている。苔むしたそれらとは対照的に、背後には竹を束ねた垣根は(かきね)真新しい。垣根は外部から茶室を完全に遮断(しゃだん)していた。
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 茶室に通されたドロシー博士と朔太郎は、女郎宿の店主と対面していた。禿げあがった頭部、丸いサングラス、腹までのびた白い髭、立ち上がれば百八十センチをこえる体躯……。会話の途中で、ときどき微笑む老人だ。よくみると、顔や腕に刀傷がいくつかあった。
 そのことが渡された茶碗をもつ朔太郎の手を小刻みに震えさせていた。どうにか、口にして、懐紙(かいし)で縁をふきとってドロシーに茶碗を渡した。
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 ドロシーは朔太郎から器を受け取り、作法にしたがって飲み干してから、
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 ----けっこうなお手前。器は織部※1、床の間の絵は、虎の岸駒(がんく)※2。渋みがあり、常滑※3の壺にさした紫陽花を引き立たたせています。
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 と言葉した。白髭の老人は、サングラスを外してドロシーをみやった。片方は刀傷で潰れ、残る眼は鷹のように鋭い。サングラスをしているのは、伊達ではなく、威圧感を消す配慮だ。
「ほお、儂(わし)をみて震えぬばかりか、茶の作法をも心得、茶器や南画(なんが)※4にも造詣(ぞうけい)がある。いや、感服した」
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 急に、老人が片手をあげた。すると、壁の裏側で物音がした。六七人はいるであろう。
 天上近くには襖になっている。老人の号令一下、一斉にそれが開いて、人数分の槍が飛びだし、ぐさっ、と刺してきたに違いない。
 朔太郎は、泣きっ面で冷や汗をぬぐった。
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 ----こっ、これが女郎宿かよ。ふつう、〈武者隠し〉なんかおくか。もしかしたら俺たち、槍で一突きにされるところだったかもしれなかったんだ!
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 花街の顔役でもある女郎宿の店主は、隼人(はやと)という名で、その筋では、「高崎の老人」と呼ばれている。「高崎の老人」は、からから、と笑った。
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※1・3焼き物の産地。※2江戸時代の画家の名。※4近代以前の手法をとった伝統的な日本画。
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 ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※
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後 記
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 森の中を進む二人の影があった。
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 ----地蔵を彫った大木から、西へ七歩進み、そこからさらに北へ二歩むかったところを掘るべし。
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 がさがさ。
「宝石箱だ。あけてみましょう、先輩----あっ、メモリースティック、ありましたね!」
「メッセージがそえられているぞ」
ここ掘れ、わんわん!」
.
 イーツマン……ば、馬鹿にしおって……。
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(トーンが低くなってきた。まっ、まじぎれっすか、先輩?) 
. 

(《どこまでも》つづく……)

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 ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※
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コメント

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2009/12/10 03:49
藍姫 様

 実在の人物は日本文化の専門家です。実際、日本語も堪能で、師匠が京都大学学長になる浜田耕作博士でした。考古学分野では神様のような人です。朔太郎より詳しいのは当然です。
 著作を読む限り、朔太郎は洋かぶれで、ミーハーに思えます。日本文化に対しての造詣はありません。

 佐藤氏、はい怖いですねえ~。気をつけます。

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2009/12/10 03:42
BENクー様
ドロシー博士は実在の人物です。当時、彼女がアメリカで発表した英論文を眼にした、日本の華族系文化人が、ドロシーのあまりの造詣の豊かさに感服し最大級の賛辞を送っています。戦前・戦後にかけて、日本文化研究の最前線におられた学者で、著書の一部は和訳され、日本でも出版されています。

高崎の老人は、亡くなった父から訊いた、車隼人(くるまはやと)という超人伝説をもとにしています。下地があるとつくりやすいですねえ。

はい、ウッドペッカー状態! 
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2009/12/10 03:34
酒井しのぶ様

本編のコメント! (笑) 
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2009/12/10 03:33
咲様

シナモンとは全く違ったタイプの才媛ドロシー博士。今回だしたこのコンビ、うまく機能すればかなり面白い展開となるでしょう。おっしゃるように、「高崎の老人」は、けっこう重要な役回りです。

はい楽しいです。 
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2009/12/10 03:28
ソラちゃんへ

ドロシー博士と高崎の老人の対決、どうなるか!

あ、主人公が違いましたね。 
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2009/12/09 22:42
流石、ドロシー女史 ^^
日本人の朔太郎よりも心得ていらっしゃる。
高崎の老人が、どのように事件に係わってくるのか、楽しみにしています。

佐藤さんが怖いです ^^;
スイーツマンさん、お気をつけて!
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2009/12/09 21:07
ドロシーの肝の太さと、日本文化に対する知識の深さに感服。さすがは臨時執事として雇われただけのことがある!(…かなり魅力あるキャラクターになりそう。「飛行船~」の時の佐藤のような感じがします。
対する朔太郎の恐怖心にも納得・・・ドロシーは肝の太さと知識で、朔太郎は日本人だからこそ知る暴力への恐怖心を持って老人と対面している姿が分かりやすく描かれています。
PS・・・逃げながら2人をおちょくるスイーツマン。書きながら逃げる・おちょくる・・・どうか捕まりませんようニ!www

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2009/12/09 18:45
佐藤さん(私のなかではシュガーちゃんと命名されましたが)がかわいそう(笑) 
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2009/12/09 15:10
可憐でチャーミングなシナモン姫様も素敵ですが、クールで恰好いいドロシー博士にも惚れ惚れいたします…あれ?もしかして私、夢二さんよりタチが悪いんじゃ…。
しかし高崎老人のこの物騒な歓迎…単によそものを警戒したのか、それとも事件と何かかかわりがあるのか…ついつい何でも疑ってしまいます。

スイーツマンさん、なんだかとっても楽しそう…。 
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2009/12/09 10:50
さすが、ドロシー博士ですね。お見事♪
高崎の老人・・・。新たな登場人物が・・・。

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こんばんわ

こんばんわ。
今日も寒いですね。

隼人老人、こわーです(^_^;)
昔の女郎屋、こんな人いたでしょうね。
とても朔太郎風情が太刀打ちできるあいてではないですね。
ドロシー博士、かっこいいです。
それにしても編集部員、仕事しとるとかいな(^_^;)

No title

隼人老人とドロシーの役付け、
こわい、かっこいい----の意図。
感じ取っていただけてありがとうございます。

いつもコメントをくださいまして感謝いたしております。

KOZOU 様 

隼人老人とドロシーの役付け、
こわい、かっこいい----の意図。
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