伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 甘酒/恋太郎白書139・(巡礼編7)
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

甘酒/恋太郎白書139・(巡礼編7)



昭和時代末短編恋愛小説群
恋太郎白書(巡礼編)
第139回 甘酒
   
昔、恋をしてはふられてばかりいる若者がおり、人は指を差して恋太郎《れんたろう》と呼んだ。花や紅葉《もみじ》がはらはらと漂う、そんな若者であった。



小田急線藤沢駅から江ノ島電鉄の列車に乗って湘南を抜け、鎌倉駅の少し手前である長谷駅で下車。そこから県道三十二号線を徒歩で五百メートル北上したあたりに高徳院があった。

小春日和の土曜日だ。どうということはない。また亡き恋人、長い髪の少女雫《しずく》と歩いた道をたどっただけのことだ。その日は、久しぶりに愛矢《よしや》と連れ立って歩いた。

後背に大仏像が控えている茶店に寄り、赤い縁台に男二人が座った。特に何を話したというわけでもない。マフラーを巻いた二人の男が、甘酒を注文すると女将が湯呑を運んできた。

「なあ、恋太郎。俺を雫ちゃんに見立ててキスしてもいいんだぞ」

飲みかけた甘酒がむせる。奇妙なものだ。馬鹿をいう悪友の言葉が恋太郎を和ませた。



愛矢が喫茶店「めらんこりい」のマダムの手紙を恋太郎に渡した。

「明日の日曜日は、新宿駅に集合。恋太郎君もきなさい」

マダムには逆らえない。気が進まぬが行くことに同意する旨を愛矢に託した。


(次回、巡礼編最終回)

短編版『恋太郎白書』(雫編)は下記にまとめられております。
 (無料) http://r24eaonh.blog35.fc2.com/blog-entry-44.html

また短編版『恋太郎白書』全編は下記ブログトップページに目次があります。     
 (無料) http://r24eaonh.blog35.fc2.com/



【登場人物】

恋太郎《れんたろう》:失恋の天才児。

雫《しずく》:故人。恋太郎の学生時代の恋人。

愛矢《よしや》:恋太郎の悪友。


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genre : 小説・文学

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