伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 伯爵令嬢シナモン3『修道院島』第1章7
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

伯爵令嬢シナモン3『修道院島』第1章7

前回までの粗筋
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 1920年代の終わりごろ、群馬県の利根川中州〈軍艦島〉で若い女性黒岩梅の遺体が発見された。容疑者は画家竹久夢二。 夢二の知人萩原朔太郎は、佐藤記者を介して、レディー・シナモンに捜査を依頼する。高崎警察署でいくつかの手がかりを得たシナモン。遺留品である岩石の微細片を専門家に鑑定してもらうため家宰・佐藤・中居を送りだし、自らは朔太郎兄妹、ドロシー博士といっしょに、事件当日、夢二を載せた車夫のところへむかうのだった。
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主要登場人物
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レディー・シナモン……英国伯爵令嬢・考古学者。「コンウォールの才媛」の異名がある。
ドロシー・ブレイヤー……京都大学在籍の米国人女性考古学者。短期契約でリザード伯爵セシル家執事となり、シナモンのガイドを勤めている。
萩原朔太郎(はぎわら さくたろう)……群馬県出身の詩人。
萩原愛子(はぎわら あいこ)……朔太郎の妹。
竹久夢二(たけひさ ゆめじ)……奔放な画家。
黒岩梅(くろいわうめ)……〈軍艦島〉で変死体として発見された女性。夢二の元交際相手。
豆吉(まめきち)……事件当日、夢二を乗せた人力車の車夫。
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    ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※
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 朔太郎に案内されて市電を降りるとすぐに、街の雑踏(ざっとう)がきこえてきた。自転車、行き交う人の声、砂利道を行き交うまだ少ない自動車の排気音、それに遠くの工場からは、鈍かったり鋭いかったりする金属音が鳴り響く。タールやらペンキやらを塗ったくった木造瓦葺きの商店街からは、豆腐(とうふ)や蕎麦(そば)といった匂いが土埃に混じって漂っていた。
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 人力車の店舗があるのは高崎駅前だ。木造平屋で、軒先には人力車が連なっている。客待ちの車夫は五人ほどおり、昼近くであるため、土間で弁当をかきこんでいた。
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 朔太郎が車夫に訊いた。
「豆吉さんはいるかね?」
 車夫の一人が吐き捨てるように答えた。
「また刑事さんかい? 豆吉ならいねえよ。 あいつは、明け方、女郎と駆け落ちしてどっかへいっちまったみていだ----可愛そうに、おかみさんが泣いてたぜ。女房・子供には書き置きだけしか残してやらなかったんだとよ……そんな具合だから俺たちにも何の断りもねえ。まったく、あんな薄情な野郎だとは思わなかったわい」
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 深縁の帽子を被った若い貴婦人と、クールな瞳をした背丈のあるベレー帽の女性が顔を見合わせた。朔太郎と妹の愛子も途方に暮れている。
 やがて、気を取り直したシナモンが、駆け落ちした車夫について、仲間の車夫にいろいろ訊き始めた。事件当時、夢二が店先を訪れたときの様子、豆吉との会話、服装や所持品、天気や出発時の方向……。そして、駆け落ち相手の女郎宿の場所、豆吉の居所などを訊きだした。
 四人は、手分けをして調べることにした。朔太郎とドロシー博士が女郎宿へ、シナモンと愛子は豆吉の家にむかったのである。
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  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※
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後 記
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 ここは、怠け者の自作作家を収監する、株式会社雑誌『東京倶楽部』社員保養所〈イゼルローン山荘〉である。収監された自作作家はどんなに遅筆であろうとも猛スピードで作品ができていくという噂があるところである。
 私は執筆の途中、怪しげな視線に気がついて、防弾ガラスをはめ込んだ後ろの壁を振り返った。
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 なっ、なんだ~!
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 むこうの部屋の佐藤と中居がガラス壁にヤモリのように、べたり、と顔を貼り付けているではないか----。ずっとそうしていたのだろうか? だとすれば、ヒマだ。ヒマすぎる……。
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(《どこまでも》つづく……)

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   ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※

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コメント 

アバター

2009/12/04 05:20
咲様

そうです。第二の事件をはらんでいます。車夫の周囲を調べれば手がかりがでてくるでしょう。

咲さんはいつもおやさしいなあ。
モンブランは、フランスのある貴族に代々伝わるお菓子でした。
その家系が残り、現在もつくっていると面白いですね。
ウインー会議の宰相リシュリューのご子孫がワインをつくっていたり、プロイセン家が財団という形ながらドイツに城をもっていたり、と調べると意外なことがわかってきます。(大脱線)  
アバター
2009/12/03 23:46
重要人物と目された車夫が失踪?最悪の事態…つまり第二の事件の発生を危ぶんでしまいます。
とにかくこの車夫の周囲を調べるしかないようですね…。

佐藤さん、中居さんどうかお手柔らかに…。
今度、モンブランを差し入れに参ります。  
アバター
2009/12/03 22:45
はい、サスペンスの要素もいれてます。ミステリーの一種ですから。

単純にスイーツマンを構い過ぎて疲れたのかと……。

ところで、体調は? 早くねてください。
 
アバター
2009/12/03 22:29
豆吉さん、どこに行ったのでしょう?
事件関係者がいなくなると、何かあったのではないかとドキドキします。
サスペンスドラマも見すぎですねぇ ^^;

佐藤&中居コンビは、よほど心配なんですね。姫様が ^^
それより、早く姫様と合流させろぉ~と思っているのでしょうか?  
アバター
2009/12/03 21:00
BENクー様

今のところ唯一の糸口です。この人を切り口としなければ定石からは外れるでしょう。
朝の出来事で、警察はまだ気づいていません。担当の長尾警部が頭がやわらかければシナモンの出番はないでしょう。

『東京倶楽部』がギャグ集団と化した。(ど、どうして知ってしまったのですか? トップシークレットだったのに) 
アバター
2009/12/03 20:43
やはり車夫(豆吉)が大きな手掛かりを握っているようですね・・・
でも、カミさん持ちの車夫がここで女郎と駆け落ちしては警察も黙ってなさそうですが・・・
・・・という疑問を持ちつつ次回も待ってます!
もう、完全に東京倶楽部はギャグ集団と化してしまったようですね。www  
アバター
2009/12/03 20:43
落ちても駆けるのが人生というものでしょうかねえ。

容疑者をみつける → 居場所にはいない。しかし手がかりをみつける。 → つぎの場所を探す。

というところ。DVDの『ホームズ』を観てます。ドラマに時間制約があるせいか、この手順は回数が少ないですねえ。もっともホームズは天才なので、初めから解決していて、現場で立証していくわけですが。いずれにせよこじつけですね。そのこじつけを自然に、楽しく、読者を魅了させるのが著者の腕前----というふうに私は解釈します。

私も起承転結という概念はあまり活用していません。最近の私のスタイルです。

 序 → オプションストリー → Aストリー → オプションストリー → Bストリー → オプションストリー → (A・Bストリー)結 → オプションストリー(次部に、つづく) 
アバター
落ちないで駆けてみたいと思うのは、もけだけでしょうか?

推理ものの定石・・・どんなんでしょうねえ(#^.^#)



あ、ちなみに起承転結などの型にはまったと見せつつ、

それを崩したり飛び越えたりする記述方法って面白いですよね  
アバター
2009/12/03 18:38
桜様

 いえいえこちらこそ。

アバター

2009/12/03 18:38
ソラちゃんへ

はい、登場しました。
女郎と駆け落ち----まあ、推理ものの定石でしょう。(笑)

ティータイムは一日にしてならず。(←なんじゃそりゃ)  
アバター
2009/12/03 17:09
いつもブログにコメント&伝言板(?)にコメントしていただき、感謝です☆
 
アバター
2009/12/03 09:55
豆吉さん登場!! o(*^▽^*)oあはっ♪
女郎と駆落ち・・・、一体、何故???

スイーツマンさんのティータイムは、まだお預けですか?^^;

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こんばんわ

こんばんわ。
今日は少し暖かだったようです。

考えたらシナモン嬢に日本の片田舎の女郎や豆吉その他にあたって探偵してもらうのは気の毒ですね。
きっとカルチャーショックに驚くでしょうね。
それにしてもミスター佐藤と中居、ほんとにヒマー(^_^;)
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