伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 超人ハヤト伝説  恋太郎白書126・短編
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

超人ハヤト伝説  恋太郎白書126・短編

隼人という人を記憶する者はもはや数えるほどもいまい。

勇作の先祖は郷士で勤王の志士だった。水戸学にかぶれ、天狗党関係者からガラクタの関連グッズを高値で買い、村社を水戸徳川家ゆかりの常盤神社に改装したりしている。志士である放浪の武芸者を愛し、武芸者たちは稚拙な書画をかき残し宿賃代わりとしたものだ。風変りな者もいて、そのままこの地に土着した侍もいた。槍と鎖鎌の名手である隼人もその中の一人だ。水車小屋の番をしていたというので、水車小屋の隼人と呼ばれていた。



秋、小学生の勇作が学校から帰ってくると、稲刈りの手伝いに来る老人がいた。

「帰ってきたな、ボン。さあ、いつものやつ、やるぞ」

「うん」

老人は長い肥担ぎ棒でいきなり少年の脚をなぎ払おうとしするのだが、少年は巧みにそれをかわして舞い上がり、手にした短い棒を老人の顔めがけてうちかかる。もちろん老人は紙一重でかわす。

「いいか、ボン、槍の一撃めはかわすんだ。相手が空振りしたところを狙って討て」

どうやら武術の極意の様子。九十を超える年齢には似つかわしくない隆々たる筋肉は四十年さばを読んでも不思議ではなく、もっとも特徴的なところは右肩の異常発達にあったと伝え訊く。隼人、まさしく隼(はやぶさ)のような人だった。

隼人が走るときは異常発達した右肩を前に出して走る。空気抵抗がなくなるだろ。隼人は走りながら握り飯を食う。そのとき流線型にしていた身体を普通に戻して走るんだ。このとき腹に編み笠を当てる。すると風圧で傘がへばりつく。

勇作の話すことは誇張のようだが、なぜか恋太郎はリアリティーを感じた。



隼人が村に現れたのは戊辰戦争の前後であろうか。戊辰戦争といえば会津戦争が有名ではあるのだけれども、恋太郎の郷里においても磐城戦争というのがあり、一進一退の大激戦で、市街戦までおきて焼け落ちた名刹は多く、家から少し離れた寺社には弾丸が柱に食い込んで残っている。
 
幕末、近所の沢地で石炭が発見されるやゴールドラッシュ状態となる。発見地の弥勒沢は道路が整備され、近くを流れる新川は川底がさらわれ舟が往来し石炭輸送を開始する。明治初頭の庄屋が山師に騙された。

「旦那、いい石炭鉱脈をみつけやしたぜ。ちょっと立ち会ってください」

山師が発破(はっぱ)を仕掛け、「鉱脈」という場所を爆破すると石炭の塊がばらばらと地面に転げ落ちる。されどそこには鉱脈はなく、あらかじめ石炭の塊を埋めていたのだ。この罠に、庄屋はまんまと引っかかり、用心棒をひきつれ乗り込んできた債権者たちに拉致され、東京に連行されていく。

このとき、庄屋奪還作戦に手を挙げた人物がいた。それが隼人だった。隼人は、健脚をいかして三日で東京に乗り込み、庄屋が拉致されていた債権者の屋敷に乗り込んで、用心棒たちを相手に大立ち回りをして見事庄屋を奪還する。



実のところをいうと、勇作の実家は庄屋の親族で保証人の一人となっていたし、そういう家はいくつもあった。つまりは隼人は村の恩人である。その後、隼人の家がどうなったか恋太郎は勇作が亡くなる前に訊きそびれてしまい悔やんだ。


【登場人物】

恋太郎:学生。失恋の天才児。

勇作:恋太郎の父。

隼人:伝説の勇者。
 

※ 勇作のモデルである著者の父より訊いた話。真偽のほどはさだかではありません。

スポンサーサイト

theme : 自作連載ファンタジー小説
genre : 小説・文学

line

comment

Secret

line
line

line
Google ペイジランク
ページランク-ナビ
line
奄美剣星
line
文鳥貴族
文鳥貴族
line
最新記事
line
「怪盗めろん」

 

line
「文鳥王トリスタン」
 
line
ブクログ
line
小説家になろう
line
amazon書籍
line
アルパカ版の恋太郎です
line
映画『副王家の人々』より
副王家の一族 
line
イアリング
 ekubo
line
チャイナドレス
chainadoress
line
ポーズ
sofa
line
魯迅記念博物館
inu
line
陽だまりの乙女
usagi
line
裸婦
うつぶせのジャスミン
line
sakasu
line
打ち上げ花火をあげられる四季の風景時計
line
PC広告Amazon
line
テーブルと椅子
椅子3   
line
sub_line
プロフィール

奄美剣星 (狼皮のスイーツマン)

Author:奄美剣星 (狼皮のスイーツマン)
1930年前後の歴史推理小説 シナモンと素敵な旅をどうぞ

line
ranking 1
 
line
ranking 2
人気ブログランキングへ
line
置手紙
おきてがみ     
line
Twitter ぼたん
Sweetsman7をフォローしましょう
line
レッドバロン
line
検索フォーム
line
QRコード
QRコード
line
所収作品について
文献・画像等引用の場合は引用元を記載。自作小説倶楽部作品著作権は各著者に帰属。それ以外の文藝作品・絵画写真画像に関する諸権利は当該ブログ管理人に帰属。無断複写転載を禁じます。
line
カジュアルのシナモン
シナモンアップ 
line
リンク
line
マラッカ要塞
marakka
line
珈琲館の割れ甕
城南
line
地図
line
草原の乙女
sougenn
line
バー
eruhurio  
line
海へ行こう
umiheyuku2
line
祖母
  umiheyuku 1
line
洗い髪
araigami
line
癒しの音楽
line
sub_line