伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 勇作射殺 恋太郎白書125・短編
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

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勇作射殺 恋太郎白書125・短編

恋太郎が子供の頃、米兵と思われる五人の若者が勇作たち家族と一緒に写っている写真がアルバムにあるのをみつけ、違和感を覚えて父親の勇作に訊いてみた。



勇作たちは、「鬼畜米兵を殺せ」と教え込まれ育ってきた。ところが、玉音放送があって敗戦が国民に通達されると政府は掌を返したように、軍国主義的な内容の教科書に墨入れしたり、軍部に関わった公務員を解雇しだした。

当時、旧制中学校に通っていた勇作とその級友たちは、軍事教練に使っていた銃剣を学校から盗んだ。そのことはたちまち学校の知れるところとなり、男子校の全校生徒が呼び出される。軍事教練をしていた教官の下士官が、

「あえて止めはしない。ただ射殺されることにはなる」

とだけ告げた。勇作たちは決起に早って反乱を企てたものの、駅や要所に物々しい数の自動小銃で武装した米兵をみて恐ろしくなり武器を防空壕に隠した。

それから数か月経った。



勇作の家から二キロ離れたところに捕虜収容所があり、米兵を中心に収められており、米国が占領しているのだが手続きのため解放されずにいた。日本は食糧難であったので、友軍捕虜のために米軍は輸送機で収容所も真上にきてはパラシュートで缶詰などの食糧を投下していったものだ。霧の深い日、そのうちの一機が近くの山に衝突する。

勇作は下の弟たち、近所の悪童どもを率いて、「戦利品」を掠めに行った。機体は砕けてあちこちに散乱している。

カレーや飯の入った四角い大きな一斗缶。掌に載るサイズの鰯(いわし)の缶詰なんかも散乱している。仔分どもは食糧を漁りあとで分配する。勇作と弟は機関砲を外して持ち帰る。

帰る道すがら、近所の人たちが、「そんなもの何に使うんだい?」と訊いたので、「雀を撃つんだ」と答える。機関砲の口径は五センチほどはあろうか。撃てば雀が砕けてしまうではないか。

戦利品を持って手柄顔で凱旋してくると、復員したての勇作の父親が、「侍のすることではない。返して来い」とこっぴどく叱られ現地に戻す。

翌日、駐在所の巡査が、住民たちに、「掠奪品を返すように」と触れ回る。近所の大人は機体のタイヤを剥いでゴム草履を作ったのだが、さすがにこれには呆れて、返さんでもよろしいといって苦笑した。

こういう噂もあった。

「米軍は新型電波探知機を持っていて、反乱防止のため、『刀狩』をやっている。もし内緒で武器を持っていることが知れたら射殺される」

勇作の父親は先祖伝来の太刀を折って鉈にした。残りは勇作に手伝わせて裏山に穴を掘って埋める。油紙には包んでおいたが、翌年掘り起こしたところ、ぼろぼろになって原型をとどめていない。



話しを戻す。
勇作とその父親の努力は虚しく米兵がやって来た。ジープが門前に停められ、五人ばかりが降りてくるや庭を勢い駆けてくるではないか。

勇作とその家族は驚愕し、(射殺される!)と思わず目を閉じる。

「ミスター・スズキ!」

離れを間借りしているのが鈴木氏一家である。鈴木氏は捕虜収容所の看守をしており、敗戦間際で他の看守たちが米兵を虐待しようとすると庇ったりしていたので、捕虜たちに好かれていたのだ。若い兵士たちは本国帰還にあたって挨拶をしに来たというわけだ。抱擁する米兵と鈴木氏。

米兵たちが鈴木氏に缶詰を山にして置き還る。勇作の家にも十分過ぎるお裾分けが届いた。


【登場人物】

勇作:長じて恋太郎の
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