伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 「映画館」 恋太郎白書117・短編
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

「映画館」 恋太郎白書117・短編

盆地に築かれた城があり、本丸のある堀端から東に少し行ったところに、カラフルなビニールの天幕で覆われた「銀座通り」という名前の商店街がある。そこを北に向かって歩いて行くと映画館があった。

映画が始まるまで間があるのでお茶でも飲もうと思った。映画館横の喫茶店は一階が鞄屋になっているところの北壁から上がっていった二階にある。ベニヤ板壁には、ガラスの浮き、総舵輪。アーケードの通りに面した窓には小さなバルコニーがある。

大きな窓は開かれて、夕方は買い物客でごったがえ。その喧騒を見下ろした窓際の席に就きアイス珈琲を注文する。

映画の題名は『王様と私』。筋を想像し時間を潰す。



昔、優しい「王様」がいて、隣国の王女である「私」と婚約をする。それからほどなく黒い竜に乗った魔神が現れて、王女「私」の王国を時間の止まった氷の世界に閉じ込める。知らせを訊いた「王様」は、大軍ではなく信頼のおける騎士を何人か連れて氷の王国に旅立った。

魔神は、旅の途中で「王様」と騎士たちの行く手を阻む。あるときは、死霊の騎士団を送り込み、あるときは、妖艶な魔女を送り込んで誘惑。洪水を起こしたこともあった。一人減り二人減り、そしてどうにか氷の王国にたどり着いたときは「王様」ただ一人。

クライマックスは、氷の壁に封印された「私」を巡って、「王様」と魔神との一騎打ち。長旅で疲れた「王様」が追い詰められて絶体絶命。黒竜の尻尾が「私」のところまで「王様」を弾き飛ばす。そんなとき透明な壁一枚向こうの王女「私」が目に入った「王様」は最後の力を振り絞り、透明な氷の壁の中にいる「私」と口づけする。

突然、雷が鳴り響き、王様は力がみなぎる。「力」《フォース》を得た「王様」が手にした長剣はまばゆい閃光に包まれ、襲い掛かる竜の首を斬り落し、たまらず飛び降りた魔神ともみあいになってついに仕留める。

そしてめでたく『王様と私』は……。



夜の九時、セーラー服姿をした少女の話を訊いていた学ランの少年が、「喫茶店での話とだいぶ違うぞ」と呆れ顔。少女は、「ねえ、『王様』、ダンスしよ」と笑う。



二十年後の喫茶店「めらんこりい」である。

「ママさん。その『王様』が旦那さんなのですね?」

「あらよく判るわね。『王様』はダンスが下手なの。さあ恋太郎君、私のレッスンに付き合って」

マダムの娘美咲がタンゴのレコードをかけた。その日も王女「私」は舞踏会でダンスする。「王様」の代わりの恋太郎であったのだけれども。


【登場人物】

恋太郎:大学生。「失恋の天才児」

マダムと美咲:喫茶店「めらんこりい」の店主と娘。

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