伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 伯爵令嬢シナモン3 「修道院島」第1章2
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

伯爵令嬢シナモン3 「修道院島」第1章2

 

前回までの粗筋

 1920年代の終わりごろ、聡明で優雅な考古学者レディー・シナモンは、ライフワークとなる研究目的から日本を訪れていた。そのシナモンの取材のため、東京から、雑誌『東京倶楽部』の佐藤記者と中居カメラマンのコンビが、高崎に派遣された。二人は、そこで詩人萩原朔太郎に出会ったのだった。
  他方、高崎郊外にある大類村には、利根川の中州である軍艦島というところがあった。そこを訪れた画家竹久夢二は、遠望する榛名山をスケッチをしているとき、偶然に、女性の遺体を発見してしまう。

主要登場人物 
 
レディー・シナモン……英国伯爵令嬢・考古学者。「コンウォールの才媛」の異名がある。
ドロシー・ブレイヤー……京都大学在籍の米国人女性考古学者。短期契約でリザード伯爵セシル家執事となり、シナモンのガイドを勤めている。
スイーツマン・ウルフレザー……リザード伯爵セシル家の老家宰。『伯爵令嬢シナモン』の著者。
佐藤・中居……雑誌『東京倶楽部』の記者とカメラマン。社命によりシナモンを取材中。 
萩原朔太郎(はぎわら さくたろう)……群馬県出身の詩人。
竹久夢二(たけひさ ゆめじ)……奔放な詩人にして画家。
長尾(ながお)警部……群馬県警所属。「軍艦島事件」の担当者。

 ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※
           
 軍艦島での遺体発見の話は、報道機関は、まだ発表されていない。

 早朝のことである。午前六時を回ったばかりだというのに、とても明るい。雨さえ降らねば昼はとてつもなく長くなる時期だ。
 長縁の白い帽子を被った若い貴婦人レディー・シナモンが訪れていた。
 貴婦人のお供をしているやはり若い女性は、ドロシー・ブレイヤー博士という。シナモンが日本に滞在している期間のみの契約ではあるがリザード伯爵家執事の肩書きがある。
 軍艦島近くの断崖を二人は、手際よく、高さを測り、地層の特徴をノートにメモしていった。
 ウルフレザー家宰は、仕事が一段片付いたところで二人に訊いてみた。
「いったい、この作業にはどんな意味があるのですか?」
 シナモンは、一度眼を細めてから、こう説明した。
「家宰、地域の土の堆積の基本パターンを観察をしているのですよ。基本パターンの自然な地層堆積を、異常な形で壊しているのが、古代の住居跡などの遺構となります」

 ----なるほどそういうものか。

 事件というものは日常の状態を壊した異常事態だ。そういう点で考古学というのは事件の捜査に共通したところがある。まあ、もっとも、両分野にまたがって卓越した才能を発揮できる人というのは希であろう。家宰はそんなふうに思った。
 そのときだ、
 
 ----川辺に異常なところがある。気のせいならいいのだけれど。

 シナモンは、軍艦島を臨む崖を降った砂の川辺をみて、〈異常〉に気づいたようだ。そして家宰と執事を川辺から退去させたのだった。
 突然、素っ頓狂な訊きなれた声がした。
「姫様! なぜここに?」
 声の主は、崖から川原に下りる谷になった坂道にいた。細身で中背の男だった。雑誌『東京倶楽部』カメラマンの中居だ。横にいたのは、日本人にしては長身でがっしりした体躯をしている記者の佐藤である。

 記者とカメラマンの後ろから、警察の一団が割って入ってきた。
「現場を荒らさないでくれて感謝します。私は群馬県警の長尾といいます。そこの中州で女性の遺体が発見されましてね。いま調べているところなのですよ」
 そういってから、
「----ああ、外国の方だった。佐藤さん、英語が堪能だったね、通訳頼むよ」
 と付け加えた。佐藤は、ふっ、と笑って、
「日本語が堪能な方です。ふつうにお話になっても大丈夫ですよ、長尾警部」
「えっ?」

 当時、日本語を理解する欧米人は希有であった。意外そうな顔をしている中年の刑事を前にして、深縁の帽子を被った若い貴婦人は、スカートの裾を軽くつまんで一礼した。
「ザ・ライト・オノラブル・レディー・シナモン・セシル・オブ・リザード----シナモンとお呼びになられて、さしつかえありません」

 ----なんて優雅な身のこなしなんだ!

 長尾警部以下、群馬県警の一団はしばし呆然となった。
   
  ※  ※  ※   ※  ※  ※  ※  ※
  
後記

 突然、パソコンを打っていた私の後ろに人の気配を感じ振り向くと佐藤氏が立っていました。クレームか----。
「スイーツマン!」
「はいはい、本日のご用は?」

「猛烈、うれしーぞ!」

「?」

 そっ、そんな、激しく握手しないでくれ~っ。貴兄の握力は尋常じゃないんだよ~っ。こら、中居、どさくさに紛れて後頭部にチョップ食らわすな! 二人ともキスはいらんからな。

.

.
  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※
.

コメント

.

アバター
ちょろち様

そういってくださると嬉しいです。今後ともごひいきに。
アバター
咲様

周知巡回の件、了解しました。
 
アバター
咲様

 鋭いところを突きますね。

 レディー・シナモンがみつけた異常とは、事件の痕跡です。
 
アバター
藍姫 様

 佐藤----。芸達者なもので、つい、そちらの面をだしすぎたようです。(反省)
 えっ、そんなに重要なポジションにいたとは----。(おろおろ)
 
アバター
ヨーグルト大魔王 様

喜んでくださってなにより。今後とも宜しくお願いいたします。
 
アバター
よかっただすねぇ~

文字サイズを大きくしたかいがありましたね♪

ちなみに
私も同感でありますだす♪www
 
アバター
  • 2009/11/24 23:38
追伸、「自作小説倶楽部」にサム猫さんが入会されました。つきましては会員名簿で、麗蘭さんからまっき~ペンさんまでの周知化をお願いいたします。
小説を書かれているそうなので創作会員と判断しましたが、ご本人の意思に背くようでしたら即刻訂正をいたします。
 
アバター
  • 2009/11/24 23:04
佐藤さんがふっと笑ったのが(どうだ、姫様はすごいだろう)と言っているように見えて何だか可愛らしく思えてしまいました。
姫様が見つけた<異常>とは…?やっぱり地質学的なことなんでしょうか。
 
アバター
本文登場時は 極めて気取った感じですねぇ、佐藤さん。
後期で、思いっきり崩れているようですけど ^^;

方々で、ファンを増やすシナモン姫。佐藤さんでなくても心配ですねぇ~。
本当の意味で、姫様を守れるのは スイーツマンさんだけなので、しっかり
ガードしてくださいね!
でも、姫様の活躍は楽しみにしていますよ。
 
アバター
2009/11/24 18:31
ふむふむ、字が大きくて大変読みやすいです、ありがたや~!

さくさく読めて、良いです!!好きです!
次回が気になりますのぉ~^^って、ミステリーだったんですね!←そこ?
 
アバター
BENクー様

恋は人を変えてしまうのかも。
佐藤はコメディアンに転職したのかも。
 
アバター
今回のシナモン3から後記として「作者スイーツマンと東京倶楽部記者たち」が加わり、よりコミカルに描こうとされているようですね。(…「飛行船の殺人」から見ると、佐藤記者の変貌は著しいかぎりで…ぷぷぷっ!
・・・ということで次回も期待のステプをポチっとな♪

.  

  ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※   ※ 
. 

ポチボタン

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログへにほんブログ村

小説・詩ランキング

. 

人気ランキング娯楽部 ※

  http://www.blogmura.com/help/?type=h&no=12http://ping.blogmura.com/xmlrpc/b3byx262eg9q にほんブログ村 




おきてがみ
次の行まで必要
------------------------------


 つづきをみる

 

スポンサーサイト

theme : 自作小説
genre : 小説・文学

line

comment

Secret

こんばんわ

こんばんわ。
今日も寒かったです。

お~~シナモン嬢登場ですね。
佐藤氏は怪力握手、中居氏はどさくさにまぎれチョップ。
木枯らしの吹く胸にホカロンが入ったような。

酒井さんのご紹介ありがとうございました。
ファッキン・シスターズ・クライスト、プロローグ読ませていただきました。タイトルも強烈ですがオープニングもなかなかのものですね。

Re: こんばんわ

KOZOU 様

昨日は木枯らしで写真撮影がうまききませんでした。
シナモンがでると盛り上がりますねえ。(←佐藤と中居が)

酒井さん、強烈でしょ。(笑)

どうもありがとうございます。
line
line

line
Google ペイジランク
ページランク-ナビ
line
奄美剣星
line
文鳥貴族
文鳥貴族
line
最新記事
line
「怪盗めろん」

 

line
「文鳥王トリスタン」
 
line
ブクログ
line
小説家になろう
line
amazon書籍
line
アルパカ版の恋太郎です
line
映画『副王家の人々』より
副王家の一族 
line
イアリング
 ekubo
line
チャイナドレス
chainadoress
line
ポーズ
sofa
line
魯迅記念博物館
inu
line
陽だまりの乙女
usagi
line
裸婦
うつぶせのジャスミン
line
sakasu
line
打ち上げ花火をあげられる四季の風景時計
line
PC広告Amazon
line
テーブルと椅子
椅子3   
line
sub_line
プロフィール

奄美剣星 (狼皮のスイーツマン)

Author:奄美剣星 (狼皮のスイーツマン)
1930年前後の歴史推理小説 シナモンと素敵な旅をどうぞ

line
ranking 1
 
line
ranking 2
人気ブログランキングへ
line
置手紙
おきてがみ     
line
Twitter ぼたん
Sweetsman7をフォローしましょう
line
レッドバロン
line
検索フォーム
line
QRコード
QRコード
line
所収作品について
文献・画像等引用の場合は引用元を記載。自作小説倶楽部作品著作権は各著者に帰属。それ以外の文藝作品・絵画写真画像に関する諸権利は当該ブログ管理人に帰属。無断複写転載を禁じます。
line
カジュアルのシナモン
シナモンアップ 
line
リンク
line
マラッカ要塞
marakka
line
珈琲館の割れ甕
城南
line
地図
line
草原の乙女
sougenn
line
バー
eruhurio  
line
海へ行こう
umiheyuku2
line
祖母
  umiheyuku 1
line
洗い髪
araigami
line
癒しの音楽
line
sub_line