伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 伯爵令嬢シナモン3「修道院島」第1章1
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

伯爵令嬢シナモン3「修道院島」第1章1

※ 「ニコッとタウン」からの転載です。

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前回までの粗筋

 1920年代の終わりごろ、聡明で優雅な考古学者レディー・シナモンは、ライフワークとなる研究目的から日本を訪れていた。そのシナモンの取材のため、東京から、雑誌『東京倶楽部』の佐藤記者と中居カメラマンのコンビが、高崎に派遣された。二人は、そこで詩人萩原朔太郎に出会ったのだった。

主要登場人物 
 
レディー・シナモン……英国伯爵令嬢・考古学者。「コンウォールの才媛」の異名がある。
佐藤・中居……雑誌『東京倶楽部』の記者とカメラマン。社命によりシナモンを取材中。 
萩原朔太郎……群馬県出身の詩人。
竹久夢二……奔放な画家。

   ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※

  画家は、あらゆる女性を虜(とりこ)にする魔性の色香があった。竹久夢二という四十歳を少し過ぎたくらいの男だ。色白で細面、一見無害ではあるが、女性遍歴は数多い。心には翼が生えているかのようで世間の良識やら常識とやらにはしばられことがない。芸術家(アーティスト)とはそういうものだ。
  旅好きの夢二は、富山県に向かっていたのだが、車窓からみえた榛名山が妙に気に入って、高崎で途中下車をした。片手には画材を詰め込んだ鞄、小脇にはスケッチブックがある。人力車を頼み、絶景の場所を探し求めて移動し続けた。

 穏やかな陽気のなかを彷徨(さまよ)う画家の双眸(そうぼう)は、名が示すように夢見るよう。人力車は、中山道(なかせんどう)を走り、やがて街道から横にそれた田畑の小路(こみち)へと移った。小路の両端には自生した花が咲いている。その人を乗せた人力車はさしずめ、花から花へと舞い移る蝶のようだった。
 そうして昼頃たどりついたのは、大類村という利根川の岸辺であった。
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 利根川の異名は、〈板東太郎〉である。太古の昔から大氾濫を繰り返す暴れ川で、何度か流路を変えてきた。為政者と人民は、この大河をなんとかして飼い慣らそうと、流路を変更したり、支流を人工的に設けたりとしてきた。前橋から大類村に沿ったあたりの利根川は、江戸時代に開削した人工の流路である。流れは激しく、地表は深く抉(えぐ)られている。そうして抉られた川岸が中州になっているところがあった。
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 ----軍艦島(ぐんかんじま)。
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 画家が車夫に訊くと、車夫はそう答えた。夢二は、この中州がとても気に入った様子で、手前に軍艦島をおいて、奥に榛名山を収めた構図(レイアウト)となるスポットをみつけ、人力車を降り、十メートルはあろう絶壁となった河岸に腰をおろした。
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 ----ここを背景にして、美しい女性を座らせたら素敵な絵になるだろうなあ。
.
 そんなことを考えながら、スケッチブック上に木炭で放物線を描くかのようなしなやかな手の動きで、大胆に、また、繊細に、描いていく。優雅な筆さばきは、絵を描くというよりもまるで、オーケストラの指揮者が棒をふるっているかのようにもみえた。
 夢二は、軍艦島に小さな違和感を感じた。
.
 軍艦島は、その名の通り軍艦のような形をした細長い中州だ。周囲は絶壁となっており、鬱蒼(うっそう)とした木々と下草で覆われている。川沿いを走る涼風が、さわさわ、と下草の葉を揺らしたとき、小さく人の脚のようなものを、みせたのである。
 夢二は画材を置き、釣り師がつかう口を降りて河原に出、浅瀬を渡った。軍艦島の上からは蔦を(つた)が垂れている。蔦にしがみつきなら崖をよじ登って、問題の場所を探ってみた。
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 うっ、うわあああ……っ、死体だーっ。
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 ----えっ?
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 少し離れたところで煙草をふかしていた車夫が、悲鳴をきいて、しばし呆然とし、それから画家のところへ駆け寄った。腰を抜かしてぶるぶる震えている画家の向こうの茂みには、若い女性が横たわっていた。
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  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※
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後記
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 やれやれ、第1章1がおわりました。ふ~っ。

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よくやった~っ!
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 たっ、たのむから、佐藤さん、リラックスさせてくれ~っ。
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  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※
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コメント

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あさかぜ飛馬 様

 これはこれはどうもありがとうございます。今後ともごひいきに。

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     あさかぜ飛馬

      2009/11/27 12:31

初めて作品を読ませていただきます。
読み始めた途端に夢二の色香にほろ酔い気分wあらら!”
 
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川島芳子 様

期待、ありがとうございます。作品があなた様の意に添えるものに仕上げられるよう精進いたします。
 
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期待age^^
 
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 ※ 咲様へ(追伸)

 今回の舞台は、日本の群馬県と、イギリスのコンウオール州が舞台となります。
 2つの島国でおきる事件。日本とイギリス。18歳と14歳のシナモンが関わった、一見無関係な二つの事件が思わぬところで絡み合う物語にしようと考えています。
 具体的には----(まだ考えてませ~ん)
 
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ちょろち 様

 途中参加可能な構成にしておきました。
 ここからでも読んで戴ければ幸いです。
 敬遠されがちな当方の長編を覗いてくださり感謝いたします。
 
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ほうほう・・・どもだす。www
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藍姫様

坂東というのは関東平野の古名です。たぶん箱根峠の坂から東ということでしょう。関東平野一番の大河といえば利根川ですよね。ときどき大氾濫をおこす関東一番の大河という意味で、太郎----坂東太郎となるわけです。

佐藤氏----うーむ、それはそれでうるさいような気も……。

夢痔----いいかも……。ただ本人には有効ですが、夢二には女性ファンが多く、そちらから刺されそう。
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川に人の名前のような異名が付いているんですね。
しかも、実際にありそうな名前って ^^;

シナモン姫は出ていませんが、再開できてよかったですね ^^
これで、佐藤さんも、少しは おとなしくなってくれればいいのですが……。

夢ニさんがシナモン姫に言い寄ったら、こう言えばいいのですよ。
「夢“痔”って書いてやるぅ~」と ^^
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咲様

 はい、夢二はやばいです。「好色王子」で、女の子の敵かも----。咲さんは、女性でありながら、ときどき佐藤目線になられるのが面白いですね。まあその点は大丈夫、ドロシー女史と、不肖、私めがお供しておりますので----。え? 頼りない? 
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  • 2009/11/23 17:57
今度の舞台は日本ですか…?竹久夢二は私もおぼろげに名前と作品を知っているのみですが、奔放な方なのですね。姫様と会ってしまったらと思うと…うーん、なんだか佐藤さんになった気分。
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BENクー 様

 よくおわかりで----。
 本日も読んでくださりまことにありがとうございます。
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佐藤氏の言葉…「コラー!まだお嬢様出さないのか!」・・・と、作者に怒る佐藤氏であった。(…きっとこう言いそう。www

始まりました第3弾。次回ももちろん楽しみにしています!
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comment

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こんばんわ。

こんばんわ。
やはり夜は寒いですね。

竹久夢二まで出てきたのですね。
希代の色魔、あ、これは絵の色です(^_^;)
ほんとに大正時代だからまだよかったのでしょうね。
あれが昭和初期だったら国賊ものですね(^_^;)
さっそく殺人事件ですね。
これからどんな風にからんでいくか楽しみです。

狼皮のスイーツマンさん、いつも読んでいただきコメント大変ありがとうございます。

おはようございます

おはようございます。
天気はいいですが冷えそうです。

狼皮のスイーツマンさん、いつも読んでいただきコメント大変ありがとうございます。レスを書いていますのでいつかご覧になってください。
ほんとに懐かしいですね。
ところで、「コラー!まだお嬢様出さないのか!」と佐藤氏口調(^_^;)
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