伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 伯爵令嬢シナモン3『修道院島』序章2
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

伯爵令嬢シナモン3『修道院島』序章2

(※ ニコッとタウンからの転載記事です)

前回までの粗筋
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 1920年代の終わりごろ、聡明で優雅な考古学者レディー・シナモンは、ライフワークとなる研究目的から日本にむかった。

 途中、上海に立ち寄り飛行船シルフィーに乗り、殺人事件に巻き込まれる。(第1部 「飛行船の殺人」) 

 日本へ到着し、雑誌『東京倶楽部』が、飛行船シルフィーの報道をすると、飛行船の麗人「レディー・シナモン」をもっと知りたいという膨大な数の投書が寄せられた。このため、社命によって、佐藤と中居は、英国大使館に赴き、シナモンが、探偵として、考古学者としてデビューした5年前に遡る事件をまとめたファイルを目にしたのだった。(第2部 「コンウォールの才媛」)

 そして……。

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主要登場人物 
. 
レディー・シナモン……英国伯爵令嬢・考古学者。「コンウォールの才媛」の異名がある。
佐藤・中居……雑誌『東京倶楽部』の記者とカメラマン。シナモンの熱烈信奉者。

萩原朔太郎……群馬県出身の詩人。

萩原愛子……朔太郎の妹。

オットー・スコルツェニー……シナモンに関わる事件の背後に常にいる人物。「ヨーロッパ一危険な男」という異名がある。

.
  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※

.

  群馬県は関東平野の北端にあり、群馬県南西部にあるのが高崎市である。高崎城址には陸軍の連隊駐屯地が置かれ、市街地はそこから東に位置する国鉄高崎駅との狭間にあった。市街地中央には、中山道が、南北を縦断しており、路面電車は通りの真ん中を走っている。大正九年創業の洋食屋栄寿亭は、路面電車の路線沿いにたたずんでいた。
.
  栄寿亭は、洒落っ気とは縁遠い店だ。厨房に望んだカウンターがあるだけでテーブル席などない。昼時、店に入った、雑誌『東京倶楽部』の記者佐藤とカメラマンの中居は、カウンターの最も奥に座っている外国人たちに眼がいった。
 ----先輩、連中、ドイツ語と英語をつかってますね。男三人がドイツ人もしくはオーストリー人、女が中国人のようですよ。
 ----ドイツ語圏の連中だな。もしかして、あれが噂のスコルツェニーか?
 ----またまた先輩、勘ぐりすぎですよ。だいたい、スコルツェニーが 
なんで日本にいるんですか。しかもここは片田舎の群馬県ですよ。
 佐藤と中居は、独英の言葉を理解はしているが、離れた席であり何をいっているのかよく訊きとれないでいた。
.
 言葉が訊きとれない要因はほかにもあった。佐藤たちと中居たちの中間に陣取っている兄妹の存在である。まだ年若い。妹のほうは普通だが、問題なのは、黙っていれば貴公子然としている兄のほうだった。
「兄さん、後生だから、ここで、それやるのやめて」
「----私は、怪盗伊達猫(ダンディー・キャッツ)、猫町の大泥棒。名探偵愛子(あいこ)君、さあ、剣を抜いて勝負したまえ」
 妹は箸を剣にみたてて振り落としてきたところを、手慣れた調子で、「にゃあ!」と受けた。
 佐藤は、首をかしげて、
「この兄妹、どこかでみたことがある。あっ、そうだ。思い出した。萩原朔太郎氏と、妹の愛子嬢じゃないか!」
「朔太郎って誰すっか、先輩?」
「詩人だよ。わが社の雑誌にも作品を掲載したことがある。もっとも俺が担当したわけじゃないけれどな」
「物覚えいいっすね、先輩。尊敬しちゃうなあ」
「なんか、おまえが褒めると嫌味なんだよ」
 萩原朔太郎は群馬県の開業医の家に生まれた。詩人であるが、熱烈な探偵小説ファンであった。朔太郎が怪盗伊達猫(ダンディー・キャッツ)といって妹と箸で立ち回りをしていたのはそこにあるようだ。
.
 外国人の男女四人は、食事代を支払うと、店を出てすぐにやってきた路面電車に飛び乗って行ってしまった。
 佐藤たちは横目で背中を追ったが、怪しい奴らだ、と感じただけで、とくに追いかけるほどの理由もないので、そのまま詩人に名詞を渡したのだった。


 ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※

後 記

.

 『伯爵令嬢シナモン3』開始の翌日。前日のケーキの入った箱につづいて、違う小箱がとどいた。小箱にはメッセージが添えられていた。

  ----姫様がでていないぞ~。

 つぎに登場しなかったら、こうだ。

 パン

 (ぎゃっ、びっくり箱)


(《どこまでも》つづく……)

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 ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※

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コメント

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咲様

コンウォールの才媛の特技は、お友達をどんどんつくっていくところでしょう。
朔太郎の作品は詩が主体ですけれど小説もあるにはあります。
ただの推理ものを読んでいると、トリックとか筋だては、感心しますけれど、時代性とか歴史上の人物とかの登場が少なく、私好みの作品は多くありません。(あまり読んでないからですけれど)

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藍姫 様

朔太郎、史実ゲストは、なるべく教科書に載るような人がいいと考えている次第。判りやすい人で良かったです。ただ調べてみると、甘いマスクの彼の日常には、わがまま「坊ちゃん」ゆえの激しいものがあり、結婚生活は悲しいものがあります。妹、愛子は、血族ゆえの理解者で、ある種、伴侶のようにも感じました。
 
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  • 2009/11/15 22:16
かの萩原朔太郎から手紙を受け取るとは…コンウォールの才媛は顔が広くていらっしゃいます。
登場する史実ゲストのことや、当時の背景を探るのもこの物語を楽しむ一つの方法かもしれません。私もちょっと萩原朔太郎の作品に触れてみなくては。
 
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>スイーツマンさん
 さり気なく実在の人物が顔を出すので、本当の事のように感じてしまいますぅ ^^;

 個人的には、佐藤&中居コンビの出番があって良かったなぁ~と ^^
 2部の最後では、再会できたようですが、もっと姫様と一緒にいる時間を増やせと、
 言いそうですねぇ ^^;(特に佐藤氏がw

 続きを楽しみにしております。
 
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BENクー 様

 第3部における歴史上の人物ゲスト、初期候補が、来日した著名人が、建築家ブルーノ・タウト、物理学者アインシュタイン、俳優チャップリンの三名でした。詳細を調べると、いずれも1932~33年と、設定の1928年よりあとでしたので、残念ながら見送って、別の機会に登場させようと思います。萩原朔太郎に決定したのは、本日の朝7時ごろです。
う~っ、これから、彼の作品読みます~。(涙)
 
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うんうん、、匂ってきた、臭ってきましたね~・・・波乱の物語の予感!

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comment

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こんばんわ

こんばんわ。
夜も寒いです。

高崎の洋食屋に早速役者がそろったようですね。
外国人4人組、ライスカレーなぞ食ったのでしょうか。
荻原朔太郎、ほんとに坊ちゃんのようですね。
高崎では当時はずいぶん鼻つまみ者だったようですね。
今では郷土の誇る詩人ですが。
勝てば官軍ですね(*^_^*)
シナモン嬢はやはり高崎の洋食屋にはよっとでしょうね。

狼皮のスイーツマンさん、あいさつ簿にありがとうございました。
シヅブロちょっと見せていただきました。
なかなか上品で静かな感じですね。
大原さんの文とかじんときました。
また見せてもらい、コメントも書かせていただこうと思います。
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