伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 黒竜江5/14 恋太郎白書95
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

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黒竜江5/14 恋太郎白書95

昔、恋をしてはふられてばかりいる若者がおり、人は指を差して恋太郎と呼んだ。花や紅葉が、はらはら、と漂う、そんな若者であった。



ミス・ダークに誘われて官舎から一キロ南を歩くと西湖に向かう。近道である団地敷地を抜ける。コンクリートでできた三階建てのビル群で、一角には塀を巡らせた小さな公園がある。すると、多数の男女がむつみあう姿をみつけた。

「恋太郎、見ちゃだめ」

ミス・ダークが恋太郎の袖を引っ張る。

教授の官舎をみてもわかるように、都市部の住宅事情は極めて悪く、男女は、このような場所で逢瀬をするのだ。さらに二人は歩く。

湖に至る街路沿いには、転々と、電球で照らされた食べ物屋あり、外に出されたテーブルには、うどんのような麺類が置かれてある。

その一つにアールデコになり損ねたような青やらピンクやらのネオンで飾った喫茶店があり、カウンターに座ってアイスコーヒーを頼む。透明な青いプラスチック・カップ。珈琲はシリンダーで落したものではなく、ただ粉末珈琲を水で溶いてあり、氷が入っているだけましという代物だ。当時、普通の喫茶店では、氷が入っていないところもけっこうあった。

ミス・ダークが席を寄せてささやいた。

「恋太郎、しようか?」

「なにを?」

「エッチな想像したでしょ?」

「じゃあ、なにを?」

「馬鹿ねえ、あれよ」

恋太郎はどぎまぎした顔になったのを楽しんだミス・ダークは恋太郎の長い指をまた弄びだした。

「えいえい、泣いちゃえ、恋太郎」

思わず吹き出す。

こういう茶目っ気は彼女独特のものだった。やがて訪れるミスダークとの別れにも深い傷を追うことになるのだが、麻胡先生が傍にいない時期、雫を失った空虚感を彼女は埋めてくれた。そのことについて恋太郎は今も感謝しているのだ。

二人はまた歩きだし、やがて湖にたどり着いた。波の音がするばかりで何もない。さらに外灯に照らされた、人もまばらな、湖上を狭長に貫く土橋のような順路を歩く。湿り気をおびた涼しい風は柔らかい。

ミス・ダークが手をつなぎ肩を寄せてくる。悪い気はしない。

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genre : 小説・文学

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