伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 馬鹿野郎と叫んで海辺を走ること2/3 恋太郎白書67
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

馬鹿野郎と叫んで海辺を走ること2/3 恋太郎白書67

むかし恋をしてはふられてばかりいる若者がおり、人は若者を指差して恋太郎《れんたろう》とよんだ。花や紅葉が、はらはら、と宙に漂うかのような若者だった。 



夜が明けるまでには、まだ、たっぷりと時間がある。何を急ぐというのだろう、夏夜は早歩きで国道六号線のアスファルトを歩く。

茨城北部から磐城地方にかけて太平洋に注ぐ川のいくつかは、潮流の影響によって、海岸線にほぼ並行し横に走っている。そこに近いところだと思う。磯原というところだったか、少し海が荒れると、高波がテトラポットにぶつかって、飛沫《しぶき》をあるところだ。

波飛沫が二人の頭上から降り注がれ、二人して悲鳴をあげた。

「ああ、濡れちゃったね」

二人はまた歩いた。道路を走る車はトラックばかりで数も少ない。平野部に侵入してだんだん海へ迫り出してくる西の山沿いを、恐ろしく長く車両を連ねた貨物列車が走る。貨物列車が通り過ぎると潮騒ばかりがきこえ、闇となった沖合には、大型船と思われる船の灯かりがみえた。

潮に濡れた服はいっこうに乾かない。

「身体が冷えてきちゃったよ。ちょっと、温めさせてね」

夏夜は、急に立ち止まり、振り向きざまに恋太郎にしがみついた。恋太郎の心臓が高鳴りだした。

「どくん、どくん。人の脈拍は一分間に六十回。これを何倍かしてゆくと一日の時間になったり、一年の日数に近い数になるんだよね。
 月の満ち欠けは十五夜。六十を割った数。面白いと思わない、恋太郎君? 男と女の出会いというのも、偶然のようで必然だったりもするのかなあ?」

そういって夏夜は笑った。

(つづく)



ただいま恋太郎シリーズは、原稿用紙三百枚相当、五百頁をめざして不足エピソードを加筆中です。
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