伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 クリスマス・クーデター (シャベル14)
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

クリスマス・クーデター (シャベル14)

病院に着いたのは三時半ごろだ。個室となった病室ベッドに座って、社長は遺跡原稿をパソコンに打っていた。私が入室すると、社長夫人が私にもたせた工程資料を目に通した。

「何もおかしくない。祝日・土日に出勤すれば、工期が早まって、目標期日に近くなるだけのことで万々歳だ」

社長は、紅茶を紙コップに注ぎ、それをよこすと、トンボのエピソードから始まる長い昔物語をしだした。時計が四時を回ったころ、私は提案してみた。

私は、「偽井戸」の件、「自然流路」のサブトレンチの件をだした。また、カメラの青年に対する態度、システム主任た退職を考えている件なども持ち出した。

「どう考えても、『あの人』は意図的に工期を遅らせようとしている」

「例の遺跡の件ですが、取締役からお話が行きましたね。顧問が入るという話しですよね。顧問がこられるのなら、最後まで私に担当させていただけませんか。ただし『あの人』は外してください」

「なるほど、そういうことだったのかい。君が、今の業務を続行してくれるのがベストだ。『彼』の風下ではとうていやってゆけない。そこで奥さんの病気を理由に辞表を書いたってわけだね」

「実をいうと『彼』ついては、各部署から、いろいろと苦情があがっている。昔の部下が過去を知っていたので訊いてみると、試掘調査ばかりで、広域面積を扱った本調査、報告書作成をした経験がないということが判った。ドル箱遺跡を担当している今の君の価値と、二人の価値を天秤にかければ、君が続行することが望ましいということは明らかだ。彼の雇用契約は一月で消える。彼の奥さんのほうは、心の病気のようだ。自然に消えて行ってもらうようにはからうしかないと思うよ」

私の標的《ターゲット》は、あくまで、「お猿さん」で女史までは入っていなかった。社長が両方とも処分するといっているのには、社長夫妻自体が、この二人を疎ましい存在として認識しだしたということであろう。

五時半頃、病室に社長夫人、顧問、社長令嬢が現れ、事後策を協議し始めた。会議が終わったとき、夜の七時を過ぎていた。



二十三日木曜日、天皇誕生日、予定通り、ミニユンボによる間層および堀の掘削を行う。

二十四日金曜日、私と青年は遺跡で通常勤務。「お猿さん」夫妻は本社欠勤。

二十五日土曜日、調査区西側地点での人力での遺構掘削をほぼ終える。作業が終了した五時ごろ、別件で、調査室班長から、「お猿さん」と女史の二人が解雇されたことが電話で告げられる。



班長は、「俺が社長と膝をつきあわせていったから、奴を首にできたんだよ。女史の件は社長夫人が電話で相談してきたんで、『病気だからしかたないでしょう』と答えたらその通りになったんだ」と勝ち誇ったようにいっていた。この男、面倒見がいいのだが、親分肌のところがあり美談をつくりたがる。少し腹が立った。

「最大の功労者は顧問だよ。しかしね、二人のクビが決まったとき、社長夫人が女史に対して、『あんな屈辱を受けたことない。会社に入れないように意地悪してやる』といっていた。私をずっと切ろうとしていたのがはっきりした。
 社長令嬢は、『システム主任が辞めた後、パソコンのできるパートを代わりに安く雇っえば経費削減になる』ともいっていた。
 女史にそそのかされていたとはいえ、いままで私に社長夫人がしてきた意地悪ってそういうことかい。会社創立以来、安月給で文句もいわずにやってきたシステム主任を切る。これまでの彼の功績を考えたらそんなこと、口に出していえるはずがないだろう。体質を改善するまで、同じような出来事が起こる温床だ。
 今回、私が会社に残ったのは、あくまでも、社長個人対する恩義からだ。家内の病気のこともある。長くは会社には残れない。また、こんなことがあったとしたら、今度は会社を助けてはやれないよ」

そういって電話を切った。

(次回最終回『後日談』)

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