伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 雪が降っていたから12  恋太郎白書49
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

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雪が降っていたから12  恋太郎白書49

【本編】 

むかし恋をしてはふられてばかりいる若者がおり、人は若者を指差して恋太郎《れんたろう》とよんだ。花や紅葉が、はらはら、と宙に漂うかのような若者だった。 



出張先の新潟営業所のランチタイムでの男子職員たちは、近くの食堂で頼んだり、コンビニで調達していたなかにあって、唯一、恋太郎だけは欠かさずに弁当を作って持ってきたものだった。

「恋太郎さんって、料理が得意なんですね」

「男の手料理です。酒のつまみの延長ですよ」

「卵焼き美味しそう」

隣の机にいる美佳がいった。先日はサーフィンを教わっている。恋太郎は、翌日、多めに作ってタッパーに詰め、美佳にお裾分けした。

「お母様に習ったんですか」

「それもありますが、卵焼きに関しては親父の技を盗みました」

美佳が意外そうな顔をする。



海で溺れた生徒を救助したことで勇作は一躍ヒーローになり、生徒はもちろんのこと同僚たちからも一目置かれるようになった。本人は周囲の目線には鈍感であり、相変わらず昼休みになると、内心いやがる友理恵に塩鮭やら筋子のおかずをわけてやっている。

ところが昨今、勇作のおかずは激増しだした。女子職員、さらには一部の女子生徒までがおかずを詰めたタッパーごと進呈するようになってきたからだ。友理恵は勇作のおかずを食べるのを手伝うことで、鮭や筋子から解放された。進呈されたおかずの一部にある卵焼きを口にして微笑む。

「美味しい。私、卵焼きが子供の頃からの大好物なんです」

鈍い勇作も、友里恵の言葉は頭に残ったようで、翌朝、厨房に立ってみる。幼い妹の一人が興味津々で勇作の料理を観察していた。朝食の準備をしようとやってきた母親は立腹した。

「男が台所に立つなんて」

「たまにしてみたくなるんだ。自炊していた学生の頃を思い出してね」

「台所は女の城なんだよ」

「けちくさいこというなよ」

卵焼きを上手に焼ければ一人前などというがそれほどのものか。要は卵に空気を混ぜないように、箸で卵をかき回すとき、底から離さなければよいだけのことだ。みりんを適量加えればジューシーとなり、ごま油で香りづけすれば中華風となる。

勇作は上機嫌で、フライパンの上の卵焼きをひっくり返した。鈍い性格と大柄な体躯からは想像もできないほどの慣れた手つきである。

さてまた昼休みとなった。鮭・筋子パターンではなく、勇作は持参した卵焼きをお裾分けした。

(料理も得意なんだ)

友理恵は素直に感心した。それから勇作は、卵焼きを焼いてもってくるようになったのである。

(生臭い鮭と筋子から解放される)

友理恵は心から喜んだ。

(つづく)


【脚注】

恋太郎《れんたろう》:勇作と友里恵の子。会社員。
麻胡《まこ》:恋太郎の妻。宇宙飛行士。
勇作:斜陽の旧家当主。教師。登山家。
友里恵:勇作の妻になる。教師。

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theme : 自作連載ファンタジー小説
genre : 小説・文学

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comment

Secret

No title

( ・∀・)つ〃∩ ヘェーヘェーヘェーヘェーヘェー

私のまわりには、卵焼き得意な男の人いないです。

くろこ姫様

卵にシロップをまぜてかくはん、電子レンジで温めるだけでも
卵焼きはできあがります。単純なのですがねえ。

男子というものは、女の人につくってもらいたい永久マザコン
なのかもしれません。(爆)
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