伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 雫編5/7 「パジャマ」 恋太郎白書35
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

雫編5/7 「パジャマ」 恋太郎白書35

【本編】
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むかし恋をしてはふられてばかりいる若者がおり、人は若者を指差して恋太郎《れんたろう》とよんだ。花や紅葉が、はらはら、と宙に漂うかのような若者だった。
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(深い海に抱かれていた記憶。僕らはそのなかで生命という存在になり、やがて、空気にさらされ「人」になる。変なものだ。太古の生命というものがそうして誕生したといわれているのだけれど、僕らも同じ軌跡をたどっている)
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恋太郎はそんなふうに考える。
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小さな繁華街を見下ろした小田急線沿いにあった絶壁の上にある梨山寮。男子学生寮というのは、若い男子ばかり八十人もがおるのだから、小さなトラブルは絶えない。
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新入生の多い旧館二階のトイレが水浸しになったことがあった。寮長が水道工事事務所に連絡して、検査してもらうと、汚水を循環させるプロペラに、女性ものの下着が複数からみつき、なぜか、スプーンまででてきたことがある。
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全寮生を集めた臨時ミーティングでは、後輩たちに慕われた恰幅のいい学生自治会が、
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「そういうものは、紙袋にでも入れて、壁のゴミ入れに捨てるように。寮長さんはいちいちなかをのぞいたりはしないから。焼却炉に捨ててくれよ。な。みなさん、頑張りましょう」
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と結んだ。
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新旧両館ある寮舎を、洗濯室と寮長室のある廊下がつないでいる。恋太郎は金曜日になると毎度、寮長に「外泊届」をだしにゆく。麻胡先生の伯父にあたる寮長は、還暦をとっくに超えた痩せて小柄な人だ。「瞬間湯沸かし器」と呼ばれ、恋太郎もよくしかられたものだったのだけれども、そんなときは、「判った」とだけいって送り出してくれたものだった。
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床に就く時間となると、雫《しずく》がおそろいのパジャマをだしてきてたので恋太郎は着替えた。毎度のことだ。ただ、出会ったばかりのころとは大きく変わったところがある。腕が痺れなくなったことだ。
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もちろん、雫は恋太郎の両太腿の間に片脚を絡ませたり、腕枕を好みはしたのだが、眠るときには自分の枕に頭をもっていって恋太郎を解放してくれるようになっていた。
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(つきあいはじめてそろそろ一年だな)
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雫が寝返りをして恋太郎の顔をみた。
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「恋太郎君、夕飯のじゃがいもの煮っ転がし、美味しかった」
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「どんどん腕をあげていくよ」
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「うん、学校の帰りに料理教室に通っている甲斐があったというわけよね」
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毎度のように、眠る前、しばし会話を楽しむ。そんな余裕がでてきた。しめとなる口づけ。かつては、乱暴に舌を突っ込んできて、力任せに吸い込んでいたものが、先のほうを、転がすように、柔らかくするようになってきた。安堵したかのように、恋太郎は、はじめて、雫のパジャマのボタンを外すことにした。
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(いいよ)
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言葉にしていないのだけれども、雫の返事をするのが判る。
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上着、ズボン。丁寧に脱がす。パンティーと下着になったところで、恋太郎も同じようにパジャマを脱ぎ、雫が手伝う。トランクスだけになると、口づけをしたり耳たぶを軽くかんだり。時間を楽しんでからブラジャーを外す。露わになった雫の乳房は、あまり豊かとはいえない。そこを手をつかわずに半身をすべらせ、また耳元に口を近づけながら、「愛してる」とささやく。二人の肌が滑るように重なり合って、乳輪のあたりで何度も交差する。膝は雫の太腿に、パンティーには触れる直前のあたりで止め、ときに滑らす。
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最後までとっておいた小さな下着一枚をはがしてゆく。雫は腰を浮かせ、恋太郎は膝まで落としたところで、両脚の間に長い指を、竪琴《ハープ》を奏でるように、淡い茂みの先端までやって、そこで止める、ということを繰り返す。
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雫は、恋太郎の鼓動を接点となる乳輪で、吐息をときどき軽く噛んでくる耳元で感じている。
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(なんて心地よいのだ)
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心からそう思う瞬間を共有したとき、互いに甘い声を漏らす。
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やがて舌先が羽毛でくすぐるように乳首を撫でたとき、受け入れることができるか確かめるように、その長い指先は、陰裂を騒がし、とめどなく、溢れさせた。
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入口を求めるものの、さ迷う男子は、女子の手に導かれ、入ることを許された。静かに静かに沈ませ、やがて、繰り返す波の動きを表現しだす。
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前後にいくど繰り返したのだろう。吐息を粗くして、途切れるということを忘れて声をあげ、重ねたところを、ぬめる玉露で溢れさせたくぼみに、愛の証を、勢い、送り込んだ。
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二人がくずれおちたとき、時計の針は日付の変更を示していた。
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「そう、雫さん。幸せだったんだね。飢えた彼女の父親代わりをして、一方的に、エナジーを与えていたようでいて、満たされたのは実は君だったのよ。君は優しいだけの『男の子』だった。いつか君も父親になる。家族を守る強い『男』になるのは、まだまだ先のことだろうけれど、雫さんがあらわれたことで、少なくともきっかけにはなったと思うよ。そういう意味で彼女は『天使』ね」
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頬から涙が枕にしたたり落ちた。パジャマ越しに二つの乳房の温もりと心臓の鼓動が伝わってくるのを感じる。恋太郎は寝台で背中を優しくその人に抱かれた。
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【脚注】
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恋太郎《れんたろう》/ 東京郊外の大学に通う学生。本編の主人公。
愛也《よしや》/ 恋太郎の幼なじみ。恋太郎の大学近くにアパートを借りている学生。
マダムと美咲《みさき》/ 喫茶店〝めらんこりい〟オーナーと女子高に通う娘。
ポモリ教授/ 恋太郎の通う大学で教鞭を執る。
麻胡《まこ》先生/ 恋太郎と愛也の高校時代の化学教師で現在は大学院生。仙女の系譜をひく。在職中、男子生徒の絶大な支持があった。華僑系帰化人の孫娘。
 雫《しずく》/恋太郎の大学同期生で、はじめての恋人。
ダンディー氏/法律事務所の花形弁護士。麻胡先生に気がある様子。映画鑑賞を趣味とする。
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《描写》必要か否か判断に迷いましたが、これから起こる出来事とにかかる重要なものと結論づけるに至り、一文を入れることにしました。「問題あり」のご意見があれば削除といたしましょう。よしな。
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