伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 伯爵令嬢シナモン3 「修道院島」終章8(残り2話)
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

伯爵令嬢シナモン3 「修道院島」終章8(残り2話)

【前回までの粗筋】
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榛名湖での死闘。意外な援軍を得たシナモンたちは、凶悪な鈴木大尉はついに捕獲された。
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【主要登場人物
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レディー・シナモン:英国伯爵令嬢・考古学者。「コンウォールの才媛」の異名がある。 ②ドロシー・ブレイヤー:伯爵家執事。米国出身の学者。 ③豆吉と菊:駆け落ちしたとされる高崎の車夫と女郎。 ④〝高崎の老人〟:女郎屋の店主隼人のこと。謎めいた士族。 鈴木大尉: 前橋憲兵分隊隊長。
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【本編】
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 庭に面した高崎警察署舎屋二階。白壁で柱や梁はクリーム系の緑色に塗られた内装の部屋だった。中へ通された黄金の髪を後に束ねた若い貴婦人と家宰、それに女性執事の三人は長尾警部から、「どうぞ」とうながされてソファに座った。明らかに警部は困惑しているのが判る。
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 「お呼びしたのはほかでもない。内務省のほうから突然、上層部《うえ》に通達があったとかで、『竹久夢二氏は釈放しろ。事件に関与した華族の林忠崇卿におかれては接触そのものを禁ずる』というのですよ。まったく、何があったのやらさっぱり判りません。もちろんご迷惑はかけません。内々の話しで外へは漏らしませんよ。どうにも釈然としなくて、シナモン様にご足労願ったわけです」
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 その人は長いまつげを瞬きもさせずに警部のほうをみた。長尾警部の心臓が急に高鳴った。警部の心境にはかまわず、シナモンは言葉を紡ぎだした。
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 「明治維新に連なる内戦〝戊辰戦争〟 ──脱藩という形をとって、藩士の大半を引き連れこの内戦に参加した請西藩主林忠崇卿は、戦後、明治政府によって、華族籍ではなく士族籍に降格させらされました。薄遇された忠崇卿に収入のつてはなく、自らの陣屋跡地戻って、そこを畑にして耕していました。
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 やがて幕臣あがりの東京府知事がこれを知って哀れに思い下級官吏に登用。ところがこの知事はまもなく転属となり、代わってかつて白兵戦を行った官軍側の部隊隊長だった人物が後任となると、つらく当たってくるので官を辞して北海道小樽へ渡ります。当時、小樽には豪商がいて、番頭を募集していたので、忠崇卿は素性を隠して試験を受け番頭になりました。その間に、夫人とのいさかいがあり離婚となり、失意のうちに再び荒れた故郷に帰還します。
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 事情を知る関係者有志は忠崇卿の名誉回復に奔走しました。そのなかに利根川での河川交易事業を軌道にのせた隼人翁もいました。一口に名誉回復とはいっても楽なことではなく、政府有力者や関係機関に大量の資金をばらまく必要があったのです」
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 長尾警部が、「──なるほど、それで〝高崎の老人〟隼人翁がヨットの操舵ができるというわけだ」といい相づちをうった。シナモンは話しを続けた。
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「──そのころ、日本中に急ピッチで鉄道が敷設されていきます。……ために河川交易事業は斜陽化したため、隼人翁は資産を整理して一旗あげるべく中国大陸に渡り、土地の秘密結社〝青幇〟《チンパン》と接触。阿片交易に関わっていきます。そうして巨万の富を得て林忠崇卿の名誉回復の資金提供と、薄遇されていた元遊撃隊士への支援を行っていたわけです。──もちろん、この時点では忠崇卿も知らないことでした」
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「紀州藩や尾張藩といった大きな親藩でさえも旧幕府を見限って明治政府に寝返る中、旧将軍家存続の〝大義〟貫く抗争を行い。関東から奥州に渡って唯一〝戊辰戦争〟に参加した忠崇卿が、麻薬交易で得られた資金が自らの復権のためにつかわれたと知って放置するわけがないでしょうからな。しかしながら旧部下の生活の面倒を隼人翁がしていたことも知ったので無下には扱わず、『麻薬密売を辞めるように』と注意しました」
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「──それで引退して麻薬交易網の跡目を大和屋太に譲ったわけですな。しかし女郎屋の店主なんかしなくとも良かったでしょうが……」
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「女郎屋の店主をしていた理由は、群馬県にいた黒岩梅と菊を実質的保護する理由からでした。大和屋は〝青幇〟との関わりの中で、〝反物質〟鉱床の存在を知ったのです。大和屋は二人の娘のうち物心のつかない妹の太股に、地図を入れ墨にしたというわけです」
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【後記】
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 ──私の苦手な春めいた空気。ええい、どきなさい、チョウチョ。ゃあああああ。
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 雪男の〝○ス〟はみるみる溶けだした。

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