伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 伯爵令嬢シナモン3 「修道院島」第2章16 (終章へ)
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

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cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

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伯爵令嬢シナモン3 「修道院島」第2章16 (終章へ)

【前回までの粗筋】
 
 「修道院島聖石伝説」を解明したシナモン。シナモンとその師ベルは、ドーバーにむかった。
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【主要登場人物】
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①レディー・シナモン:英国伯爵令嬢・考古学者。「コンウォールの才媛」の異名がある。 ガートルート・ローザン・ベル:英国の女性冒険家・考古学者・政治家。 ③ドロシー・ブレイヤー:アメリカの女性考古学者。古代日本建築・ガラスの研究者。
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    ☆  ☆  ☆
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【本編】
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 窓の外は流れ行く風景だ。田園、町、川、森。座席は小部屋のようになっている。シナモンが席を外したとき、ウルフレザー家宰はベルと話しをした。
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「私も、そろそろ歳です。後任の家宰を捜していますが、なかなか適任がみつかりません」
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「家宰、まだまだお若いですよ」
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「先代と今の〝御屋形様〟《おやかたさま》の二代に渡ってお仕えしておりますが、姫様がご当主となられる頃には、私は八十になってしまいますよ」 
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 家宰が笑ったとき、急に、ベルが発作を起こしたかのように横に倒れた。ほぼ同じく、席を外していたシナモンが戻ってきた。
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「──どうなさったのですか、先生?」
.
 ベルが、小さく悲鳴をあげて目を覚ました。
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 家宰が備え付けのポットの水でハンカチを湿らせシナモンに渡すと、シナモンは家宰と同じ座席《シート》から、初老の女性考古学者ベルの横に身を移し、額の汗をぬぐってやった。
.
「心配ないわ。いつもの発作。そして、いつもみる夢よ」
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「夢?」
.
「炎の夢──そう、なにもかも焼き尽くす。人類が数千年かけて築き上げてきた文明というものを、音をたてて崩してゆく、炎の夢……私たちは一九一四年に大戦というものを経験している。それ以上の惨劇が起こる不安が──いえ、確信が……私にはあるの」
.
 ──同じ夢。私もみることがある。
.
 家宰はベルの言葉を訊いて思った。第一次世界大戦体験者には、共有の意識と無意識というものが存在するらしい──ということを。
.
 シナモンはベルの肩を抱いて、
「先生が、〝聖石〟のありかを伏せてくださるのは、そういうことなのですね」
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「そういうことよ」
.
 シナモンに肩を抱かれたままベルは震える手でハンドバックからシガレットケースを取りだして煙草をくわえた。
.
    ☆
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 台地上にある田園地帯の合間にある樹枝状に入り組んだ谷間の一つから、くぼんだところに降りてゆくと、白亜の断崖に囲まれた港湾都市にたどり着く。そこが〝ドーバー海峡〟の名前の由来するドーバー市だ。三十四キロ先の対岸には、フランス・カレー市がある。
.
 黄金の髪を後に結わえたとても若い貴婦人と、伯爵家家宰は、タクシーを拾ってベルを、赤煉瓦の倉庫が建ち並ぶ埠頭に届けた。
.
「もう大丈夫よ。いろいろとありがとう、シナモン」
.
 何度も振り返りながら、ベルは、埠頭に横付けされた連絡船のタラップを昇っていった。やがてタラップが外され、汽笛が鳴り、ゆっくりと、船は港を離れていく。
.
 ベルがドーバーとカレーを結ぶ連絡船に乗ったのは、王室顧問を務めるイラクに戻るため、パリ発のオリエント急行に乗るためだった。白く塗られた連絡船のデッキには、ベレー帽を被った年若い女性がいた。欄干にもたれていた年若い女性がベルに話しかけてきた。
.
「ガーナード・ローザン・ベル先生ですね?」
.
「そうよ。どうして判ったの? ところであなたは?」
.
「だって新聞や雑誌に写真が掲載されていて有名ですもの。私ですか。ドロシー・ブレイヤーと申します。アメリカ人です」 
.
 ──ドロシー・ブレイヤー。不思議ね。まったく違うタイプなのだけど、シナモンに似た匂いがする。
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 出会いとは不思議なものだ。ドロシー・ブレイヤーはアメリカの大学で日本語を習得していた。ベルも若かりし日、シベリア鉄道で日本へむかう途中で日本語をマスターしていた。とても珍しい光景だ。ドーバー海峡の連絡船のデッキで欧米女性が日本語で歓談しているのだ。
.
 ベルはドロシーに、シナモンという興味深い伯爵令嬢がいること、伯爵令嬢が学術的な興味から日本へ行くことになるだろうということ、そして、伯爵家家宰が年老いたため、自分の後任の執事を捜していること──などを話した。
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 執事の件で、ドロシーが興味を示したので、後日、ベルは伯爵家家宰ウルフレザー宛に紹介状を送ることになる。
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    ☆
. 
 物語の終章は舞台を、ふたたび、ドロシーとシナモンが出会った四年後の日本に移す。
 (つづく、終章は「大名戦士」)
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  ☆  ☆  ☆

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【後記】
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猫と犬が悲鳴を上げた。
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 ぎゃ──。

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No title

第一次大戦を経験したベルの避戦の思い。シナモンを守るナイトたるロレンス。そして新しい執事となるであろうドロシー・・・彼らシナモンを取り巻く人たちの相関図が「聖石」を中心に語られた第2章。大変興味深く読ませていただきました。(^-^)
例えるのは心苦しいですが、第2章は、シナモンを取り巻く状況がまさに「インディ・ジョーンズ」を彷彿とさせる感じがしました。
次からいよいよ軍艦島の締めですね。中々来れませんが、楽しみにしております!

Re: No title

クライスト教授様
 丁寧に読んで下さり、とても感激いたしております。
 インディージョーンズ。あ、意識はしてませんでしたけれど状況が似てますね。(笑)
 なにぶん、私の本職がそっち系なものでして。描きやすいのですよ。学者と言うほど偉くは ありませんが。
 お時間のあるときにまたお越し下さいませ。
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