伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 伯爵令嬢シナモン3 「修道院島」第2章8
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

伯爵令嬢シナモン3 「修道院島」第2章8

前回までの粗筋
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 日本にきて早々、殺人事件容疑者竹久夢二を救うための捜査をするレディー・ナモン。そして第二章、舞台は〝軍艦島〟の事件から四年遡った英国、シナモンの故郷コンウォール州リザード市。飛び級により大学生となった十四歳の貴婦人は、師G・L・ベルを古代ローマから中世にいたる遺跡〝修道院島〟に案内していた。雨があがった朝、庭師とその孫が遺体を発見した。
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主要登場人物
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レディー・シナモン:英国伯爵令嬢・考古学者。「コンウォールの才媛」の異名がある。②ガートルート・ローザン・ベル:英国の冒険家・考古学者・政治家。③スイーツマン・ウルフレザー:伯爵家家宰。④トーマス・エドワード・ロレンス:第1次大戦の英雄。⑤ウィストン・チャーチル:後のイギリス首相。第二次世界大戦を指揮する。
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        ☆
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 むかし、剣の突き刺さった石盤があった。石盤には誰が刻んだのか、「剣を引き抜いた者は王となろう」と書いてあったものだから、国中の猛者たちが引き抜こうとした。けれども誰も引き抜けない。そこにたまたま通りかかった若者が剣に触れた途端、あっさりと抜けてしまった。若者は魔法使いマーリンの助けを得てアーサー大王となった。
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        ☆
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 リザード川を遡上してきた小さなヨット。操舵しているのは地元の人間だが、甲板に立つ二人の男は日本人だ。
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「ここが〝修道院島〟か──」
「甘粕大尉、まだ眉唾のようですね」
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「笑わせるな、〝エクスカリバー〟だと?」
「〝エクスカリバー〟とは〝反物質〟の隠語。三千年前、地球に激突した小惑星岐山《チイシャーン》には〝反物質〟が多分に含まれていた。〝修道院島〟の〝聖石〟は、小惑星岐山よりも古い時代に地球に激突した小惑星のかけらである可能性が高いとされています──まだ仮説ですが……」
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「各国が競って研究している新型爆弾。キューリー夫妻が発見したウランでつくるほうが、手っ取り早い──と〝理研〟(※1)の技術屋どもがぼやいているという話も訊く」
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 鈴木は舌なめずりをしてから笑った。
「甘粕さん、判っちゃいませんね。〝反物質〟による爆弾は、〝原子爆弾〟の数十倍の威力があるのですよ。〝エクスカリバー〟そのものだ。手にすれば世界の王にだってなれるという代物です」
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 甘粕大尉と呼ばれたのは甘粕正彦(※2)である。甘粕は、かつて憲兵隊東京分隊長を務めており、関東大震災直後際、どさくさに乗じ、反体制の旗手であった大杉栄《おおすぎさかえ》と家族を暗殺した。甘粕は事件発覚後、数年の服役ののち、留学の名目でフランスに渡航していた。そのフランスからドーバー海峡を渡ればイギリスだ。ビザに申請した渡航理由は観光である。
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 甘粕に声をかけたのは、日本人で鈴木大尉というフランス日本大使館の駐在武官であった。前橋城址にいて、甘粕と話をしていた男だ。鈴木は〝修道院島〟を見やって、
「残念ながら、あの島は、リザード伯爵家の私有地なので、上陸には許可がいります。島にいるのは所有者の身内かな──」
 とつぶやいた。甘粕は、ふいに、目線を下流にやった。その先には別なヨットが川を遡上してきている。乗っているのは、ドイツ人とオーストリー人だ。
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   ☆
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(※1)財団法人 理化学研究所。1917年設立、戦前は十五大財閥の一つで、湯川秀樹らノーベル賞受賞者を続出させた。〝科学者の楽園〟と称される。極秘裏に原子爆弾研究も行っていた。
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(※2)甘粕正彦は〝甘粕事件〟判決で懲役刑となっている。史実では、ここに描いたエピソードの時代設定から二年後に釈放されている。

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   ☆
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 後記
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 〝草食系〟というのはこういう奴に違いない。アルパカの恋太郎はどういうわけだか女性ウケする。
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 ──猫になった『佐藤の日記』
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「中居、野菜食うぞ」
「先輩、何度もいいますけれど、俺は犬っすよ。先輩だって肉食獣じゃないっすか!」


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おはようございます

おはようございます。

反物質爆弾現実に構想はあるようですね。
聞くだけで空恐ろしくなるような。
原爆開発には本当に各国しのぎを削ったようですね。
まあ、日本やドイツが先に作らなくてよかったと思いますけれど(^_^;)
アメリカももちろん、広島や長崎で実験、無茶苦茶ですけれど。
私も最近の猫が草を食うことには驚きました。
食い物もどんなにも変わるのですね。

Re: おはようございます

反物質の存在を当時認識していたかといえばフィクションですけれど──お話しということで。SFだけの世界であった〝反物質兵器〟現実にあるとすれば厄介なことですね。原爆についてはドイツも日本も秒読み段階でしたね。あぶないあぶない。

小学生のときの同級生宅では生漬け物を食べる猫、親戚のところではかぼちゃが好きな猫、実家ではごはんを食べる猫がいました。(不健康かもしれません)


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