伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 掌編小説/シーサイドカフェ・夏1/2
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

掌編小説/シーサイドカフェ・夏1/2


 週末、流し髪に上下ジーンズ姿の高校生は、リュックにサンドイッチ、それから携帯用の画具一式を詰め込む。スケッチブックを片手にバスに乗った。途中、ローカル列車の駅にでた。
 夏。空の青が水辺を連想させた。頭の中をヨットが帆走してゆく。
 
田村恋太郎たむら・れんたろうは、谷底駅から路面電車に乗り換えて、シオサイ港にむかい、そこからさらに海岸に沿って南にいった。
 途中、適当に下りて、しばらく海岸通りを歩いた。ヨットが帆に風を受けて湖面をゆっくり走っているのが目についた。
 恋太郎はヨットを追いかけた。どこまでも追いかけてゆくと、廃棄された、旧海軍の航空基地跡地があった。格納庫は取り壊されて既になく、ススキばかりが生えていた。セメントで構築された飛行艇を着水させるスロープ、波止場なんかがあった。すでに遺跡と化していた。
 霞たつ空、エメラルド色の海。海岸は一度凹んで彎曲しながらまた岬となって沖へむかって張りだしてゆく。その途中で、小さくみえる港町を背景に、オレンジ色の帆を張った先ほどのヨットを加えて描いた。
 昼食は、ポットの紅茶とバンダナに包んだサンドイッチだ。紅茶は、ブランドではないところの外国産で、サンドイッチは玉ねぎとベーコンを挟んだものだった。
 恋太郎は、光と風と水辺にも恋をする。
     ☆
 さて、帰るときが問題だった。悪友の愛矢がいればこういうことはなかったのだろうが……。思い立ったが吉日、時刻表など観ないで電車に跳び乗る性分なので、案の定、路面電車の終電は、途中で止まってしまった。
 類は友を呼ぶもので、真夏の夜にであった人なので、仮に
夏夜なつよとでもしておこう。市電の席の隣に乗っていた、東京にある大学の寮に住んでいるという女子学生だった。
 ボブの髪型でTシャツ、ジーンズ地のハーフパンツをはいていて、背中には小さなリュックを背負っていた。夏代がそのリュックからら缶珈琲を二本だして、一本を流し髪の恋太郎にやったことから親しくなった。
 停車場のベンチに二人は座った。
 月はでているし、このまま夜明かしして、始発を待つというのもいい。だが、若さは退屈を楽しむということを許さない。男の子ではなく、むしろ乙女のほうが冒険好きといえた。
「坊や、歩こうか?」
「恋太郎です、夏夜さん」
 恋太郎が、ぶっ、と頬を膨らませてみせる。そして、
「あのおここから、谷底駅までは、二十キロくらいありますよ」
 と続けた。
「だからいいんじゃない。途中で朝になって、始発に乗れたら乗れたでラッキーだわ」
 夏夜に引きずられるように、恋太郎は駅を出て、太平洋の海岸沿いを線路に並行するシーサイド・ロードを徒歩で北上することになった。
 二人は線路を北にむかって歩き始めた。
 コンビニはいわんやオールナイトをやってる映画館なんてなかった。すこし離れた所に、景観を売りにした旅館があっのだが、若い二人が泊まれる額じゃないし、だいたい、ネオンがついていても、TUNAMIのあとで、ふつうに営業しているどうかも判らない。
 途中、路線沿いにある居酒屋から、客たちと若女将の掛け合い歌のようなものが聞こえてきた。
.
  はっ、みせて。
  みせない。
.
 陽気だが延々と繰り返され、なにやら悲しい感じがしてきた。






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theme : 自作小説(ファンタジー)
genre : 小説・文学

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comment

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No title

タマネギとベーコン、好物なんですよね。

特にスープが。

jizou様

万能野菜といわれる玉葱も
卵の相性は好き好きあるようですが
肉との相性は文句なしにバツグン
とくに燻製はいいですよね
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