伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 恋太郎白書 第10話「白いチューリップ」
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

恋太郎白書 第10話「白いチューリップ」

 むかし恋をしてはふられてばかりいる若者がおり、人は若者を指差して恋太郎とよんだ。花や紅葉が、はらはら、と宙に漂うかのような若者だった。
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 日曜の朝、女子学生がナビとなり、有名人をゲストに招いて対談するラジオ番組があった。その日は作家の藤本義一であった。
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 ──クラスメイトに告白するときは、他の連中のいるところでやっちゃいけない。かならず二人になるような場所でやりなさい。その点、明石やさんまはうまい。とりあえずアタックしてみて、相手が断ったら、「あ、いまの冗談」ってやるから、告白のあとも友達としてつきあえるんだ。
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 朝食の珈琲が苦くなった。
 紫陽花の咲く季節のことだ。
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  ※  ※  ※
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 大学の同期に、アメリカ・オレゴン州からやってきた帰国子女の女性がいた。背が高くて、四肢が長くてモデルのよう。色白の肌なのに無理に焼いたのか赤ら顔、そばかすもあった。髪が腰まで長いので
人目をひく。極彩色のシガレット・ケースに、とても細い煙草をつめて、空き時間にふかしている。オレゴン州からやってきたのでオレゴン嬢と仮に呼ぶとしよう。
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 学校には、それぞれ、〝空気〟というものがあるらしい。ある種の本を誰かが読み出すと、すぐに感染していく。
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 このころ、『銀河英雄伝説』という小説が流行っていた。最初はSF好きの男子が読みだした。内容が映画『スターウォーズ』と漫画『ベルサイユの薔薇』をあわせたようなスペース・オペラで、男女ともに楽しめるようなつくりになっている。
 主人公は二人いる。〝自由惑星同盟〟元帥となるヤン・ウェンリー、〝銀河帝国〟の皇帝に上り詰めるラインハルトだ。
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 男子学生のひいきは曲者揃いである〝同盟〟 女子は〝帝国〟だ。〝帝国〟は主要人物が美男子で占められるため、女子も夢中になった。
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 女子が集まれば、ラインハルトの話題となった。大講堂で、
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 ──私のライハルトー!
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 講義開始前、集まりだした大講堂に集まりだした学生たちの喧騒を突き破る声。オレゴン嬢だ。
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 なにゆえに好きになったのだろうか。恋太郎は考えた。無邪気なところ。ピュアなところ。いや、考えることに意味などない。好きになった。あとは告白するかどうかの問題だ。
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 ある日、講堂に現れたオレゴン嬢に切り出した。
「好きだ。付き合ってくれない?」
 オレゴン嬢は、眼を白黒させた。
「ふつう、お茶に誘ってから、レストランとか映画にいって、それからいうものよ」
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 ──なるほど、そういうものか。
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 数日後、学友の一人に肩を叩かれた。
「オレゴン嬢を口説いたんだって? 噂になってたぞ。あの娘(こ)、おまえが口説いた内容をでかい声で喋ったんだ。まったく女郎の考えることときたら!」
 学友はわがことのように憤慨していた。 
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  ※  ※  ※
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 卒業してから、オレゴン嬢とは電話で話をすることがあった。久しぶりに喫茶店〝めらんこりい〟に顔をだしたとき、稀にその人がいることもあった。
 軽く冗談めかして口説いた最後の電話のときのオレゴン嬢の断りの口上は、
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 ──好きな人がいるのよ。彼からの口説かれるのを待ってるの。牧師さんだけどね。あははは。
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 嘘はつけない人だから本気なのだろう。一度電話を切ってから、恋太郎は電話で白いチューリップを注文し、オレゴン嬢の家に届けさせた。花言葉は〝恋の終わり〟 ……恋太郎の儀式である。

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  ※  ※  ※
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コメント

アバター
2010/03/21 13:57
 今回の恋太郎はほぼ私の分身として描いております。
 オレゴン嬢――実在の方をモデルにしており、著者が口説き、見事に振られた体験をもとに書いております。オレゴン嬢への評価は同性には厳しいご意見もありますが、オープンな言動。邪気のない大らかさ。そこが魅力だったりします。欠点は最大の魅力。悪く書いているようにみえたとしたら著者の筆足らずです。平にご容赦のほどを。(平伏)

七川冷様
ありがとうございます。励みになります。

藍姫様
著者がこの方に贈ったお花はシクラメンだったかな。当時、花言葉は調べていません。(うーむ)

らてぃあ様
恋太郎は失恋のプロですから。まあ、花言葉を知っている男性って、ふつうはいませんよね。すみれの可憐さは切なくも美しく、ひまわりの陽気さも心躍らせる――ということでひとつ。

咲様
オレゴン嬢とて女の子、「白馬の王子様」を待っているのは当然のことでしょう。たしかに花言葉は恋愛の小道具として有効かも。


でふぉると様
「『我が事の様に憤慨してくれる』友達...しかし、好きになった相手の事を悪く言われるというのは、それはそれで辛いものだ。今回の恋のお相手はちょっと幼い感じの無邪気さんですね。僕はちょっとこういう無神経なタイプの女性は...可愛けりゃOK」 はい私も同意見。この人の場合、短所「無神経」=長所「大らかさ」が魅力。

みはる様
この方、私と交流があった期間を通じて、男子の友人はいましたが、恋人はいませんでした。まともに口説いたのはもしかして私だけだったのかもしれません。国教会・プロテスタントの牧師さんは妻帯OKでしたか。カソリックだったら……。

さなな様
いえいえ、連太郎のテーマは、男性視点での「失恋」です。敗北の美学をうたっており、いかに優雅にふられるかを楽しんでいただければ幸いです。「〝男の子〟は、ふられながらタフになり、場数を重ねて〝男」〟になる」のです。はい。恋太郎は、鍛えて下さる女性陣に感謝していおります。
アバター
2010/03/21 10:30
白いチューリップを届けるなんてロマンチックですね
でも、花言葉が「恋の終わり」というのが
悲しいです
 
アバター
2010/03/21 02:16
オレゴン嬢も、彼女なりに恋患いのようなところがあったのでしょうね。
いや、そうであってほしい。

牧師さんが口説くとしたら、どんな感じなのかな?
失礼。不謹慎でした。
アバター
2010/03/20 23:45
『我が事の様に憤慨してくれる』友達...
しかし、好きになった相手の事を悪く言われると
いうのは、それはそれで辛いものだ。
今回の恋のお相手はちょっと幼い感じの無邪気さんですね。
僕はちょっとこういう無神経なタイプの女性は...可愛けりゃOK d(-_☆)
白いチューリップは既出「らてぃあ」さんと同意見。届かない想いですね。

作品の感想とは異なり、場違い発言ですが【蜂の巣】の背景って
「夕日を反射する水面」みたいで綺麗ですね。(蜂の巣のくせにw)
アバター
2010/03/20 22:30
「集まりだした大講堂に集まりだした学生たち」となっている所が…。
女学生からラインハルトと称され、恋太郎氏を見事袖にしたオレゴン嬢が好きな人から口説かれるのを待っているとは…。
白いチューリップは「恋の終わり」…と(メモメモ)
アバター
2010/03/20 22:28
花ことばを知って女性に贈るとは、、ロマンチストですね。
かえってオレゴン嬢のほうがわからないのでは、、恋太郎さんはそれでもいいんでしょうけど
アバター
2010/03/20 21:00
花言葉を知る男性は素敵ですね ^^
でも、花色で変わる花言葉を完璧に把握するのは、女性でも大変です。
オレゴン嬢には、届けられた白いチューリップの意味が分ったのでしょうか?
 
アバター
2010/03/20 11:06
連載頑張って下さい!

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  ※  ※  ※

せ、先輩、ルパンだあ~っ!

 

 

 

 

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No title

ふ~ん?
正直な子だと、思うけれど・・・
私は、あまり、魅力かんじませんでした。

どちらかというと、知的な子の方が好きかな(笑)

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このコメントは管理人のみ閲覧できます

こんばんわ

こんばんわ
だいぶ雨が降りました。

お~~今日もまたなかなかのメルヘン(*^_^*)
それにしてもさんまはうまいですね。
さすがです。
オレゴン嬢魅力あったのでしょうね。
雰囲気が出ています。
さばけているのかとぼけているのかと思ったのですがそうではなく、本気の人だったのですね。
ますます魅力ありますよね。
最後、花言葉の白いチューリップ、イキー(*^_^*)

くろこ姫様

著者の理想としましては。主人公が、偏らずに、いろいろなタイプの方に〝恋〟をして、男の子は男へと成長していくこと。オレゴン嬢も含め温かいまなざしで見守っていただければ幸いです。

Re: No title

自作ケーキ特集。何年後か先にくることを楽しみにしております。

Re: こんばんわ

KOZOU様
オレゴン嬢。この方に関する同性の評価は厳しいです。しかしながら、ある程度年齢を重ねていくと、「ものすごいチャーミングな娘(こ)だ」ということに気づきます。(どうもすみません) 口説くのに失敗はしても半生を振り返れば、実に多くの収穫を得ています。(ほんとにです)
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