伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 奄美のリアル事件簿  『エジプト考古博士のバカヤロー』
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

奄美のリアル事件簿  『エジプト考古博士のバカヤロー』


 先日、現在所属しているクリスタル社に、日本考古学界の長老が来られ、名刺をもらった。同僚なんぞは著書をもってきてサインまで貰っている者もいた。家宝になる。高名な学界の重鎮は、大方が紳士だ。ところがだ、とんでもない御仁も中にはいらっしゃる。

 忘れもしない雪の日だ。そのころ勤務していたアーク社(仮称)が毎年行っていた公開講演会に、エジプト考古学の権威といわれテレビのバラエティー番組やら宣伝にやたらとでてくる例のセンセイを招いた。プロカメラマン上がりの広報部長が、講演会の模様をビデオ撮影しようとしたところ、烈火のごとく怒った。

「おい、勝手に、映すなよ。あんただって撮られたら厭だろ?」

 意味不明。広報部長以下、一同、きょとん。

 外は雪。それでも二百人収容のホールは満席で、立ち見となり、廊下まで人で溢れていた。会社関係者は関東一円及び北陸・東北にまでいたのだが全員召集。いつもは最後列で椅子に座ることが出来るのだが、センセイの講義を訊くのと、会場整備のため、千葉県の会社に動員された。私は群馬県から往復二万円の交通費をもらって会場に駆け付けた。音響照明室の小窓から壇上のその人を見、講義を聴講していた社員たちは、華麗なるエジプト文明についての、概説なり特筆すべき最新情報なんかを期待していた。実をいうと二十人くらい講師候補がいた。私を含めた当時の若い社員たちは、センセイに票を投じたわけだ。

 ところが……。

「ええ、発掘調査になりますと、即席ラーメンが必需となります。発掘参加希望者に、歯磨きを毎日しないと気が済まないというタイプは向きませんので……」

 どうでもいいよもやま話だった。実にくだらない。こんな講義を訊くために、会社は百万からの費用をかけることになったのだ。社員も貴重な休日を潰しての聴講だった。

「まあ、考古学研究所といっても、いい加減なところは沢山ありますからね。たとえばアーク社とか……」

 なんという慇懃無礼な奴なんだ。社員の誰もが思った。

 それでも、事務の御姉様がつくり笑顔で花束を渡す。

「この花束、何万かするな。現金で欲しかった。」

 例年の講演会の後には、白い内装の会議室に移って、珈琲を飲みつつ招待講師と職員の歓談がなされるのだが、それもない。講師への謝礼額は、五十五万五千五百五十五円を請求された。五にこだわるのは、古代オリエント起源である五芳星の形からくるゲンを担いだのだろう。

 後日、私は、ある地方で大型開発があり、遺跡調査員の一人として配属された。スチュワーデスあがりの事務員さんがいて、空港でセンセイを目撃したときの印象を述べた。

「とっても素敵な紳士でしたよ。テレビに出演するときのイメージ通りです」

 事務所で訊いていたスタッフは鼻白んだ。

「あのセンセイ、内面と外面をつかいわけている」

「湿潤な国内の発掘に比べ、砂漠地帯の発掘は砂をどけるだけだから、アホでもできるし、ウンチクは他の専門家をお友だちにすれば自然と憶えられる。それに、あのセンセイ、古代エジプト文字も読めないらしいぜ」

「刑法には触れないんだろうけど、詐欺師だな」

 日本考古学協会とかで、破産したアーク社のOBが集まると、この講義のことが話題にあがることがある。いまだにブーイングの嵐だ。

 ああ、センセイ、この記事をなんかの拍子でご覧になられて、名誉棄損の訴訟とかされてもいいですよ。証言者は沢山いますしね。他の自治体主催の講演会でも同じことやったでしょ? スピーチ資料を作れなかったのなら、デキル弟子に、つくってもらえば済むことだったんだ。

 END
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theme : ミステリ
genre : 小説・文学

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それぞれの人に肖像権がありますから、注意するのは解りま

すが、怒るというのは、ご自分が学者じゃなく、タレントだと思

っているからでしょね。吉村さん、この人には深みを感じること

がないので、テレビでも見ません。
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