伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 猫 『燕返し』
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

猫 『燕返し』

 燕の体長は二十センチそこらだ。通常飛行では、太陽や北斗星から位置を割り出し、方角を決め、時速約五十キロで一日あたり三百キロを飛ぶ。飛行中に餌となる虫を捕獲し、眠ることだってできてしまう。氷河期以来の習性で、やたら遠くまで旅をする。長いのになると、北海道からオーストラリア北部まで往復するらしい。群れては飛ばず、単独飛行を好む。もし旅の途中で、猛禽類に出くわしたとしたら、時速二百キロで振り切る。旅にリスクはつきもので通常は二年弱の生涯を閉じるところだが、うまく生き延びれば十歳以上となり、地球‐月間を数往復分の距離を飛ぶことになる。

 巣は崖につくる奴、人家の軒下につくる奴といろいろだ。卵から孵化したばかりのヒナが落ちて、カラスやら蛇、あるいは猫に捕食されてしまうこともある。それも運命だ。

 だが天敵が直接ヒナを狙うと、親が飛んできて、口ばしで鋭くつつかれ、手ひどい反撃を食らうこともあるらしい。

     ☆

 初夏、民家軒下にある燕の巣の下を通る。直立した壁は三メートル近くに達する。駆け登って巣を襲うことは不可能だ。

 親が飛んできた。巣に停まるとき、一度降下してから急上昇する。

 ――瞬間を俺は逃したりはしない。速力・時速約五十キロ。そこから先は瞬発力がものをいう。ゼロ・コンマ・何秒かだろう。こちらが、跳躍すること二メートル。前脚でボールをつかむように、挟み込む。

 捕獲……したかに思われた。だが奴は老練だ。途中で気が付き、猛スピードで拡げた両手をすり抜け、旋回し、飛んで行った。俺は壁をキックして着地する。空振りだった。燕は、はるか向こうの電線に停まって、こちらの様子をうかがっている。俺もまだ青二才ということか。いつか仕留めてやる。

 俺かい? 猫だよ。

     END
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theme : ミステリ
genre : 小説・文学

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