伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 暮れの悪夢 『悪霊封じ』
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

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暮れの悪夢 『悪霊封じ』

   

 年末、出張先から本社に戻った。何をするというわけでもない。忘年会に顔をだすためだ。映画『男はつらいよ』主演で寅さん役の俳優・故渥美清に少し似た典型的・モンゴロイド面をした年長の同僚が先にきていた。昨年の酒席で、「奄美君はプライドが高い」などと、うだうだ喧嘩を売ってきた。彼のいうプライドが高いというのは、莫迦野郎という言葉と同義だ。プライドを持たずに仕事をするから、貴兄の現場は毎度のこと汚く終わるのだよといいたいところであったのだが、その場では我慢していた。腹立ちは収まらない。
 大掃除となった。事務所内は、パートさんたちがいつも綺麗にしているので、特にすることもない。あえて掃除するとかえって散らかしそうなので、多数は自分の仕事をしていて呼ばれたときだけ手伝った。いつもは経理が神棚に供え物をしているのだが、渥美清もどきが、「神棚の配置がおかしい」といいだした。
「まず神棚を備える方向からしておかしい。神棚は北におくものだ」磁石を応接テーブルに置き北を確かめた。それで、神棚を北に移す。すると、一同は気が付いた。

 ――あれっ、うちの会社の玄関って、鬼門じゃん。

 そう、わが社の玄関は北東に入口があるのだ。
「あとで観葉植物でも飾って良いふうにしないとね」社長夫人がいった。
 神棚を西壁から北壁に移設し終えた渥美清もどきがまた口を開いた。
「お供え物の置き方もおかしい」
 彼は脚立のてっぺんに上り、しめ縄を左頭にして、胴から垂らす、三つに切り込みを入れて折った紙垂(しで)を左上がりになるようにして、縄目の間に四枚さし込んだ。供え物は、お神酒・塩・米・水・お神酒の順にした。
 そこで祁門(キーマン)青年が登場する。彼は学生とき、歴史的な伝世品の修復保存関係の学科に在籍して、修士号をとっている。実家が旧家で、祭りになると若衆として、おはやしで笛を吹く。神棚の配置も詳しい。
「先輩のお宅にいったら、神棚のむきが全部逆になっていました。昔なんかあって、ご先祖様が、むきを逆にしたんだと思いますよ」
「あっ、そういえば爺様に訊いたことがある。俺から数えて五代前の爺さんが、なんぼ嫁を貰っても若死にするんで、拝み屋を呼んで祈祷してもらったんだ。そのときに神棚の配置を他の家とは逆むきにしたんだって……」
 渥美清もどきのお宅は三十代続く旧家である。以前、祁門青年が、彼の家に招かれ、神棚下の仏壇をみたとき、さらに下の畳に女性が座っていたということを話していたいたのを思いだした。祁門青年には霊視能力があるのだ。
 私は、脚立のてっぺんにいる渥美清もどきを尻目に、祁門青年に訊いた。
「なるほど、その女性の祟り封じというわけだ。で、その子、和服? 洋服? あと三代だね」

 ――八代の祟り。

 祁門青年は身長が百八十センチを超えている。偉丈夫の割には神経が細やかだ。彼は、「知りません、知りません。洋服だったら、具体的に名前まで判っちゃいますよ」といって口を濁した。唇が、ぶるぶる、震えている。
 案外、皆、迷信深い。事務所にいた人々は絶句した。旧家である渥美清もどきはなおさらだった。小刻みに手を震わせて、お供えの皿を棚から落とした。灸が効き過ぎた。私は、彼がしている作業の邪魔をするのをやめ、一足先に忘年会会場にむかった。かくしてささやかなる復讐は達成された。

 了
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