伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 第3章03/猫探偵アンジー 『風間淳のこと』
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

第3章03/猫探偵アンジー 『風間淳のこと』


 (ほう、戦いを挑むというのだな。いいだろう。侵略は許さない。戦いというのは脅しだ。もちろん、仕掛けられた場合のシュミレートは万全にしてあるがね)

 彼はゆっくり、直線を歩く。それだけでいい。敵は黒猫だ。耳を萎縮させ、通りのほうにに逃げ込んだ。

 アンジーの城は、ベランダが張り出したオレンジ屋根の屋敷。波打った白い塀の向こう側にはブナの森が広がっている。獲物がどっさりとれる狩猟場。わが王国だ。巡視を終え、いつものように藤椅子に座る「姫君」の膝に乗ると背中を撫でてくれる。ラジオから彼女お気に入りの音楽が流れてきた。流行りボーカルで高音をだす若い男だ。甘い声という奴だ。歌が流れるときは、ぎゅっと抱きしめられ、頭に熱い涙の粒も落ちてくる。彼女の音楽趣味をとやかくいうつもりはないのだが……。

    ☆

  君を愛してる。ああ。
  君を愛してる。ああ。
  だからいかないで、
  もしも捨てられたりしたら、
  死んじゃうかもしれなぃいい。
  君を愛してるぅう♫

    ☆

 ガラス製円卓上のデザート皿には冷蔵庫からだされたチョコレートボールが五つ盛ってある。

(溶けかかっているようだ。早く食べるといい)

 向い側の席に座っているのは、耳が尖ったロングヘアーの婦人警官である。ノートパソコンを開いて、興味深そうにアンジーを眺めていた。

「そういえば、葵さん。風間淳って人、どういう人だったの?」

 豹柄の毛並をした耳の大きな猫は、ショートヘアでジーンズとTシャツ姿をした渡辺葵に抱かれ、ノートパソコンを打ち込む樋口水穂を眺めていた。

 葵が答える前に、アンジーは、するりと、その人の腕から滑り落ちるような感じで、ベランダの床に着地し、そこで振り返って一鳴きした。

「なんだかついて来いっていっているみたいだわ」

 二人は、ゆっくりと歩く尻尾を立てた猫の後についていった。ローズアーチをいくつも連ねた薔薇園を抜けてゆくと、やがて南側の塀に至る。非常口があって、そこからでたところがブナ林だ。しばらくいって、視界が開けたところで、二十メートル四方を五十センチばかり掘り窪めた空間があった。遺跡だ。東日本では、どこにでもあるような古墳時代の集落遺跡である。方形をした竪穴住居跡を掘りかけており、学生たちは、掘ったり、カメラ撮影や平板測量で記録していた。

「へえ、遺跡調査をしているんだ」水穂がいった。

 猫は感慨深げに、遺跡の縁に座り、作業状況を眺めていた。作業に従事していたのは、老教授に率いられた学生たちだった。

「あ、猫先生!」葵と同じ年頃の女子学生が、素っ頓狂な声をあげた。

 水穂がその娘に声をかけた。

「猫先生? アンジー君のこと?」

「いつも来るんですよ。私たちの作業をじっとみていて、またどこかにいっちゃうんですけどね。餌をやろうとしても食べないし。不思議な猫ちゃんです」

 葵がいった。

「淳さんは、大学の助教をしていた」

「助教? 助教授?」

「いえ、昔風にいえば、助手ですよ」

 猫はじっと学生たちの作業をみやっている。その横に葵が立った。

 (つづく)

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genre : 小説・文学

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