伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 G・L・ベル「女性版アラビアのロレンス」
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

G・L・ベル「女性版アラビアのロレンス」

G・L・ベル画像 

(晩年のG・L・ベル)

ノート2010/02/07  

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 G・L・ベル著『シリア縦断紀行』(平凡社1994年、全2巻)を読みました。
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 ガトルート・ローザン・ベル(1868~1926年)。聞き慣れない人物。この方は第一世界大戦の前後に活躍した英国女性です。考古学者、探検家。はてはイラク初代国王ファイサルの側近となって辣腕をふるい、バグダッドで生涯を閉じます。
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 イラクでのあだなは、「女官長」、「無冠の女王」。後世の辞書(ラルース百科事典)をして、「女性版T・E・ロレンス」ともいわしめています。ロレンスとの違いは戦闘経験がないことくらい。
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 ベルは、北イングランドのダラム州に生家があります。祖父と父親は、勲爵士(サー)の称号をもつ産業資本家でした。幼少期に実母を亡くし、伯爵夫人の称号を持つ女流作家レディー・フローレンス・ベルに育てられ学問に目覚めます。
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 ミッションスクールからオクスフォード大学に進み歴史学を修得。そう、映画にもなった『アラビアのロレンス』もオクスフォード大学で歴史学を修得していますから、ベルは先輩にあたりますね。ロレンスの著書『知恵の七柱』にも、彼女の名前が記されています。
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 ベルは、ロレンスよりも二十歳年長。大学在籍中まで、両親のいいつけをよく守る、いい子を振る舞っていた令嬢は、大学卒業後、一変して探検家となり、中東シリアの各遺跡を、砂漠の民とともにラクダで巡って詳細なノートをつづっていくのです。この変貌には、「あのおとなしいベルが……」と家族も驚いたといいます。
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 ここに紹介します著書『シリア縦断紀行』は、ベル、最後の探検。1914年、第一次世界大戦勃発直前が冒険の始まりです。
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 ダマスクスで、駱駝十七頭を購入、現地ガイドを雇って出発、豪族ラシード家本拠地ハイールで軟禁状態に置かれたのち、バクダットに転進し、ダマスクスへ戻る四ヶ月半の大旅行でした。
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 第一次世界大戦でアラビアのロレンスも参謀となったイラク王国初代国王ファイサル。戦後、国王の擁立に重要な役割を演じ、国王から絶大な信頼を受けますj。ベルは、得意の語学力と、外交術を駆使して、国境線の線引きを主導しました。
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 イラクという新国家を樹立させ、新国王ファイサルに忠誠を示し、「私はイラク人」と断言。亡くなるとバクダード郊外英人墓地に葬られます。ベルに恩義のあるファイサル国王は、バクダードの考古博物館の主翼を「ガートルード・ベル・ルーム」と命名しました。また当時の英国国王ジョージ五世も、ベルの両親に丁寧な弔辞を送っています。
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 著書『シリア縦断紀行』の随所を飾る遺跡と遺物の美麗なモノクローム写真。詳細な当時の様相を散文風に格調高くつづった記事です。
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 現在、ベルが探訪したサファーの荒れ野の西方には、ハイウエイが建設され、著書に記載された遺跡や村のいくつかは、開発と風化で消滅しているとのことで、この人の記録は当地の研究をする上で、とても貴重な資料となっています。
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 女性探検家は、アラビア語にも堪能で、著書の随所で、アラビアの詩人たちの詩を紹介していきます。美麗な散文調の著書に引用された詩の数々は、イスラム戦士が陣地の宴席で詠んだ〝カブレット〟と呼ばれる詩です。凛として優美な作風は、日本でつくられたあらゆる詩を凌駕し魅了させられました。
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 ベルは二回、世界周遊の中継地点として、日本を訪れています。日英同盟締結後の1898年と1903年です。
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 第二回世界周遊では、弟を伴って、エドワード七世のインド皇帝戴冠式をデリーで観覧。中国を周遊し、その汽車の中で日本語を勉強しました。門司に上陸し、陸路を鉄道で、宮島に着いたときには、「重たい鞄を駅に置きたい」といえるようになっていたとのことです。驚異的な語学修得能力の持ち主ですね。
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 この人は、ラテン語、独・仏・伊語、アラビア・トルコ・ペルシャ語までも修得していたといいます。実在した超弩級の才媛です。
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 五十八歳で亡くなった死因は、ヘビースモーカーであったこと、睡眠薬の常用過多でした。
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 G・L・ベルは、現在執筆中の自作小説『シナモン』シリーズでいずれ登場させる予定です。

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コメント

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2010/02/07 23:49
咲様

 実をいうとベルの存在。最近まで知りませんでした。あまりにもシナモンに似てますよね。いやあ、偶然とはいえ驚きです。
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2010/02/07 23:47
らてぃあ様

 男達が戦場にかりだされると、家庭に閉じこめられていた女性たちが、男達の仕事を代行するようになります。第1次世界大戦がそうでした。ベルが探検にでかけるのはそんな時代の直前です。予兆というべきでしょうね。
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2010/02/07 23:44
藍姫 様

 ほんとうに格好いいですよね。
 数年前に遡る物語に登場させたいと考えています。14~15歳篇というところですか。
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2010/02/07 23:31
武器を取らずとも、勇ましく凛々しい女性というのはいるものなのですね。堪能な語学の才や行動力が、どことなくシナモン姫を彷彿とさせます。
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2010/02/07 22:45
女性の生きる場所が家庭内とされた時代にカッコイイ人がいたもんですね。勉強になります。
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2010/02/07 22:36
格好いい女性は、ここにもいたのですね ^^
彼女がシナモン姫と どう係わるのか 楽しみです。

シナモン姫と……ついでに佐藤&中居コンビの活躍を期待しています ^
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2010/02/07 18:31
きらりん様

京都大学ですか。
近くていいですねえ。

考古学界の巨人浜田耕作が学長をなさり、
シナモンシリーズの登場人物にした、
ドロシー・ブレイヤーのオリジナル人物が、
浜田博士に師事して在籍していました。

やるわい、京都大学。
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2010/02/07 18:28
BENクー様

 お役だちとのことありがとうございます。
 日本で知名度はないけれど魅力的な人物ですね。

 いつもありがとうございます。 
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2010/02/07 18:26
浅丘様

 時間が、巡回で手一杯だから無理かも。
 ただ本日は暇。 
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2010/02/07 17:52
ほほぅ、『シリア縦断紀行』、機会があれば読んでみたいと思います。ありがとうございます。

南米と南極を除く全大陸を22歳から70歳まで旅し、多くの旅行記を残している
英国人女性、イザベラ・バードという方の話を先日テレビで見ました。
来週から、バードの当時の旅のスケッチと、現在の様子の写真を並べて展示という
イベントが京大博物館で開催されるので、見に行くつもりです。 
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2010/02/07 13:12
ふふ、意外にその格好だと国王役が勤まりそうw
おとうさま、助けてくださらない?(笑) 
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2010/02/07 12:00
おはようございます。ステプをポチっとな♪^-^

おお、スイーツマンさんからまた一つ知識を得させてもらいました!
「シリア縦断紀行」ですね・・・見てみます!^-^ 
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2010/02/07 11:46
影武酒 様

ありがとうございます。励みになります。 
アバター
2010/02/07 10:23
頑張って 下さい 

   ※  ※  ※

せ、先輩、ルパンだあ~っ!

 

 

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こんばんわ。

こんばんわ
今日も寒く今雨が降っています。

この人は知っていました。
アラビアのロレンスと言い彼女といいやはりイギリス魂もすごいですね。
まして令嬢がこれほどの冒険、すごいと思います。
語学の天才でもあり、大変魅力ありますね。
来日したことあるとは知りませんでした。
結構興味をもったでしょうね。
最後は自殺説もあるようでやはり相当苦労はあったのでしょうね。

スイーツマンさんいつも読んでいただき大変ありがとうございます。

Re: こんばんわ。

KOZOU 様

さすが、ご存じでしたか。
私は図書館にいったおり、ロレンス関係の本と一緒に並べられていましたのでみつけました。
日本で知られていないのが不思議な人ですね。ほんとに魅力的です。

おはようございます

おはようございます。
今日は少し暖かいですかね。

今日もお互い元気にですね。

Re: おはようございます

いつもあたたかいお言葉ありがとうございます
返事が遅れましたが、今日も素敵な一日でありますように
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1930年前後の歴史推理小説 シナモンと素敵な旅をどうぞ

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