伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 第4回/遺跡調査班黒騎兵 『Maharaja』
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

第4回/遺跡調査班黒騎兵 『Maharaja』

 東京地下鉄日比谷線六本木駅で下車し、地下道から出ると外苑東通りとなる。『マハラジャ』は六本木プラザビルにある。入り口に黒タキシードの店員が立っている。服装検査「ドレスコード」を受け、中に入ると、マイケル・フォーチュナティの『GIVE ME UP』が流れている。大理石と特異な照明で飾り立てた店内。大きなお立ち台があり、ボディコン姿の若い女たちが踊っていた。
 上京した土岐弥生も黙っていれば都会の若者にみえなくもない。学校の級友たちが誘ってくれきたのだがどうにも馴染めない。踊らずに、ひたすら出される料理を食べていた。トーストに蜂蜜を塗った「ハニートースト」を片手にととる。
 『マラハラジャ』にはVIPルームというガラス張りの部屋がある。そこに目をやると、彫りの深い顔をした若者が陣取っていた。エキゾチックな黄金刺繍を施した黒シャツで 、ルイ•ヴィトンのサングラスをしている。席には若い男女が取り巻いていて、中心にはその人がいた。色白で髪が長い。切れ長の目をしている。
.
――えっ、あの人に似てる?
.
 『風営法』が施行されている。午前0時を回ると、名残を楽しむ連中は、系列レストランに移る。終電が気になる二人はここで仲間たちと分かれることにした。ナンパこそできはしなかったが時代の空気というものを満喫することはできた。
店を出たビルの外には、ベンツだのランボルギーニが縦列駐車している。
「あれは? ゲッターズっていってね、ぼんぼん学生がいい車に乗って女の子をナンパするの。ついっていっちゃ駄目よ」
 遊び馴れた級友の一人がいった。蒸せた都会の夜だ。林立するビルの街あかりが月をどこかに隠していた。目を引いたのは御曹司どもの高級車ではない。
 山手線内回りホームから、六本木プラザビルにでたあたりはビルの谷間となっていて、少し歩いて赤や青のネオンがけたたましい通りには、黒いイタリア車が停った。
「彼女、乗らない? 軽くお茶でもいかが?」
「えっ、あの、いいですう……」
 級友たちは退散した。弥生は固まってしまい逃げ遅れた。車種はアルファロメオ・アルフェッタ。ドライバーは、サングラスをつけた軟派な感じのする若い男で、女子学生の腕をつかみ、中にひきずりこもうとした。
 刹那――。
 サイドカー仕様のBMW-R75。横から飛び出してきた。第二次大戦でドイツ軍が使っていたのと同じモデルだ。ライダーが降りてきた。ヘルメッドを外すと、長い髪がふわりと拡がる。
「わおっ、女だ。しかも上玉。二人まとめて犯っちまおうぜ。車に押し込めろ!」
 むこうは男ばかり四人。連中が女二人を取り囲んだ。するとライダーの女性は、両腕を平行に合わせて、コブラが舞うかのような踊りを始めた。
「な、なんだ。ムエンタイでも始めるっていうのか?」
「そんなところね」
「コケ脅しだろ?」
 女が微笑む。弥生が背に回った。ゲッターズたちが包囲網を狭めてきた。一斉につかみかかろうとしたとき、その人が、両手をアスファルトの路面にあて、逆立ちした格好で、長い両脚を旋回させたではないか。
.
 ――カポエラだ!
.
 堪らず、悪漢ども四人が弾き飛ばされ、ぶざまに伸びてしまった。誰かが通報したのだろう。パトカーのサイレン音がしてきた。
「面倒だわ。逃げよっと。貴女、よかったら送っていくわよ」
「あ、ありがとうございますう」
 深々礼をしてコクピットに乗った。オレンジのような香りがする。エルメス「ナイルの庭」だ。
「あのお、もしかして、黒騎麻胡先生じゃないですか?」
「あれ? 私を知っている? 昔の教え子ちゃんかなあ」
「はい、土岐弥生です」
「ああ、弥生ちゃん! 懐かしい!」
「やっぱり、麻胡先生!」
 サイドカー仕様のBMWは外苑東通りから六本木の交差点を左折して六本木通りの奥に走ってゆく。
スポンサーサイト

theme : 自作小説(ファンタジー)
genre : 小説・文学

line

comment

Secret

line
line

line
Google ペイジランク
ページランク-ナビ
line
奄美剣星
line
文鳥貴族
文鳥貴族
line
最新記事
line
「怪盗めろん」

 

line
「文鳥王トリスタン」
 
line
ブクログ
line
小説家になろう
line
amazon書籍
line
アルパカ版の恋太郎です
line
映画『副王家の人々』より
副王家の一族 
line
イアリング
 ekubo
line
チャイナドレス
chainadoress
line
ポーズ
sofa
line
魯迅記念博物館
inu
line
陽だまりの乙女
usagi
line
裸婦
うつぶせのジャスミン
line
sakasu
line
打ち上げ花火をあげられる四季の風景時計
line
PC広告Amazon
line
テーブルと椅子
椅子3   
line
sub_line
プロフィール

奄美剣星 (狼皮のスイーツマン)

Author:奄美剣星 (狼皮のスイーツマン)
1930年前後の歴史推理小説 シナモンと素敵な旅をどうぞ

line
ranking 1
 
line
ranking 2
人気ブログランキングへ
line
置手紙
おきてがみ     
line
Twitter ぼたん
Sweetsman7をフォローしましょう
line
レッドバロン
line
検索フォーム
line
QRコード
QRコード
line
所収作品について
文献・画像等引用の場合は引用元を記載。自作小説倶楽部作品著作権は各著者に帰属。それ以外の文藝作品・絵画写真画像に関する諸権利は当該ブログ管理人に帰属。無断複写転載を禁じます。
line
カジュアルのシナモン
シナモンアップ 
line
リンク
line
マラッカ要塞
marakka
line
珈琲館の割れ甕
城南
line
地図
line
草原の乙女
sougenn
line
バー
eruhurio  
line
海へ行こう
umiheyuku2
line
祖母
  umiheyuku 1
line
洗い髪
araigami
line
癒しの音楽
line
sub_line