伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 スイーツマンが、『偉大なる二次小説』に思うこと
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

スイーツマンが、『偉大なる二次小説』に思うこと

ノート2009/10/26( ニコッとタウン掲載『物語の法則10 偉大なる二次小説』 )より

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 今日明日とお仕事、またまた『伯爵令嬢シナモン』シリーズをおさぼりして、古い記事を引っ張り出してきました。なんだなんだ猫佐藤に犬中居、その、飛びかかるようなポーズは──。
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 著作権をもつ著者や出版社がその気になれば、訴訟で二次小説作家に莫大なツケをはらわすことも可能なのが二次小説。いまのところ、先方は沈黙していますけれど、いつ爆発するか判らない地雷・時限爆弾です。著作権はたしか50年で消えます。ですから、二次小説をやるなら50年以上たった作品がお奨めです。アニパロと違って、文学的な地位も高いですしね。
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 さて、先週土曜日に休日出勤をしたため私は、本日代休をとり、時間にちょっと余裕ができました。さっそく朝方、テレビをつけてみましたところ、池澤夏樹『世界文学ワンダーランド』という国際的な文学作品をあつかったNHKの番組が映りました。
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 本日紹介された作家はジーン・リース(Jean Rhys) といいます。ジーン・リースは、1890年、イギリス領ドミニカに生まれます。父親はウエールズ、母親はスコットランドというケルト族系の人で裕福な家ではありますが、イギリス本土ではアングロサクソンが主流を占めているため階層としてはけっして高くはありませんでした。
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 ジーン・リースが、16歳のとき、本国で教育を受ける機会を得ます。胸躍らせイギリスに渡航してみると、植民地育ちということでいじめにあいます。ジーン・リースの不幸はさらに続き、実家は没落、コーラスガールとして生活せざるを得なくなりました。それから、パリへ流れていき、貧乏画家たちと生活し、結婚もしますが、夫は第一次世界大戦で生死不明となってしまうのでした。.それから生活のために執筆活動に入ります。
 ジーン・リースは、学生時代に一冊の本に出会います。当時の人気恋愛小
ジェーン・エア』
という作品です。岩波文庫から廉価でているようです。 
内容は----。
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 貧しい家に生まれた英国(アングロサクソン族と考えられる)少女ジェーン・エアが、とある裕福な家に家庭教師として雇われ、苦労の末に、そこの当主と結婚するというシンデレラストーリーです。その物語中盤から、
バーサ
という当主夫人があらわれ、ジェーン・エアを苦しめます。バーサは、当主が、むかし植民地に居住していたとき結婚した女性で、色黒で精神に異常をきたしていました。
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 この物語を読んだ植民地生まれの彼女は疑問をもちます。カリブ海に浮かぶ赤道直下の国であるドミニカ、そこで日に焼けるのは当然ではないか。夫の都合で植民地から連れてこられ、友人もいない本土で精神に異常をきたしたバーサを自分の半生に重ねあわせたのです。そして1966年『サルガッソーの広い海』を発表し、映画化もされます。
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 ヒロインは奴隷制廃止ですべてを失った大農園主の家に生まれます。やがてヒロインの家族は、奴隷から解放されたものの貧しい暮らしを強いられている黒人系住民の暴動によって虐殺され、その後、本土に引き上げてから上流階級の男性と結婚します。はじめは幸せな結婚生活を送っていたのですが、ある日、夫に、「彼女には黒人の血が混ざっている」と告げ口する者がありました。理不尽な差別があまりにも多い時代のことです。ヒロインは夫からDVを受け、精神を病んでいきます。そんなヒロインを夫は、『ジェーン・エア』の登場人物であるあの、「バーサ」と呼んで侮辱し破局へといざなうのでした。
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 1960年代、ヨーロッパ各国は次々と植民地を失ったため、そこにいた住民たちが続々と本国に引き上げていきます。旧植民地系の住民は粗野な印象をもたれていたのですが、旧植民地出身者のなかに作家となる方もいて、その人たちの活躍によって、植民地には独自の文化があったことが紹介されていきました。
 マルグリット・デュラスが著した、フランス領インドシナ(現在のベトナムあたり)を舞台とする、華僑系紳士とフランス系少女との悲恋物語、『ラマン(愛人)』もそういった植民地系文学の一つといえるでしょう。映画化していますので、機会がありましたら、こちらもDVDなどでご鑑賞ください。

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 ----というわけで仇役と主役とをいれかえてみることで違う物語になる。

 平凡な恋愛小説が、アングル(視点)を変えた途端、二次小説(パロディー)なのに、原作を遙かに凌駕した超弩級(ちょうどきゅう)芸術作品に生まれ変わてしまった……とうお話でした。

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コメント

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アバター
2009/12/05 09:51
もけもけ様

コロンブスの卵

というのはこういうことなのでしょうね。
アバター
2009/12/05 09:22
おはようございま~す

しのぶさんのブログからもけもやってまいりました~

ぎゃふんというところでしょうか

もけは、独自世界で生きておりますので、
そういう取扱いがあるものだと、
いいお勉強ができました メモメモ
アバター
2009/12/05 05:46
酒井しのぶ 様

早起きですね(あるいは夜更かし?)
さっそくマイーナー記事に飛びついてくださりありがとうございます。

やられた? 世界標準の作家に挑戦----さすが、志が高い! そのくらいの意気込みは必用ですよね。
アバター
2009/12/05 05:39
なるほど……してやられました(笑)
 
アバター
2009/10/30 03:17
 ヒナ様

 毎度、マイナーな話題におつきあいくださりありがとうございます。
 そうですよね、歴史的な同一人物でも、作品が誰にスポットをあてるかで、明暗は分かれますよね。信長・秀吉・家康といった天下人はスポットライトの当て方で、陰影が変わります。巨人ですよね。
 漫画・アニメの二次作品。まあ、ファンの集いみたいなものでしょうか。学生時代に、『マクロス』のこれをやっていた同期がいました。SF作家としてデビューしましたが3巻だして消えました。膨大な資料・小説を読みこなしていました。軍事オタクで、NHKの報道の誤りを指摘して朝日新聞に記載されるほどの博識の人でした。----たくさんの登場人物がいたのに生命感にとぼしく将棋の駒みたいな感じです。きっと読者はデータを知りたいのではなく登場人物の魅力を知りたいのでしょう。考えるところです。
 
アバター
2009/10/30 02:55
 ジェーン・エアは読んだことがありませんが、主役と仇役の入れ替えというのは分かる気がします。二次創作とは違いますが、戦国時代を描くときにどの武将を主人公とするかというのも、これに近い気がしますね。『天地人』では家康がかなり腹黒い策謀家として描かれていますが、別の作品ではかなり人物像が変わってくるかと思われますし。
 作品の二次展開に関して言えば、個人的には否定的な感情が拭えないでしょうか。特に漫画やアニメといった分野では、原作の人気を拝借しただけの作品というのが多くみられた気がしましたから。原作の持ち味を生かしつつ、著者自身の独自性を備えた作品には滅多に出会えません。
 
アバター
2009/10/26 20:35
 「ジェーン・エア」をお読みになられた。作品を読むとき、悪役に憎しみを抱くのは当然でしょう。
 欧州社会というのはわれわれ日本人とは違う世界、ファンタジーワールド。歴史的状況下におけるゆがみ(矛盾)をいまさら批判することは、現地の人たちの神経を逆なでするものですが、ある程度はふまえながら、読むとまた読書にも幅がでてくるというものですよね。毎度、よんで頂きありがとうございます。
アバター
2009/10/26 12:21
著作権に関しては正直無知ですので何とも言えませんが、「ジェーン・エア」には思い入れがあります。
この作品は読んでいて、バーサに憎しみの感情を抱いたからです。でも、今一度読み返したなら、きっと同情や憐れみを感じると思います。私にとっては、見方を広く持つのにすごく良い作品かもしれません。…ステプポチ。

 


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こんばんわ

こんばんわ。
ちょっと一眠りして起きたらスイーツマンさんのメッセージが着ていました。
すみません。本当にありがとうございます。お気持ち感謝いたします。
ぼちぼちお時間のあるときに。

わたし洋物もだいぶ読んだつもりですがジーンリースさんは知りませんでした。波乱の生涯だったのですね。
「サルガッソーの広い海」おもしろそうですね。ジェーンエアは読みましたがちょっと退屈でした。バーサは印象によく残っています。それよりジーンさんのはぐんとおもしろそうですね。そんな感じの物語は好きです。映画にもなったのですね。悲劇ですね。
二次小説、偉大な作品も結構前の作品を参考にしたり、現代作家ではほんとパクリもだいぶあるようですね。うまく文句つけられないようにすればいいのでしょうけれど(^_^;)
ブロンテ姉妹やはり嵐が丘はすばらしいですね。
ジーンさんのいつか機会があれば読んでみたいと思います。

お邪魔します。

スイーツマンさん、こんばんわ。

私はお話に着いていけないで困っています。いつもコメントをいただいているのに、私のほうからは小説を少しずつ読むことしかできません。時間の制約があるので、じっくり読めないのが残念でなりません。ただ登場人物はみんな魅力的ですね。レディ・シナモンが何せ可憐で頭脳明晰で、憧れます。
仲居さんと佐藤さんんの言い合うシーンもおかしくて凄くエッセンスが効いていますね。さあ、これからどうなっていくのかとても楽しみにしています。遅読なもので、ご迷惑おかけしますが、許してください。ここはこんなことを書く場ではないと重々承知で書きました。場を汚してごめんなさい。興ざめですよね。いつもコメントくださるお礼が言いたくて・・・
もう、こういうことは小説の中のコメント欄に書きますね。
ありがとうございました。

こんにちは。

 わたくしのコメントがおかしいことになていますねぇ。(笑)
 これたしか、わたくしが書いた記事のコメントからの流れだったんですよね。
 
 してやられました――とかってまったく意味不明で、なに書いてんだこの子は!? って自分で突っ込みしてしまいました。(笑)
 

Re: お邪魔します。

佐藤・中居コンビ
なかなか好評のようです。意外と女性にも支持されました。

私の作品は、最新のをおいかけるのも一つの手だと思います。
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