伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 序章3/ファア王国志 『王臣』
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

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序章3/ファア王国志 『王臣』

 翌日も、サートンとナイカルは王立学問所《ジャミハ》からの帰りに市場に寄った。流民が増えた。露店街の辻には物乞いが哀れな声をあげていたし、道端には行き倒れの老人や子供の遺骸《むくろ》が転がっていた。王都の民は、木々をみるかのように、物乞いや遺骸を少しだけ避け、そのまま路地を行きかっていたのだった。
「しかし先輩。宰相って、なんであんなに幅を利かせているんですかねえ? 大臣の大半は一門かとりまきで占めれていますよ」
「宰相一族は貴族というより五代前の国王から分かれた王族だ。一門には傑物《けつぶつ》が多くってな。王国の繁栄の半分は宰相の一族が築いたようなものだ」
「しかし、なんでしょうね。この国の息苦しさ。停滞感ってやつっすかね」
 そんなことを話しながら、城門をくぐり終えたときに、門の上の楼閣から声がした。
「そこのお二人、学生さん。ここは見晴らしがいい。門番に話をしておきますから昇ってみませんか?」
 サーンとナイカルは顔を見合わせたが、すぐに、「おもしれえ!」と叫んで、楼門の上に駆け上がった。楼門は戦闘時には都城の運命を左右するところである。一般人が簡単に行き来できるところではない。上にいた男は門番に話を通しておくといったのだが、実際には門番は寝ていた。寝ているというより、(術のようなもので)寝かされている―という感じがした。上で待っていたのは二人と同じくらいの青年である。
「マギオンと申します」
(国師《モスタシャル》マギオン!)
 国師は首席宮廷道士《モキマ・ドーヤ》で宰相と同格である。その人が一介の王立学問所《ジャミハ》学生二人に声をかけてきたのだ。
「あの―俺たちは……」
「知ってますよ。王立学問所《ジャミハ》のサートン殿にナイカル殿ですね」
「国師閣下が、何んで、こんなところに?」
「ここからは王都エイの市場と街並みが一望できます。あなた方もみつけることができました」
 国師マギオンと呼ばれるか細いなりをした青年が笑みを浮かべた。
「眠れる大鳥がいます。洞窟の奥に棲んでいますがなかなか起きません。しかしながら一たび目覚め羽ばたけば、大風をおこし、鳴けば天地を震撼させることでしょう」
 サートンはしばらく細面色白であるその顔をみてから、注意深く、問いただした。
「国師閣下《モスタシャル》、われらをここに呼んだのは、酔狂ではありませんね? いったい、なにがお望みですか?」
「サートン殿、ナイカル殿。あなた方は大鳥をいずれ起こすことになる」
「大鳥とはもしかしてユンリイ王のことですか?」
 マギオンは問いに答えずに微笑み、代わりにいった。
「主公《わがきみ》にあなた方を推挙しておきました。宰相にも声をかけられましたね。むこうに行く前でよかった―」
 そう告げた途端。若い道士は、人の姿から、案山子《かかし》に姿を変えた。
「先輩、俺たち、国師の術にかかってずっと、案山子と話をしていたんすか?」
「そのようだな」
 サートンははにかんだ。
 翌日、サートンとナイカルは、王立学問所《ジャミハ》学長に呼び出され、卒業証書を手渡された。国師マギオンの計らいだ。王臣となった二人は宮廷に出仕するや近習に加えられた。マギオンはいった。
「私が卿らをかう理由はお判りですか? 学問所では秀才ではあったが首席ではなかった。腕っ節は強いが将才というほどのものはない。だが卿らには誠実さがある。誠実さは人を動かし、国家を動かす。人材を集めてください。卿らには人脈がある。できるはずです」 近習という肩書きの王臣。まだ高官というほどではないが、将来を期待されたエリートである。若い国師に見込まれたサートンとナイカルの職務は人材スカウトだった。あてがないわけではない。
「先輩、王立学問所の卒業生たちに声をかけてみましょう」
「俺も考えていたところだ。要職の大半は宰相一族で占められている。王臣となっても、下っ端のままか、在野の士のまま。あるいは大貴族の家臣になっている。そういう連中を主公《わがきみ》に推挙するのだ──それが俺達の仕事」
「そうっすね、やりましょうよ、先輩」
 王都エイの城門から馬車が飛び出していった。
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