伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 序章2/ファア王国志 『サートンとナイカル』
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

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序章2/ファア王国志 『サートンとナイカル』

 ファア王国の首都はエイだ。この時代、何処の都市同様に街をすっぽりと高い城壁で囲まれている。繁華街は存在せず、城門の門前に定期市の露店が並ぶ程度だった。その市場から、けたたましい少年たちと憐れみを求めるかのような老婆の声がした。
「この婆《ばばあ》が──」
「お代を……」
 人だかりができ、遠巻きにみていたが誰も助けようとはしない。
.
 ――宰相様の御曹司と取り巻きだ。悪童どもだがかかわっちゃならねえ。とんなとばっちりがくるか判ったものじゃねえぞ)
.
 貴族の子弟とみられる一団が、酒を出す露店の長椅子をひっくり返した。その中の一人が、老婆の頬を叩く。たまらず老婆は宙を飛んで地面に落ちた。 
「小僧ども、そこまでだ──」
「誰だおまえらは?」
「俺はサートン、横にいるのはナイカル。おぼえていてかまわんぞ」
 頭目格の宰相の息子が舌打ちすると、手下の悪童どもが、二人を取り囲み短剣を抜いた。
 サートンとナイカルは不敵な笑みを浮かべると、斬りかかってきた連中をつぎつぎに脚払いするか、腕に手刀をいれる。さらに、着物のすそを尻までめくって平手で連打を食らわせた。
「わ、わが父が王国宰相ガナオと知っての狼藉《ろうぜき》か!」
 サートンがせせら笑った。
「宰相閣下は紳士だ。善良な老婆の腹を蹴るような阿呆ガキをもったりするわけがない。閣下のご子息を僭称《せんしょう》するとは、この場でぶった斬られても文句はいえまい」
 ナイカルが続く。
「くそガキ。宰相府まで連れて行ってやる。閣下に事情を説明してご子息か否かお伺いするか?」
 この段階で、手下どもは頭目を見捨てて逃げ帰った。ナイカルが羽交い締めにしているので宰相の息子は逃げられない。
「や、やめろ、やめてくれ」
 ナイカルが拳骨をくらわせる。
「年長者にむかってなんたる口の利き方。敬語をつかえ」
「おやめください!」
「敬語がつかえるではないか」
「じゃあ、許してくださるのですね」
「駄目だ」
 民衆は二人をみて、「サートンとナーカイっていうんだ。王立学問所名物の二人組らしいぞ。悪童どもには、みんな泣かされていたんだ。とっちめてくれて胸がすっとしたよ」と口々にいった。だがなかには、「小気味のいい兄さんたちだが、宰相の仕返しを考えていないのだろうか? 心配だ」という声もあった。
 サートンとナイカルは宰相府にいる父親に悪童を引き渡した。
 父親は悪びれもせずに、
「学生か、若いな。貴族ではあるが権門というほどの家格ではない。わしがその気になれば、卿らをいかようにも始末できるものを──ふん。しかし、よい顔をしている。どうだ宰相府に来ぬか? 要職が望みなら、いずれ推挙する」と申し出た。要は、(配下になれ)といっているのだ。
(ガントスという男。伊達に宰相の肩書きがあるわけではない。それなりの器量というものがあるようだ)
 サートンはそう思ったが、要職推挙の返答は保留としたのだった。 
   ☆
 帰り道、二人は市場に再び立ち寄った。ナイカルは露店で小鳥のつがいをみつけて籠ごと買った。
「しかし先輩。宰相は俺たちに、『いい顔だ』といってましたよね。もしかして、『そっち』の気があったりして──」
「ナイカル。死んでいいぞ」
 拳骨が飛ぶ。
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