伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 第22回/ジーン侯国志 『対決』
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

第22回/ジーン侯国志 『対決』

 理解ある帝国大貴族は白髪の貴紳であった。彼はハーンたちを手引きしてくれたので、一行は無駄な時間と騒ぎを起こさずに宮廷の内部に入れた。彼は、童子が、「ここだ」というところまで、つきあってくれた。
「足でまといになるだろうから、離れたところでみていよう。健闘を祈っている」
「こちらこそ、貴男がいなければ、無駄な時間を過ごしていた。しかし何ゆえに初対面であるわれわれを信じて戴けたのですか?」
「『法術』というものを、少しばかりかじっている。特殊な『気《エルナ》』を卿たちから感じるころができた」
 一同は深々と頭を垂れた。白髪の貴紳はウレメド・シャールという人で皇族である。孫にはオーソンという人物がでる。オーソンは第二次ティア戦争において、客分として、ジーン侯国に拠り、ハーンの軍師を務めることになるのだ。
 宮城外郭は高い城壁で囲まれていた。内部には、後宮・政治堂といった諸施設が並んでおり、人の丈の二倍弱ある壁で仕切られていた。それらが通路をなし迷路のように走っている。ところどころ小さな待ちとなるスペース小院《こにわ》があって、そこに、大理石記念柱のようなものが立っていた。大通りにある列柱と同じ手合いのもので『封神《ウォ・ハタマ》』が地下に潜んでいるに違いない。ハーンは、すえた匂いにも似た妖しの気《エルナ》を感じた。
 昼ではあったが、どんよりとした曇り空で、一雨きそうである。童子クウが手印を組んで訊きとれぬ古代の言葉による呪文を唱えた。するとどうだろう、柱の麓に方形の入口がみえたではないか。奥闇に通じる階段があった。階段は平面方形ではあるが、一種の螺旋を描いて地下へと降りてゆく。
 目的地の奥は岩の大広間となっていた。祭壇があり、裸にされた公女アズキャラズが、生贄として寝かされていた。左手薬指にはめられた『応龍《スナーハ・ダギリナ》』の指輪はそのままになっている。右手は、ティアの女同士が厳重に封印した箱にしまわれていたはずの『聖匙』が握られていた。
 横たわった公女の奥に座って、薄笑いを浮かべていたのが、猿の頭をした『封神《ウォ・ハタマ》』がおり、奥には、複数の手を環状に広げた石像が鎮座していた。牛頭なのだが人の女の身体をしており、半裸の姿で乳房を露出している。
 猿頭の『封神《ウォ・ハタマ》』は、妻である 牛頭『封神《ウォ・ハタマ》』を復活させようとしていた。
「手の込んだことをするのだな」
(公女は餌だということに気づいていたとはさすがだな。竜御氏《ダギリナ・メリック》ハーン。汝そのものが生贄だ)
 そういった猿頭の『封神《ウォ・ハタマ》』は、童子の姿になった白蛇の眷属を睨んで言葉を続けた。(そこのア・バオア・クウ。事が済んだら寝返った罰だ。たっぷりと折檻してやる。楽しみに待つがいい)
 童子は恐れおののき御者クイントスの後ろに隠れた。
 ハーンはクイントスたちを後ろにして「動くな」と命じ、自らは佩剣の柄に手を当てて、ずい、と右足を踏みだす。
.
(つづく)
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