伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 第8回/ジーン侯国志
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

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第8回/ジーン侯国志



ふたたび旅へ

ティア都城は乾いた土地だ。本来原生林であったこの土地に人が住みつくや、森を焼いて畑にした。ために、町の人口が多くなると、周囲にあった森は遠のき、とろ残されたところが小さく島のように点在するのみだった。
 乾きだしたのは土地ばかりではなく、人もそうだった。ワプウ南岸に反って東西街道と、南北街道が交差した場所だ。そういうところに町がある。列強の係争地となることは必定だった。北の覇者ジーン侯国と、南の覇王ファア王国の抗争で多くの人が死んだ。係争地の小国が生き残るには、常に先読みして勝ち組につくことしか道はない。この国が「風見鶏」といわれるゆえんである。生きるか死ぬか。そういう中で彼らの商売人根性が培われていったのだ。
 世が少し金をもった辺境国の紳士が通りかかると、カモをみつけたとばかりに、自称商人たちが群がってくる。城門の前に設けられた定期市の並びを、ジーンの近衛士官と、田舎貴族家臣の男が歩けばたちまち人だかりができたであろう。そうならなかったのは、女道士ダナナラスがいたからだ。名医である彼女が安い報酬で何人もの人々を救っている。市井の民には絶大な信頼があった。その連れとあれば、丁重にもてなさねばならぬ。と彼らなりに思ったのだろう。にこやかに挨拶をしてくれたり、物を買えばおまけまでしてくれた。
 アズキャラズは、華奢な肩をした黄金の髪をした姫君だ。その割に四肢が長い。「事件」のあと塞ぎぎみであった公女は、婚約者となったハーンと相棒クイントス、女道士ダナナラスに励まされて少し元気になった。定期市が開かれると、四人連れだって、露店で焼かれている羊肉を頬張りに出かけるのだった。
 この町の通りをゆく娘たちがことごとく美しいように女道士も美しい。彼女が首をかしげてハーンに訊いた。隣にいるクイントスもそうだ。
「二人とも、浮かぬ顔だな」
 アズキャラズが代わりに答えた。
「私のせいです。お二人は大切な使命をお持ちだった。だのに、私のせいで、この町で足止めになってしまっている。ハーン様は戦車があるから時間を取り戻せるといってくださるのですが……」 
 女道士ダナナラスは背が高い。ハーンほどではないがクイントスを越える女としては長身の体躯である。彼女の婿になる男というのは見た目だけを重視するならハーンのようであらねばつり合いがとれたものではない。その彼女が軽く笑った。
「公女。貴女は二人の足手まといになっているとお考えのご様子。しかしご安心召されませ。すべては大神のおぼしめしです。二人が、貴女に出会い、そして私の前に現れるという物語の筋書きはすでにある。預言として、私は祖母からこの出会いを訊かされていた」
 ジーン侯国からきた男女三人は、ティアの女道士の言葉を訊いて互いに顔を見合わせた。早速、黒髪をした女道士ダナナラスが、弟子たちに、「約束の時がきた」から、といって医院を彼らに委ね、旅装束に着替えて、ハーンたちと一緒に戦車に乗った。町の人々に話せば泣いて引き止めるだろう。だから早朝の暗いうちに、都城の城門が開くと同時に出立することになった。
 ダナナラスは羅針盤だ。盗まれた「聖匙」の
霊光オーラを感じることができる。戦車は街道に沿って東にむかった。行く先には、ギルメルという中原屈指の古い侯国がある。
.
(つづく)

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