伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 第24回/アンモナイト
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

第24回/アンモナイト

 映画館のある歓楽街の真ん中を走るトロッコ列車の線路に沿ったメインストリートを西に向かうと、やがて、中学校の前にたどり着く。海猫町立弥勒沢中学校だ。街路から北に向かって踏切を渡り、正門を抜けると校庭となり、体育館、二回建ての三つの校舎が連なっている。最も北にある本館後ろの高台には水深一・二メートル、全長五十メートルのプールがあった。
 女子が泳いでいると近所の若衆がのぞきにくる。特に螢が泳ぐ時間というのは、どこで訊きつけるのやら、白昼堂々ののぞきが集まったものだ。
 当時の海猫町は、窃盗・障害事件は日常茶飯事、強姦・殺人なんかもときどきあって、お世辞にも治安がいいとはいい難い。女子中学生たちは必ず集団で下校した。部活で下校が遅くなる場合は男女一緒に帰る場合もあった。
  ☆
 エナジー革命で炭鉱は用済みになった。人のいなくなった弥勒沢の街並みは往時をしのぶものはほとんどない。病院・派出所・学校なんかが統合という名目で廃止され、映画館・ストリップ劇場・温泉といった歓楽街も消滅していた。駐在所も見事な更地になり雑草どころか松まで生えている有様だ。
 恋太郎たちは、引退した茨城巡査の消息を警察署に問い合わせ、その人と駐在所跡地で待ち合わせすることになっていた。自転車で現れたその人は、ジャケットにジーンズとスニーカーといった格好で、いかにもがさ藪に入るという格好だ。手には白い花束を携えている。恋太郎と愛矢もそこに自転車についていった。
 自転車を置き、がさ藪をかき分けながら弥勒沢の尾根の麓を歩いていくといくつかの、つる草に覆われた赤煉瓦造りの炭鉱遺構があった。機関車格納庫、火薬庫、それから坑道入り口だ。もちろんレールは撤去されている。二〇〇〇年以降は、産廃業者が工場の廃液を流し込んだりするので、ことごとくコンクリートで封鎖しているのだが、一九七〇年代あたりだと問題意識があるわけでもなく、どこの坑道も開口したまま放置されていた。
「夏場はがさ藪が酷くってね。冬しかこれんのさ。螢ちゃん、寂しかっただろう?」
 入口で茨城巡査が携えていた花を供え合掌した。
(こんなところで螢姉さんは死んだのか。いったい、どんなふうに――)
 坑道口こそコンクリートで築かれているが、少し奥にいくと岩盤が荒く剥き出しになっており、大人が少し身体をかがめて入るほどの丈だ。アーチとなった天井・側壁は苔むして、かつてトロッコのレールが敷かれていた底は膝ほどに地下水が溜まって池のようになっていた。
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theme : 自作小説(ファンタジー)
genre : 小説・文学

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