伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 読書ノート/村上春樹『1Q84』
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

読書ノート/村上春樹『1Q84』


読書ノート
村上春樹『1Q84』BOOK1前編(新潮社2012年)
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青豆という若い女性刺客と、天吾という予備校数学教師が交互に描写される。
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冒頭の描写・風変わりな個人タクシーの運転手と青豆とのやりとりは、馴染み深い首都高速道路にある意外な死角というものを描いている。ひどい渋滞の中、マニアックな音楽を流すタクシーで閉じ込められた青豆は、運転手から非常階段を使って降り、地下鉄を使ってはどうか? と提案される。そこでの、やりとりで一読者である私は魅了された。運転手とやりとりをしながら、青豆のバックグランド・容姿を描写する。美女には違いないが、左右の耳がふぞろい。乳房が小さい。青豆は乳房が小さいということをコンプレックスにしている。タクシーを降りて目的のホテルに着いた青豆は、ターゲットの男を殺害した。マーシャルアーツ上級者で、天性の刺客テクニックは『必殺仕置人』を思い起こさせるアイスピックで急所を一突きするものだ。外傷は警察官がみただけでは判らない。心臓発作ということで処理されてしまうような鮮やかなものだった。青豆は一夜限りの性交渉を望む。ショーンコネリータイプの「禿げた」男が好みだ。青豆は革命を望んでいた。物語の舞台1984年の9をQに置き換えているのは、「クエスチョン」、彼女が現状の世界に抱く疑問だった。青豆にはパトロンがいる。財閥の家に生まれ華族に嫁いだ老婦人である。戦前に英国留学をし、紅茶の時間を優雅に楽しむ。自邸にある温室でである。南国の花を栽培しているのだが、目的は蝶を飼うためだ。独自の揺るぎない正義の精神をもっている。マーシャルアーツを教えていたスポーツクラブで知り合った。タマルという銃に詳しいボディーガード兼執事のような男がいる。
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天吾は、満州引揚者で、大冒険の末にNHK集金人なった父親の男手一つで育てられた。小説家を目指す数学教師である。小松という編集者に目をかけられ、小説新人賞の下読みをするアルバイトをしている。公募に集まってくる作品というのは膨大な数がある。集まってくる作品は初めてかく人もおり、大半は価値のないものだ。価値があるかないか程度の違いはアルバイト生にだって判る。面白い面白くないを振り分けて、出版社の小松に渡す。そのなかで、天吾は、『空気さなぎ』に心を奪われる。ふかえりという名前の十七歳の少女が書いたという作品だ。だが文章が稚拙で、内容を変えぬまま、文体を全面的に、書き換える必要が生じた。そして小松編集長プロデュースのもと、天吾が文体を立派に仕立て直し、アイドルのように、ふかえりをデビューさせて、社会にセンセーションを起こそうとしたのだ。ふかえりは、どうやら、学生運動からカルト集団に転じた「さきがけ」という組織に所属していたらしい。言語や読書に障害がある。作品自体は彼女が里子となっているセンセイの家の娘が彼女の寝物語をワープロで打ったものだった。天吾はふかえりとの接触によって、カルトな世界に脚を踏み入れていく様子である。
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 『ノルウェーの森』では、無意味なベッドシーンがやたらと長くうんざりさせられたのだが、この作品では心地よい間隔だ。きわめて丁寧に繰り返しなぞる主人公二人の人物描写・屈折した性癖(特に性交渉の相手の好み)、輪をかけて登場する魅力的な脇役陣、カルトな要素、拳銃の描写。以前習っていた記憶術講座で、残酷なこと、エッチなこと、シュールなことは記憶に残りやすいという記述があった。まさしくこれは、読者の本能に訴えるよう計算され尽くされている。出版不況のなか売れている作品というのは、こういうものなのだ、といまさらながらに驚く。
       

ノート20120507
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