伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 伯爵令嬢シナモン3「修道院島」第1章17
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

伯爵令嬢シナモン3「修道院島」第1章17

 

前回までの粗筋
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 1920年代末。群馬県での殺人事件容疑者となった竹久夢二。知人の萩原朔太郎は、佐藤記者を介して、レディー・シナモンに捜査を依頼する。シナモンの一行は手分けして捜査を開始。事件関係者を結んでいくと捜査線上に戊辰戦争で活躍した林忠崇という元大名が浮かびあがってきた。榛名湖のヨットで、シナモンたちは林忠崇のもてなしをうけた。
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主要登場人物
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レディー・シナモン……英国伯爵令嬢・考古学者。「コンウォールの才媛」の異名がある。
ドロシー・ブレイヤー……米国考古学者。日本古代建築・古代ガラス工芸研究者。短期雇用契約で伯爵家執事に収まった。
佐藤と中居……雑誌『東京倶楽部』の記者とカメラマン。
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伯爵家の老家宰スイーツマン・ウルフレザー。奔放な画家で容疑者の竹久夢二。群馬の詩人萩原朔太郎(はぎわら さくたろう)。朔太郎の妹萩原愛子(はぎわら あいこ)。群馬県警長尾警部。女郎宿の店主「高崎の老人」隼人。車夫豆吉(士族、吉之助)。女郎の、殺人事件被害者の黒岩梅。暗殺された阿片商人大和屋太(やまとや ふとし)。請西藩元藩主林忠崇(はやし ただたか)
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 ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※
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 佐藤が、ヨットの舵輪をとる隼人老人と忠崇卿にむかってきいた。
「林様、遊撃隊のお話などきかせてくださると幸いです。林様お若いことの武勇伝は、記者仲間から少しきいたことがあります」
「酔狂なことよ」
 忠崇卿は遠い目をした。
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 ……

 奥州の最南端に磐城国(いわきこく)というところがある。七つの浜があり、そこの一つに小名浜(おなはま)という比較的新しく開かれた港があった。入り江には藤原川が注ぎ込み、大小の船が河口に停泊していた。
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 遊撃隊士が、船着き場に降りてみると、どこの港にでもある代官所と町屋がある。ただ少し違うのは、ここに集う荷車やら荷船には石炭が満載されているということであった。石炭は、港の後背を南北に縦断する阿武隈山地の麓に炭層露頭が点在する常磐炭田から集められてきたものだ。
 忠崇一行には黒く輝く化石燃料の集積は異様なものに映った。艦隊が帰航した理由は、この石炭の補給が目的だったのだ。
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 十九歳の青年大名忠崇が隼人に微笑んだ。
「隊士たちをようやく休めさせることができる」
「小田原以来、合戦ずくめだったからな」
 遊撃隊が、小名浜(おなはま)代官所にあがりこんで休息していると、一騎の侍が駆けてきて口上を述べた。
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 ----精鋭の誉れ高き遊撃隊の皆様が小名浜にご来航なされたとうかがい参上いたしました。できますれば奥羽列藩同盟の戦線に合力していただかんことを願います。同盟は、ささやかながら皆様に宴の場をご用意いたしました。ぜひともわれらが杯をおうけくださいませ。
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 宴の場所は、小名浜から二里ほど西にいった湯本温泉郷で、そこの新瀧(しんたき)という旅籠が忠崇の陣屋となった。湯に浸かり、芸者の三味線に酔って、朝、目ざめた。そこに、
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 ----官賊(かんぞく)が平潟(ひらかた)の港を奪いました。奪還せねばなりません。遊撃隊の皆様、早速で申し訳ございませんがご出陣願います。
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 とまた同盟から使者がやってきて口上を述べた。後にいう戊辰磐城(ぼしんいわき)戦争の勃発である。
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 ……
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 忠崇卿は、一度話を中断して船室におりていき、大輪の花を二つもってきた。蓮(はす)の花だ。
「頼みがある。二人で蓮をもってもらいたいのだ」
「なにゆえにですか?」
 ドロシーが一輪うけとり、サングラスを外した。
「座興じゃ、余も隼人も若いときは戦地をさすらった。極楽にいけるとは限らぬ。地獄に落ちる前に天女というものを垣間みたいとおもうたまで」
 そういって崇崇はもう一輪をシナモンに渡したのだった。
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 ----まさしく天女!
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 と思ったのは忠崇と隼人だけではない。甲板にいた人々のすべてがそう感じたのだった。
 黄金の髪を風にあそばせ、しなやかにのびた腕に蓮花をたずさえている。
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「蓮花は泥水をつらぬいて昇華する、ゆえに尊い」
 舵輪をゆっくり回しながら隼人老人がつぶやいた。

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 ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※
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後 記
.
 ----虎だ、おまえは虎になるのだ!
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 伝説の「虎の穴」の螺旋迷宮をくだって深層の祭壇に立った。
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 ぎゃああああああああああああああああああ!
.
 我が輩は佐藤である。名前はまだない。
. 
(《どこまでも》つづく)

コメント

アバター
2010/01/15 17:22
ソラちゃんへ

 さすがに若い世代には長州を恨むという感覚はそうないですよ。ある時代小説おたくの親族が酔ったときに、旅行のとき坂本龍馬と高杉新作の像に小水をかけたとふいていましたところ、母が怒ってました。親族は会津のひとではありません。母は会津の人で、実家は戊辰戦争に参加してます。 
アバター
2010/01/15 13:57
戊辰戦争ですかぁ~。
そういえば・・・、会津の人達って、今だに長州の人達を目の仇に思ってるような節がありますよねぇ・・・。
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2010/01/15 08:11
↓ つづき

戦争終結指導者;吉田茂(土佐藩)、近衛文麿(公家)……旧官軍側のひとたちが後始末してますね。

官軍の系譜をひく戦後の首相には、岸信介・佐藤栄作・阿部晋三(長州藩)、細川(熊本の殿様)いますね。

新潟では田中角栄(長岡藩?)。東北では、戦前に原敬、鈴木鈴木善幸(南部藩)が首相になってます。

猫佐藤が虎になれるか----どうでしょうねえ。  
アバター
2010/01/15 07:47
BENクー様

太平洋戦争の指導者たちって新潟・東北人が多いのですよ。戊辰の反動でしょうかねえ。しょせんやまだしらしく世界情勢に疎いのですよ。大阪人がブレーンの半分を占めていたら、損得勘定ができるから、アメリカみたいな強い国を相手に戦争はしなかった。といっている評論家がいましたよ。

東条英機(南部藩)、山本五十六(長岡藩)ほか多数。
 
アバター
2010/01/15 00:30
忠崇の回想・・・敗軍にも勇将ありを如実に思い知らされる感あり!今さらながら歴史の繰り返しを感じさせられました。明治の官軍が太平洋戦争でアメリカに同じ思いをさせられたように・・・
・・・佐藤くん(猫)は虎になるのでしょうか?虎の穴のトレーニングは厳しいぞぉ!(ウチのマンガで見ました。www  
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2010/01/14 23:46
咲様

さすが!

佐藤さんの身に何が……。

これから考えます。(←安易でしょ?)
 
アバター
2010/01/14 23:44
藍姫様

直しておきましたよ。いつもながら、打ちっ放しの非推敲原稿を読んでくださり感謝!
世の中には格好いい爺様たちっているんですよねえ。 
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2010/01/14 23:33
蓮を携えた姫様と博士、私もお目にかかりたいです。
しかし忠崇卿のこの座興…なにやら、秘められた意味がありそうです。
もしかすると、もう何かを覚悟しているのでは…。

…さ、佐藤さんの身に一体なにが!?  
アバター
2010/01/14 22:54
ドロシーがサングラスを一輪をうけとり~と、なっておりますぞな ^^;
その何行か下に 崇崇 と ^^;;

武に秀でた殿方は、美も愛でられるのですね ^^
文武両道、素敵です (◡‿◡✿)

佐藤さんが、どうなってしまうのかも目が離せませんねぇ~ ^^
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こんばんわ

こんばんわ。
今日は天気もよく少し暖かだったですね。
このままいってほしいものです。

さすが忠崇候、やることがイキですね。
博士とシナモン嬢には蓮も似合うでしょうね(*^_^*)
佐藤氏、うまれいずる悩みで苦しんでいるようですね。
果たして蛇と出るか虎とでるか(^_^;)

狼皮のスイーツマンさん、いつも読んでいただきコメント大変ありがとうございます。
ゲバラは確かに女性は好きだったようですね。第一もてたし。
ほんとにひどい喘息を持ちながらすごいと思います。
別れの手紙は淡々としながらほぼ死を覚悟していますね。
ほんとに信じられないほどの高貴さ、美しさだですね。

Re: こんばんわ

KOZOU様

 蓮に関わるエピソードは、伏線としてつかいたいと思ってます。
 林忠崇卿は狩野派の画術を修めたときいています。
 芸術家として優雅な一面を表現してみました。

 ゲバラについて;スペインのアナーキスト(革命家)を取材した記者の著書にこんな一節がありました。(彼らは、ふだんの生活において、工場労働者だったり、公園の清掃員だったりするけれども、ふるまいや話す内容は貴族そのものであった)と述べています。貧困にあっても志が高いと、みのこなしかたまで優雅になるようですね。
 
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