伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 第26回(終章開始)/ トリスタンの殺人 『伯爵令嬢シナモン1924年』
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

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第26回(終章開始)/ トリスタンの殺人 『伯爵令嬢シナモン1924年』

2012年4月校正

伯爵令嬢シナモン1924年
「トリスタンの殺人」 

第3章 ウバティー(1)
 
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 リザード祭りが終わった翌日は、穏やかな夏の午後四時のこと、海に臨んだ断崖にたたずむリザード城の庭において伯爵夫妻主催である恒例のティーパーテーが催される。日頃から庭師の老人が丹念に手入れをしている庭には、色とりどりの花々が咲き乱れており訪れた来賓を楽しませ、庭の中央にはその人たちをもてなすため大きなテーブルがいくつも並べられていた。 
 来賓には町の名士のほかに、今回の事件に関わった人々も招かれていた。主賓であるサトウ卿、T・E・ロレンス、捜査に携わったレザー警部、駐在の巡査、祭りの実行委員であるリザード商工会の青年、そして殺害されたジョージ・セシルの親族・友人であるエリー夫人、チャールズ、エディック、モーガンの姿もあった。会場の人々は盛装している。裏方には、庭師と調理師の夫妻と庭師の少年ジョンが大忙しで、サンドイッチやらスコーンを載せたケーキケースを運んでいる。 
 伯爵の祝辞が述べられ催しは和やかに進み、来客たちは自慢の隠し芸を披露しだした。でっぷりと肥った市長のシルクハットから鳩をだす手品、警察署長夫妻のマンデリンとフラメンコ、商工会の青年の玉乗り……会場は拍手と歓声に包まれた。 
 隠し芸のトリとなったのはシナモンであった。サトウ卿とロレンスは、十三歳の少女に順番が回ってきたとき、少女がさりげなくレザー警部に目配せをしたのを察した。駐在の巡査は、そんな少女の目配せには気がつかず、隣にいたレザー警部に話しかけた。 
「町中の人たちがみんないうんですよ、『レディー・シナモンの紅茶占いはよく当たる』って……」 
「ほう、それは楽しみだ」 
 司会役のサトウ卿がシナモンを紹介した。 
「ご来賓の皆様、次に演じますのは皆様ご存じ伯爵のご息女でありますレディー・シナモン──演じますのは紅茶占いです……」 
 膝まづくような仕草をするカーテシー。スカートの両端をつまんでその人は会釈した。
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 ――レディー・シナモン……ついこないだまで愛らしいお子様だったのに、かくも美しく成長なされた。この方は成長すればするほど、風の妖精シルフィーのように優雅になられていく。
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会場がどよめき、また静かになった。
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「本日の紅茶はウバです。ご承知のようにセイロン産ウバ・ティーは、銀ポットから湯煙をあげティーカップに注がれたとき、薔薇のように鮮やかな紅色の液体に、黄金の輪『ゴールデンリング』を浮かばせるのです。『ゴールデンリング』で連想されるものは──そう、結婚指輪『エンゲージリング』ですね──」 
シナモンの瞳が一瞬、モーガンの横にいたエリー夫人に向けられた。女性客たちの視線が一斉に左手薬指にむけられ、儚げな未亡人の視線も同じように左手薬指にむけられた。  ロレンスが隣にいたアーネスト・サトウにいった。 
「ウバですか? 僕は中近東での生活が長く、茶といえばトルコの『チャイ』ばかり飲んでいましたよ」 
 現スリランカであるセイロン。そこで産するウバは、花のような甘み、芳醇でスパイシーな渋み、口にしたときにかすかに漂うメントール香のような味わいが特徴で、インドのダージリンや中国の祁門(キーマン)に並ぶ世界三大銘茶と賞賛される。
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P4240159.jpg




【登場人物】

レディー・シナモン/後に「コンウォールの才媛」の異名をとる英国伯爵令嬢。13 歳。

サトウ卿/英国考古学者・元外交官・勲爵士。サー・アーネスト・サトウ。 主要考古学論文『上野地方の古墳群』。

オットー・スコルツェニー/頬に傷のある少年。後にナチスSS大佐となり、「ヨーロッパ一危険な男」と呼ばれる。

T.E.ロレンス/トーマス・エドワード・ロレンス。陸軍中佐。第1次世界大戦の英雄「アラビアのロレンス」。オクスフォード大学卒の考古学者でもある。戦術書として著書『知恵の七柱』が有名。このほか、高校・大学時の中世城郭研究では、当時の学界に一大センセーションを起こした。
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genre : 小説・文学

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No title

アーネスト・サトウの著作は我知らず、そこそこ

持っています。しかし、完全に蔵書になっています。

「読んでみようかな。」と今、酔っぱらいは考えています。

jizou様

私もぱらぱら読みですよ
考古学関連のところは、よく、関連書籍に引き合いに出され、読んでます
他の記載では、皇女和宮のフィアンセだった有栖川の宮と会見したしたとか
そんな記事を散見しています
私は酒を飲むと読解能力がおちるので
酒をのみながらTVを視る感覚で小説とか専門書を読んで楽しめる能力をお持ちの方が
とてもうらやましく感じます
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1930年前後の歴史推理小説 シナモンと素敵な旅をどうぞ

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