伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 第13回/トリスタンの殺人 『伯爵令嬢シナモン1924年』
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

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第13回/トリスタンの殺人 『伯爵令嬢シナモン1924年』


2012年4月校正
 
伯爵令嬢シナモン1924年
「トリスタンの殺人」 

第2章 男装の伶人(1) 

 イングランドの南西に細長く伸びたコンウォール半島。先端にあるのが同名となった州である。岩場に拠た深い入江港には港が築かれており、ときたま大都市の富豪がヴァカンスでやってきて乗るヨットやクルーザーが少し、加えて、アイルランドやフランスといった周辺諸国と交易する船舶がある。どれも小さいものばかりで数も少なく、漁船が大半を占める。港湾には倉庫、缶詰工場。そこで働く人々を相手にしたささやかな歓楽街があった。レオノイスはそういう町だった。市街地中央部にあるのが町と同名の教会。通りを挟んだ南向いに平屋となった赤煉瓦の駐在所がある。
 若い巡査が頭を掻きながらでてきて、シナモンが持参したバスケットを受け取った。
「姫様、すみませんねえ。こないだも頂戴していますのに──またも手作り……」
 朝食の時間だ。なかに入っているのはスコーンと果物、それに紅茶の入ったポットである。巡査の表情がいまにも溶けだしそうなのはいうまでもない。十三歳の貴婦人が小首をかしげて微笑んだ。
「ところで? 灯台守のお爺さんですけれど、ご身内の方はいらっしゃるのですか?」
「孫娘が一人います。市内の病院で入退院を繰り返しているのだとか。けっこう費用もかさんでいるはずです。灯台守の収入ではかなりきつかったでしょう」
 シナモンは若い巡査に礼をいって立ち去ろうとしたとき、建物の陰から、何者かがこちらをみているように感じた。玄関先まで見送った若い巡査が少女にいった。
「どうしたんですか、姫様?」
「いいえ、なんでも……」
 外では伯爵家の馬車が待っている。シナモンは怪しげな気配を感じた街角をみやってから、サトウ卿の手を借りてその馬車に乗り込もうとした。すると別な方向から声がした。
「ひっ、姫様。いいところでみつけた。助けてください!」
 カンカン帽の少女が、ちょっと驚き振り返るとすぐに微笑みに変えた。情けない声をあげた主は、レオノイス商工会の幹事をしている青年だった。
「夏祭り恒例の演劇で、主役の子が怪我をしちゃいましてねえ。姫様なら去年、主役をやっていらっしゃる。ここはどうかまたお願いしたいのですよ」
 サー・アーネスト・サトウが、シナモンに訊き返した。
「主役? 演目はなんだね、シナモン?」
「『トリスタンとイゾルテ』ですわ」
「『トリスタンとイゾルテ』? ではイゾルテ役だね?」
 シナモンは困ったように笑った。
「いえ……それがトリスタン役なのです」
 老勲爵士は意外な顔をした。そこに商工会幹事の若者が口を挟んだ。
「イゾルテ役に見合う女の子なら、化粧でもすればなんとかなるんですがねえ。トリスタンといったら色男でしょ。適役がいないんです。去年、姫様がトリスタン役をやったら大ウケけでしてね。姫様のトリスタンをみて興奮のあまり失神した娘っ子がいたくらいですよ」
(なるほど、男装の麗人というものか──)
 シナモンがためらっていると、青年は話をべらべら話を続けた。
「連続殺人事件があって、町の人たちも不安なんですよ。ここはなんとか姫様のお力添えで助けて欲しいんですよ」
「判りました。お受けいたしましょう」
(命を狙われているこのようなときに……人のよさにもほどがある)
 老紳士は、カンカン帽の少女がうなづくのをみて半ばあきれた。


リザード城

レオノイス城から手前イゾルテ島・奥トリスタン島を望む。港が城下町となり、その奥が、かもめ岬である。

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No title

女性の男装姿といえば、宝塚ですが、
東京日比谷の宝塚劇場の前は、
花束や、カメラを持った女性が、沢山
列をなしています。
シナモンちゃん、頑張れ。
ランクポチ。

jizou様

たしかに宝塚を意識をしています
男装の伶人という代名詞はもともとハリウッド女優だったと記憶しております
川島芳子なんかは歴史的なヒロインとして、そう呼ばれ、魅力的です
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