伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 第6回/トリスタンの殺人 『伯爵令嬢シナモン1924年』
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

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第6回/トリスタンの殺人 『伯爵令嬢シナモン1924年』


2012年4月校正『伯爵令嬢シナモン』更新開始


伯爵令嬢シナモン1924年
「トリスタンの殺人」 

第1章 二つの島(4)

 絶壁に築かれたレオノイス城には南北に門が存在している。港や駅がある市街地に出るには、北門から坂道を下っていかねばならない。坂道を下るとすぐにレオノイス港となる。レオノイス港の桟橋には繋留された、漁船、小型貨物船、沿岸警備艇、ヨット、それにスポーツ用モーターボートが、ぷかぷかと弱い波に漂っていた。船舶のうちモーターボートが伯爵家が所有するものである。
 カンカン帽を被った少女、老勲爵士、それに庭師と庭師の孫の四人が、モーターボートに乗り込もうとすると、先客が後部座席で待っていた。駐在の若い巡査で、いらいらしている様子だ。
「今度はイゾルテ島だと。トリスタン島に、死体がなかったのに何をいまさら調べるんだよおっ」
一同が顔を見合わせていると、
「駐在さん、朝一番のお仕事になってしまったから朝食がまだですわね。サンドイッチと紅茶を持参しました。よろしければ召し上がりません?」
  シナモンが、抱えてきた大きなバスケットを開けると、ポットとサンドイッチが出てきた。駐在の若者は、しばしシナモンをみつめると眼を潤ませた。
「もっ、もしかしてこれ、姫様の手作り……」 
 カンカン帽の少女が小首をかしげて微笑んだ。
「あっ、ありがとうございます、姫様。じっ、自分は……感激です。ああっ、おいしいっ、死ぬうううっ。幸せいっぱいで死ぬうううっ」
(黙って食えよ駐在さん。一人で死ねばいいよ) 
 ジョン少年は巡査を後目に冷たくつぶやいた。
 庭師の老人は、釣りの好きな伯爵に付き合って船頭役をするため、モーターボートの操縦ができる。老人は桟橋の繋留紐をほどくと、ガソリン・エンジン用の紐を引っ張ってふかし、ボートをイゾルテ島にやった。港から島までものの十分もかからない。
 断崖の島の麓には、コンクリートで構築された小さな船着き場があり、ボートを繋留した。船着き場に降りて曲がりくねった急峻な坂道を登りきるとようやく灯台にたどり着く。駐在の巡査が叫んだ。
「おおいっ、爺さんはいるかい? 入るよ」
 駐在が灯台の横に付設されてある小屋に入っていってほどなく、真っ青な顔をして出てきたのだった。ほかの四人ともおおよその察しはついている。それでも訊かねばならない。サトウ卿が口火を切った。
「どうしたのだね?」
「灯台守の爺さん、死んでます。背中に斧が刺さってます」
 ショックのあまり全員が、しばらく声をだすことができなくなり立ちすくんだ。呆然と立ちすくむ一群のなかにあって、シナモンは、ふっ、と何かに導かれるように把手に手をやり、小屋のなかに入っていった。後をサトウ卿が追って、「若い娘がみるものではない。戻りなさい、シナモン」と叫んだ。するとすぐに老紳士と入れ違いにカンカン帽の少女が勢いよく外へ飛び出してきた。
(ほら、いわんこっちゃない)
 皆が思っていると、シナモンはまたも意外な行動をとった。灯台の周囲に自生している花を集めてきて小屋のなかへ舞い戻り、横たわる死者の少し手前にそなえて、膝まづいて祈りを捧げたのである。
 中へ大人たちが入ってきた。
「修道院でそう教わったのかい?」
 老紳士がそういうと少女はうなずいた。

リザード城
レオノイス城から手前イゾルテ島・奥トリスタン島を望む。港が城下町となり、その奥が、かもめ岬である。


Link→ Mother Blog/ 伯爵令嬢シナモン『飛行船の殺人』
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theme : 自作小説(ファンタジー)
genre : 小説・文学

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comment

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No title

架空の島の情景と登場人物が
良く描かれていますね。
なかでも巡査が、一番生き生きしているように感じます。

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jizou様

架空地形描写を褒めて戴きありがとうございます
巡査は状況説明用のキャラとして有効でした
主要キャラ
もっと描きこまねばなりませんね…
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