伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 第3回/トリスタンの殺人 『伯爵令嬢シナモン1924年』
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon

第3回/トリスタンの殺人 『伯爵令嬢シナモン1924年』

第3回/トリスタンの殺人 『伯爵令嬢シナモン1924年』

白鳥執事を語る前に伝えねばならないことがある。
2012年4月校正『伯爵令嬢シナモン』更新開始


伯爵令嬢シナモン1924年
「トリスタンの殺人」 

第1章 二つの島(1)

第一次世界大戦が終わってからさほど歳月は流れていない。イングランド島の南西から大西洋にむかい狭長にのびたコンウォール半島の先端に小さな町がある。北のかもめ岬、南のレオノイス城岬、二つの岬に挟まれた入り江に築かれたのが同名の港だ。町は伯爵領となっており、領主のセシル家からは海軍大臣も輩出している。

その夏も町の北にある、かもめ岬には、髪を短くそろえた短黄金の髪の貴婦人が女子修道院から帰ってきた。青く染めた木綿の服を身にまとい、頭にはトレードマークのカンカン帽を被っている。

やさしい偏西風がふく岩がところどころ露出した牧草地で、羊が放牧された坂道を、ふうふう、いいながら登ってくる老人がいた。その老人を望遠鏡のついた測量器材であるところのレベルをのぞいていた少女が、レンズの向こうに、みつけて微笑んだ。老人がしばし息継ぎをしたあと、

「私は、アーネスト・サトウ。君がレオノイス伯爵のご令嬢だね?」

少女は長いスカートの両端をつまんで会釈する「カーテシー」をした。古風な挨拶である。

「お会いできて光栄です、サトウ様。ご執筆なされた『上野地方の古墳群』を拝読しました。素晴らしい論文ですね。私は、ザ・ライト・オノラブル・レディー・シナモン・セシル・オブ・レオノイス。よろしければシナモンとお呼びください」

(私の論文を読んだ? 十三歳という話しではないか? それにしてもなんて優美な娘なのだ!)

アーネスト・サトウと名乗った老人は、シナモンが立っている場所を見渡した。

かもめ岬は大西洋にむかって東に突き出た絶壁である。麓の港町から蛇行した未舗装の坂道を登ってくる中腹でテラスのように開けた場所だった。そこの地面に、縦五メートル、幅一・五メートルの長方形をした坑を綺麗に掘り込んでいる。地層を観察するための試し掘りだ。

「地質調査でもしているのかね?」

「はい。夏休みの宿題で自由研究レポートのための調査をしています」

「なっ、夏休の宿題? 何やら本格的だね」

調査地にはシナモンのほかに軽装の人々がいた。老夫婦、若夫婦に少年の五人だ。

「こちらは? セシル家の?」

「はい、うちで働いるみなさんです」

五人はそれぞれアーネスト・サトウに挨拶した。老夫婦は庭師で、若夫婦は主に調理師、少年は庭師の孫だ。その少年が、何気なくレベルの望遠鏡を覗いたとき、興奮して大きな声をあげた。

「たっ、大変だよ、姫様──」

「どうしたの?」

「人が殺された!」

少年はシナモンに望遠鏡をのぞかせた。向けられた方向は、かもめ岬の南西で二つの島があった。一つは手前のトリスタン島、もう一つは奥にあるイゾルテ島だ。両島は、レオノイス港のある入り江の玄関に相当した場所にある。






【登場人物】

レディー・シナモン/後に「コンウォールの才媛」の異名をとる英国伯爵令嬢。13 歳。

サトウ卿/英国考古学者・元外交官・勲爵士。サー・アーネスト・サトウ。

リザード城
レオノイス城から手前イゾルテ島・奥トリスタン島を望む。港が城下町となり、その奥が、かもめ岬である。

Link→ Mother Blog/ 伯爵令嬢シナモン『飛行船の殺人』
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theme : 自作小説(ファンタジー)
genre : 小説・文学

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comment

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No title

アーネスト・サトーは第一次大戦後
まで生きていたんですね。
知りませんでした。

jizou様

とても長生きですよね
日本人の妻との間にできた息子さんは
日英友好の親睦団体の会長になっていたと思います
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