伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」 2012年06月
 

伯爵令嬢シナモン「飛行船の殺人」

小説、エッセイ、画塾

cinamon B 飛行船シルフィ― cinamon
泉谷地区の旧家集落の家々にはそれぞれ屋号というものがあり、田村恋太郎の実家は
「花蝶」という。

奥州田村氏の家紋は、車前草で、ほかに桐、巻龍、蝶、巴がある。支流は紋章を差異化が生じるため三十種以上にもわたるバリエーションをもつことになる。

田村家支流を自称する泉谷田村家の家紋が、奥州田村氏直系の替え紋の一つ蝶紋を受け継ぎ、差異化するにあたり蓮の花をつけて、「揚羽蝶に蓮」とした。屋号が、「花蝶」と呼ばれるのはそのためであろうか。

揚羽蝶のデザインは優美で、極楽にも咲くという蓮の花にとまって眠る様をイメージすると幻想的でさえある。ポモリ教授が大学の最初の講義で、「沖縄では、故人は胡蝶に転生するという伝承がある」と述べていた。恋太郎にとっては興味深い話である。

「ターザン事件」からしばらく経ってからのこと、通りに面した「花蝶」屋敷土塀に子供用自転車が鍵もかけられずに数日放置されていた。盗難されたもののようで、みかねた恋太郎は、山むこうの炭鉱夫街にある駐在所に届けにいった。そこは、瓦葺きでタールを塗ったくった平屋だ。赤いランプの球が入口に備えられてある。「茨城巡査」は、そこで長年連れ添った夫人と暮らしていた。

「良いことをすれば報われねばならぬ」

恐怖の「茨城巡査」は、恐る恐る訪れた児童の頭を笑いながら撫で、茶請けの飴やら煎餅やらをたんまりポケットに突っ込んで帰したのだった。

後日、子供用自転車の持ち主の母子が礼をいいに恋太郎の家を訪ねてきた。恋太郎のところに手土産にもってきたのは「ギターペイント」というブランドの水彩絵の具だった。駐在が恋太郎の好みを教えたものにほかならず、母親に連れられてきたのがターザンの崖にいた愛矢だった。

実をいうと、当事者たちは気づいていなかったのだがもう一つの出会いがあった。恋太郎が入学したてのころ、本館大講室で、沖縄諸島でジュゴンの獣骨を用いた「蝶形骨器」の講義をしていた人物と出会っていた。

県道工事が中断されたのは、名刹泉寺の寺域が国指定史跡であることを知らずに路線を設計してしまったこと、それから別途にやはり国指定史跡となる「装飾横穴墓」をみつけてしまったところにあった。遺跡は「泉谷装飾横穴墓」と名付けられた。調査を行ったのは、文化庁の舵取りで組織された「泉谷装飾横穴墓発掘調査団」。団長が「蝶形骨器」の講義をしていた口ひげの教授だったのだ。
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